パス解析の概念|【多変量解析・統計学・統計解析】
パス解析の概念
パス解析は重回帰分析の拡張版と考えることができる。
重回帰分析では調査者は1つの従属変数を想定しているが,パス解析では1つ以上の従属変数を用いる。
パス解析で重要なことは,従属変数の順序性である。
「X がYを予測する」モデルが回帰モデルであり,「X はYを予測し, YはZ を予測する」というのがパス解析モデルである。
パス解析によって調査者は変数セットにおける因果の順序性を検証することができる。
パス解析は共分散構造分析の特別なケースである。
パス解析の歴史と応用
パス解析は,1918年にSewall Wrightが初めて行い,1920-30年代に彼が雑誌で詳述したものである。
Wrightは遺伝学者で,おもにパス解析を使った人口の遺伝的な研究を行った。
彼の論文の題目は興味深いものが多い。
たとえば,「モルモットのまだら模様のパターン」(Wright,1920 ) や,「穀物と豚の相関について」(Wright,1925)などだ。
1960年,彼は自分の1921年の論文を選び出し, Journal of Agricultural Researchにパス解析の最初の概略的記述として発表した。
しかし,彼の論文は社会科学者がほとんど読まない雑誌で公開されたため,実際には40年間注目されなかった。
その後,1960年代になって,社会学者,心理学者,経済学者や政治科学者がこの手法について出版し,社会科学者の興味を向けさせた。
H.M.Blalock, Jr・とO.D.Duncanはいずれも社会学者であり,とくにこれに貢献した人である。
Causal Model in the Social Science (「社会科学における因果モデル」) はBlalock (1971)が編集した本で,因果モデルの他領域での重要性と概観について書いている。
それはパス解析が20年以上も前から広く用いられていたかのように,社会科学者の熱視線をひきつけた。
その結果,パス解析はかなり広範囲の問題に応用されるようになった。
その広がりを知るために,いくつかの例をあげてみよう。
自尊心
健康
教師の期待
道徳的判断の発達
組織の合意形成
輸送機関の保守性能
医者の身分
マイクロコンピュータに対する態度
倫理的意思決定行動
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