量的研究における厳密性の強化|【統計学・統計解析講義応用】
量的研究における厳密性の強化
研究状況のコントロール
量的研究では.すべての対象について,可能なかぎり同じ条件下でデータが収集できるよう、状況の汚染(コンタミネーション)を最小限にする手段をとることが多い.
条件の一定性を維持しようとして研究者が課すコントロールは,おそらくは,科学的コントロールの形態としてはもっとも古くからもちいられてきたものの1つである.
環境が,人々の行動に大きな影響を与えることはよく知られている.したがって,量的研究をデザインする際には,環境の状況についてよく考える必要がある.
環境のコントロールがもっとも容易にできるのは,実験室実験である.
対象者は,実験者が調整する環境のなかに入る自然の場で行う研究では,研究者は,環境をあまりコントロールできない.
だからといって環境を同じ状態にする努力をしなくてもよいというわけではない.
たとえば,面接法でデータを収集する非実験研究を行う場介,理想的には,基本的に同種の環境ですべての面接を行うほうがよい.
つまり,ある回答者には自宅で,他の回答者には職場で,さらに別の回答者には研究者自身の研究室でという方法で行うのは望ましくない。
参加者は,違う場におかれれば違う役割(例:妻,夫,クライエント)を担うと考えられ,そうした役割によって,質問に対する回答が,いくらか影響されるかもしれない.
対象をグループごとに割り付けたとしても,実際の現場では,グループ間の違いをコントロールすることはむずかしいだろう.
例として,看護学生を対象に,それまで講義方式で行っていた呼吸器の教授計画を立てるとしよう.
同し内容を対象としたコンピュータ化された自己学習方式を試みて,すべての学生にこの方式をもちいる前に,その有効性を評価したいとしよう.
そこで,学生を無作為にこれら2つの方式のいずれかに割り付ける.
しかしここで,2群の学生が自分たちの継験について話したとしよう.
講義群の学生がコンピュータープログラムを体験するようになったり,自己学習群の学生が講義に出るようになるかもしれない.
要するに,現場における実験では,しばしば処理の汚染の問題にさらされる.
この研究例では,実験群と対照群に区分し.た両群で学習してしまう場所が生じるように,他の変数もまた非実験研究では,研究者が独立変数を操作しなければ,条件の一定性を保証する手段がない.
栄養の知識と食習慣に関係があるかに関する相関研究を例に考えてみよう.
この研究の結果では,栄養の知識と食習慣には関係がないことがわかったとしよう.
つまり,栄養について十分な知識をもつ人も,あまり知識をもたない人と同じ程度に,不適切に食事を続けているという結果が示されたとしよう.
しかしこの場合,栄養の知識(独立変数)の情報源についてはまったくコントロールをしていない.
この知識は事後に測定されたものであり,情報を得た条件は一定でないばかりか,類似さえしていないかもしれない.
この研究から,知識がその人の食事行動に影響しないのだから,人々への栄養についての教育は重要でないと結論づけるかもしれない.
しかし,栄養の情報を提供する方法の違いによって,人々が食習慣を変える動機づけになるものも,ならないものもあるだろう.
したがって,独立変数をコントロールもしくは操作する能力が,変数間の関係,または関係がないことを理解するうえで重要であろう.
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