パス解析の仮定と問題点|【多変量解析・統計学・統計解析】
パス解析の仮定と問題点
パス解析の仮定
ここまでは,パラメータをどのように推定するかや,モデルを評価するためにその推定をどのように用いるかなど,パス解析モデルの本質について述べてきた。
それらのモデルや結果の研究の価値は,条件が整っているかどうか次第である。
パス解析の必要条件は,3 つのカテゴリーに分けられる。
重回帰分析の仮定,因果モデルの仮定,一般的なデータ分析で考えるべきこと,の3 つである。
パス解析が重回帰分析の技術に依存していることから,重回帰分析の仮定が,ここにも適用される。
それらの仮定で最も重要なことは,測定誤差がないことと定式化の誤りがないことだ。
なぜなら,重回帰分析はそれらについてロバストな性質をもっていないからだ。
測定誤差は観測された変数の測定が不正確であることを意味している。
定式化の誤りとは回帰モデルの定式化における不正確さを意味する。
定式化の可能性に関する2 つの厄介な問題とは,(a)モデルに含まれているがモデルに含まれるべきでない変数があること,(b)モデルに含まれるべきなのにモデルから除外されている変数(こちらのほうがなお悪い),があることである。
パス解析の仮定における第二のカテゴリーは,モデル全体における因果の考え方から派生する。
モデルの中で因果の順番が正しいかどうか,モデルに含まれる変数は正しいかどうか,といったことである(パス解析の結果はモデルをきちんと定式化することに依存していることを思い出そう)。
ここでのモデルの定め方についての注意点は,1 回の重回帰分析を超えてモデル全体にかかわることである。
たとえば, 2 つ以上の内生変数に影響するモデルに含まれない変数があれば,異なる回帰分析から得られた残差が相関することになり,仮定に違反していることになる(この違反は時系列的なデータの問題でもある。
そこでは,同じ変数が何回も測定される。再婚と精神的健康の例では、毎回精神的健康が仮定されるときに影響していた他の変数があり得ないだろうか?)。
パラメータのかたよりのない推定をしなければならない,という統計的な仮定に加えて,より一般的なデータ分析の文脈で考えるべき問題がある。
重回帰分析,そしてそれに基づくパス解析は,加算的な技術である。
その問題とはつまり,従属変数に対する1つの予測変数の影響は,他の変数(の水準)に依存していないという仮定である。
もし2 つ以上の予測変数と従属変数の間に交互作用の存在が疑われるなら,パス解析が行われる前にその可能性を調べておくべきなのである。
もし交互作用が見いだされたら,交互作用項は回帰分析の中に統合することができる。
交互作用という言葉に関しては,Baron, Kenny (1986)もしくはJaccard, Turrisi, Wan (1990)の論文を参照してほしい(交互作用を取り出し,統制することを,ここでは一般的な分析的関心に分類している。
交互作用モデルが適しているときに,加算的なモデルを使うことは,定式化の誤りに関する話である)。
二番目の一般的な分析的問題は,多重共線性である。
すなわち,もし予測変数どうしが相互に高い相関関係にあれば,パラメータ推定値は信頼できないものになる。
一方で,多重共線性の大きさでも,許容できる範囲のものもある。
パス解析における多重共線性の問題は,重回帰分析のそれと同じ道を辿るものである。
最後に,どれだけデータが大きければ結果が信頼できるのか,という問題がある。
その答えは,推定しようとしているパラメータの数に依存する。
一般的な目安は,推定するパラメータよりも5-10倍の観測度数が必要である.
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