量的研究を成功に導く!概念枠組みの開発法と応用【ChatGPT統計解析】
量的研究における概念枠組みの開発には、観察力、問題把握能力、先行研究の知識が重要で、経験が必須ではない。独自の概念図式は誰でも創造でき、問題を広く捉えることが求められる。理論開発は帰納的プロセスに基づき、既存の研究からも変数間の関係を明らかにできる。概念枠組みは研究者が自分の理論に基づき開発し、例えばセルフケアやソーシャルサポートに関する仮説を立て検証する。理論は量的・質的研究の基盤となり、看護研究ではオレムのセルフケアモデルが多用される。
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量的研究における概念枠組みの開発
多くの研究初心者は,自分たちには概念図式を開発する資格がないと考えてはいないだろうか.
しかし,理論開発で大切なものは,研究の経験よりも,観察力,問題を把握する能力,そして先行研究についての知識である.
研究のための独自の概念枠組みをかたちづくることは,創造力と感受性のある人なら誰でもできる.
概念図式は,完全なフォーマル理論(一般理論)ではないこともあるが,その研究の論点をより広い観点からとらえるものでなければならない.
理論開発の基本をなす知的プロセスは帰納であり,これは,個別的な観察や事実から,一般化へと推論していくプロセスである.
帰納的プロセスでは,経験したり学んだことを,ある結論に統合する.
帰納的プロセスでもちいる観察は,研究者自身の観察である必要はない.
それらは,他の研究からの結果および結論であってもよい(そうであることも多い).
変数間の関係がこのような方法で明確にできれば,理論開発にとりかかり,もっと精密な検証にふすことができる.
理論開発の第1歩は,関連概念の一般的図式を作成すること,つまり概念の分析を行うことである.
簡単な例で考えてみよう.妊娠期教育プログラムの出席に影響する因子を理解したいと考えたとしよう.
まず,われわれは2つの基本的な因子,すなわち出席を促す因子と妨げる因子を考えることから始めるだろう.
文献をレビューし,仲間とその問題を討議し,自分自身の経験からアイデアを出したのち,多くの研究設問を研究したり,それらの問題を秩序立てるのに役立つ.
たとえば,その概念図式は,ソーシャル・サポートの入手が減るほど,妊娠期教育プログラムへの参加が困難になることを示している.
したがって,われわれは,「夫は,妊娠中の女性のソーシャル・サポートの重要な源である」という仮定に基づいて,次のような仮説を立てることができよう.
「独身の妊婦は,既婚の妊婦よりも,妊娠期教育プログラムへの参加が少ない傾向にある」(もちろん,この例は工夫できる.
実際,HBMまたはTPBのような,いくつかの既存の理論を妊娠期ケア教育への参加に関する研究に使うこともできる).
多くの看護研究で,研究者によって開発された概念枠組みが使われている.
モデル開発の例
スティフバーゲン,セラフィン,ロバーツ〔Stuifbergen,Seraphine, & Roberts, 2000〕は,慢性的な障害をもつ人々において,生活の質についての研究者自身の概念モデルに基づいて研究を行った.
このモデルは,「既存の文献および一連の予備的な質的,量的研究結果の統合」をあらわしていた.
研究の例
看護研究文献から,理論と研究を結びつける2つの例を示す.1つは量的研究で,もう1つは質的研究である.
量的研究の例
オレムのセルフケアモデルの検証
レンカー〔Renker, 1999〕は,オレムの看護のセルフケアモデルをもちいて,セルフケア,社会的支援,身体的虐待と,後期思春期の母親およびその子どもにおける妊娠のアウトカムとの関係を研究した.
研究の変数には,オレムのモデルの主な構成概念である,基本的条件づけ因子,セルフケア・エージェンシー,セルフケアの測定を含んでいた.
オレムの基本的条件づけ因子(人々がセルフケアをする能力に影響する因子)には,@社会的-環境的因子と,A資源入手可能性と適切性因子がある.
レンカーの研究では,身体的虐待が主要な社会的環境的因子をあらわし,社会的支援が資源入手可能性と適切性因子をあらわした.
DenyesSelf-Care Agency Instrument をもちいて,妊娠期セルフケア・エージェンシーを測定し, DenyesSelf-care Practice Instrument によって,妊娠期セルフケアを測定した.
オレムのモデルに基づいて,レンカーは,「身体的虐待がないこと,および社会的支援があることが,セルフケア・エージェンシーを高める」という仮説を立てた.
セルフケア・エージェンシーのレベルの上昇は,セルフケア実践を促し,これによって,児の出生時体重の増加と妊娠合併症の減少をもたらすことが期待された.
レンカーは,10代の妊婦139人の標本において,この仮説を検証した.
結果は,オレムのモデルを支持した.
虐待された10代の妊婦は,虐待されなかった10代の妊婦よりも,有意に低い出生時体重の児を産んだ.
社会的支援,セルフケア・エージェンシー,そして,セルフケア実践はすべて,児の出生時体重と有意に関係していた.
この研究独自の長所は,オレムのセルフケア不足モデル(Orems Self-Care Deficit Model) が,研究デザイン全体を通じて織り交ぜられていることである.
レンカーは,モデルに基づいて仮説を開発し,オレムのモデルのすべての主要な構成概念を研究変数として取り入れた.
さらに,オレムの理論の構成要素を評価するために,いくつかのデータ収集用具が具体的に開発された.
質的研究の例
ケアリングについての理論の開発
多くの質的研究は,明確な目標として理論開発をめざしている.
ここで,ケアリングについて経験的に導出された理論を開発し,ケアリングに基づくカウンセリング介入の開発にその理論をもちいた質的研究者の努力をみてみよう〔Swanson,1999〕.
この質的研究は10年以上前になされたが,理論開発の優れた例である.
3つの別々の質的研究からのデータを使って,スワンソン〔Swanson, 1991〕は,ケアリングのプロセスについての理論を帰納的に導き精錬した.
スワンソンは,ケアリングを3つの別々の周産期のコンテクストにおいて研究した.
それらは,流産した女性が体験したケアリング,新生児集中ケアユニットで両親と専門職が提供したケアリング,長期にわたって公衆衛生看護の介入を受けた,リスクをもつ母親が想起したケアリングである.
データは,研究参加者との徹底的な面接と,ケア提供場面の観察を通じて収集された.はじめの研究のデータによって,5つのケアリングのプロセスが明らかになり,仮の定義づけにいたった.
2つ目の研究の結果は,その5つのプロセスの確認とその定義づけの精練となった.
3つ目の研究で,スワンソンは,5つのプロセスを確認し,それらのうちの1つを再定義し,各々のプロセスの下位側面を開発し,次のようなケアリングについての全体概念の定義づけを導き出した.
「ケアリングは,人がコミットメントと責任を感じるような重要な他者との,気づかい世話をする(nurturing)関係の仕方である」.
スワンソンの理論によると,5つのケアリングのプロセスは次のようである.
・知ること:1つのできごとについて,他者の人生においてそれを意味あるものとして理解する努力をすること
・ともにいること:他者にとって情緒的に存在すること
・他者のためにすること:十分に可能な場合は,自分のためにするように,他者のためにすること
・可能にすること:人生の移り変わりや慣れないできごとを,他者がやりすごしていけるように支援すること
・信じ続けること:できごとや移り変わりを通り抜けたり,意味ある将来に立ち向かう,他者の能力を信じ続けること
スワンソンは,理論を示すのに,徹底的な面接からの豊かな抜粋をもちいて,5つのプロセスを説明した.知ることのプロセスを示す抜粋の例を以下に示す:
うまくいかなくなったとき,私は「順調よ,ただ時間の問題よ」と言うのがやっとだった.
つまり,ナースが私にある質問をしたら,私か真実を話さずにはいられないだろうということ.
それから,私たちは話をしてまもなく,「順調よ」と言うのではなくて,私は何が本当に悪いのかがわかってきたのです.
スワンソンのケアリングについての理論は,流産した女性のための,ケアリングに基づいたナースのカウンセリングプログラムの開発と検証に使われた〔Swanson, 1999〕.
さらに, AIDS患者の家族ケア提供者と専門職のヘルスケア提供者との相互作用についての質的研究〔Powell-Cope, 1994〕や,死にゆく人のケアにおける親族についての,巻き込まれること(involvement)の研究など,他の研究者によっても,この理論はもちいられた.
・理論は,現象についての一般的な抽象的特徴づけである.古典的定義によれば,理論とは,諸現象問の関係を系統的に説明する抽象的な一般化である.記述理論は,現象を徹底的に描写する.
・研究の文脈における理論の全体的目的は,研究結果を意味づけ,既存の知識を一貫したシステムにまとめ,新しい研究に刺激を与え,現象および諸現象間の関係を説明することである.
・理論の基本的構成要素は概念である.古典的に定義された理論は,概念間の相互関係についてのひとまとまりの命題からなっており,論理的に関係づけられた1つのシステムに整理されていて,そこから新しい陳述を導き出せるようになっている.
・大理論(または広範囲理論)は,人問の体験の大きなまとまりを記述することをめざす.中範囲理論は,ある現象に範囲を特定している.
・概念はまた,概念モデルの基本要素でもある.しかし,概念は,論理的に順序だった演繹的体系に結びついていない.概念モデルは,理論と同様,看護研究への文脈を提供する.
・図式モデル(概念図ともいう)は,記号または図式をもちいて現象をあらわす.統計モデルは,数学的記号をもちいて,変数間の関係の性質や強さを量的に表現する.
・枠組みは,研究の概念的根拠である.多くの研究では,枠組みは内在していて,理想的には,研究者は主要な概念的定義を明らかにする.質的研究では,通常,各々の研究の伝統から枠組みが生まれる.
・いくつかの看護の概念モデルが開発され,看護研究においてもちいられてきた.看護のモデルの中心となる概念は,人間,環境,健康,看護である.
・看護研究者がもちいる2つの主な看護の概念モデルに,オレムのセルフケアモデルと,ロイの適応モデルがある.
・看護研究者が利用する看護以外のモデル(例:ラザルスとフォークマンのストレス・コーピング理論)を,借用理論という.看護の探究にとって,借用理論の妥当性が確認された場合,その理論は共有理論となる.
・いくつかの質的研究の伝統(例:現象学)においては,研究する現象についての既存の実質的な概念化を一時的に保留しようとする.そうはいうものの,研究の伝統そのものに豊かな理論的基盤がある.
・クラウンデッド・セオリーを具体的に開発しようとする質的研究者もいる.クラウンデッド・セオリーは,帰納的なプロセスをとおして,研究する現象の根拠となるデータより導出された説明である.
・理論の古典的なもちい方では,研究者は,既存の理論から演繹された仮説を検証する.1つの研究において2つの競合する理論を検証する方法は,とくに有意義である.
・質的研究と量的研究の双方において,組織化する枠組みとして,または解釈の手段として,研究者が理論やモデルをもちいることがある.
・研究者が,問題を開発し,研究をデザインし,その次に概念枠組みを探すことがある.このような枠組みの事後選択は,特定の理論の系統的検証に比べると,説得力に欠ける.
量的研究における概念枠組みの開発には、いくつかの重要な要素があります。まず、研究者が独自の概念図式を開発する際、経験の有無よりも観察力、問題を把握する能力、そして先行研究についての知識が必要とされます。多くの初心者は、自分にはまだ概念枠組みを作成する資格がないと感じることが多いですが、実際には誰でも創造力と感受性をもって取り組むことができるのです。概念図式は、必ずしも完全なフォーマルな理論(一般理論)である必要はなく、その研究が扱う論点をより広い観点から捉えるための道具として機能することが求められます。理論開発の基盤となる知的プロセスは「帰納」と呼ばれるもので、これは個別の観察や事実から一般的な結論へと推論するプロセスです。帰納的プロセスにおいて、研究者は経験したことや学んだことを統合し、結論に結びつけていきます。また、帰納的プロセスで用いられる観察は必ずしも研究者自身のものである必要はなく、他の研究者の結果や結論に基づく場合も多くあります。例えば、変数間の関係がこうした方法で明確にできれば、理論開発に着手し、より精緻な検証に進むことが可能となります。理論開発の第一歩は、関連する概念の一般的な図式を作成すること、すなわち概念の分析を行うことです。これによって、研究者は取り扱うべき問題やテーマを体系的に整理し、その枠組みの中でどのような変数が重要なのかを見定めることができるのです。簡単な例として、妊娠期教育プログラムへの出席に影響を与える要因を理解しようとする場合を考えてみましょう。このような研究では、まず出席を促進する要因と妨げる要因の2つの基本的な因子に注目します。そして、文献レビューや他の研究者との討議、自分自身の経験などを通じてさまざまなアイデアを集め、それをもとに研究の問いを構築します。例えば、社会的支援が減少するほど妊娠期教育プログラムへの参加が難しくなるという概念図式が考えられます。この図式に基づき、「夫は妊娠中の女性の社会的支援の重要な源である」という仮定のもと、「独身の妊婦は既婚の妊婦よりも妊娠期教育プログラムへの参加が少ない傾向がある」という仮説を立てることができるでしょう。もちろん、このような仮説は状況に応じて工夫することが可能です。実際に、既存の理論、例えば健康信念モデル(HBM)や計画的行動理論(TPB)などを妊娠期ケア教育に関する研究に利用することもできます。多くの看護研究では、研究者が開発した独自の概念枠組みが使用されています。次に、モデル開発の具体的な例を紹介しましょう。スティフバーゲン、セラフィン、ロバーツ(Stuifbergen, Seraphine, & Roberts, 2000)は、慢性的な障害を持つ人々における生活の質について、研究者自身が開発した概念モデルに基づいて研究を行いました。このモデルは、既存の文献や一連の予備的な質的・量的研究結果の統合を表現しており、理論と実際のデータとの結びつきを強調するものでした。看護研究において、理論と研究を結びつける例は数多くありますが、ここでは量的研究と質的研究のそれぞれについて例を挙げてみましょう。まず、量的研究の例として、オレムのセルフケアモデルを用いた研究を紹介します。レンカー(Renker, 1999)は、オレムの看護におけるセルフケアモデルを用いて、セルフケア、社会的支援、身体的虐待と、後期思春期の母親およびその子供における妊娠のアウトカムとの関係を研究しました。この研究において、レンカーはオレムのモデルに基づいて仮説を立て、セルフケアエージェンシー(自己管理能力)やセルフケアの実践が妊娠期における母親と子供の健康にどのように影響を与えるかを調査しました。オレムのモデルには、セルフケアに影響を与える基本的な条件付け因子が含まれており、その中には社会的・環境的要因や資源の利用可能性と適切性が重要な役割を果たしています。レンカーの研究では、身体的虐待が主要な社会的環境的要因を表し、社会的支援が資源の利用可能性と適切性を表現していました。さらに、セルフケアエージェンシーの測定にはDenyes Self-Care Agency Instrumentが、セルフケア実践の測定にはDenyes Self-care Practice Instrumentが使用されました。この研究により、レンカーは「身体的虐待がないこと、そして社会的支援があることがセルフケアエージェンシーを高める」という仮説を検証しました。この仮説が検証された結果、セルフケアエージェンシーのレベルの上昇がセルフケア実践を促し、これが児の出生時体重の増加や妊娠合併症の減少につながることが期待されました。レンカーの研究結果はオレムのモデルを支持し、虐待された10代の妊婦は虐待されていない10代の妊婦に比べて有意に低い出生時体重の子供を産んだことが確認されました。また、社会的支援、セルフケアエージェンシー、セルフケア実践はすべて児の出生時体重と有意な関係があることが明らかになりました。この研究の独自の強みは、オレムのセルフケア不足モデルが研究デザイン全体を通じて一貫して使用されている点です。レンカーはこのモデルに基づいて仮説を立て、オレムのモデルの主要な構成要素を研究変数として組み込みました。さらに、オレムの理論の構成要素を評価するために、いくつかのデータ収集ツールが具体的に開発されました。次に、質的研究の例として、ケアリングに関する理論の開発を紹介します。多くの質的研究は、理論開発を明確な目標としています。ここで、ケアリングに基づいたカウンセリング介入を開発するために、ケアリングに関する経験的に導出された理論を開発した質的研究の努力を見てみましょう。スワンソン(Swanson, 1999)は、ケアリングに関する理論を導出し、それをもとに妊娠期における女性へのケアリングプログラムを開発しました。この理論は、流産した女性が経験したケアリング、新生児集中ケアユニットでの両親と医療専門職が提供するケアリング、そしてリスクのある母親が公衆衛生看護師から長期にわたって受けたケアリングの3つの異なるコンテクストに基づいています。データは研究参加者との徹底的な面接と観察を通じて収集され、5つのケアリングプロセスが明らかにされました。これらのプロセスは「知ること」「ともにいること」「他者のためにすること」「可能にすること」「信じ続けること」として定義されました。スワンソンの理論は、流産した女性に対するカウンセリングプログラムの開発に活用され、さらに他の研究にも応用されました。
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