ヒトを対象とする研究を実施している臨床研究者の利益相反を防ぐための規則【統計解析講義応用】

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ヒトを対象とする研究を実施している臨床研究者の利益相反を防ぐための規則|【統計学・統計解析講義応用】

ヒトを対象とする研究を実施している臨床研究者の利益相反を防ぐための規則【統計解析講義応用】


目次  ヒトを対象とする研究を実施している臨床研究者の利益相反を防ぐための規則【統計解析講義応用】

 

 

ヒトを対象とする研究を実施している臨床研究者の利益相反を防ぐための規則

 

医師個人の公正性(personal integrity of the physician)は,有史以来社会の重大な問題である.

 

ヒポクラテスの誓い(Hippocratic Oath)は,医療者の行為に関する社会規範を定めることにより,医療倫理を推進しようとする最も古い試みの1つである.

 

臨床研究において,研究者(医師でない者も多く含まれる)と患者との関係は,医療における関係とは若干異なる関係を伴うので,臨床研究が適正に行われるためには社会規範の樹立が必要であった.

 

倫理規範には,臨床研究に参加する被験者の保護に関する内容が含まれる,

 

この問題に関するChristine Grady博士のいう臨床研究における倫理的原則では,臨床研究における倫理問題について,広範かつ専門的な議論が展開されている.

 

一方別の問題として,実際に存在するか,あるいは存在するのではないかと疑われる利益相反(conflicts of interest. COI)が,臨床研究の公正性に影響を及ぼすかもしれないことがある.

 

この問題は,官民双方で厳格な監視の対象となっている.

 

利益相反はもとより臨床研究に携わる研究者の利益相反を防ぐために米国国立衛生研究所(National Institutes of Health. NIH)において講じられている方法について解説を行う.

 

生命倫理学者のEzekiel Emanuel は,医師の主な関心として.

 

(1)患者の福利(well-being)および健康を促進する.

 

(2)研究を通して,生物医学的知識を前進させる.

 

(3)将来(未来)の医師や他の医療従事者を訓練(教育)する,の3つを挙げている.

 

利益相反は,これらの目標を達成するために医師が行う医療行為の客観性が他の関心によって損なわれた(あるいは損なわれたと考えられる)場合に生じる.

 

そのような利害は,研究プロセスの妥当性に疑念を生じさせたり,患者を不要な危険(リスク)にさらす可能性がある.

 

利益相反は,不適切な行為に結びつく場合もある.

 

医師は,彼らの行為を勣機づける企業または他の誘因への金銭的関心を持つことがあり,研究活動が社会に対して損失を招いたり,被験者がリスクにさらされたり,データの解釈や報告方法に影響を与えることがある.

 

仮に,研究者には明確な意図がないとしても,利益相反が垣間見られたならば,臨床研究の公正性を蝕むものとなる.

 

研究者が本来行うべき水準以下の事項しか行わないようにしているのであれば,不作為による責任が発生する場合もあり,臨床試験において生じた有害事象の報告を怠ったり.合併症が発現している可能性を調べないなどの例が考えられる.

 

このように,被験者の脆弱性(vulnerability)や臨床研究事業の脆性(fragility)が伴っていることを考えるならば,臨床試験において利益相反のおそれがある事態や利益相反を招きうる事態を防止することは臨床研究者にとって不可欠である.

 

ほとんどの臨床研究者が,金銭的な関心によって研究に影響(バイアス)が生じることはないと強く否定するが,製薬企業との関わり(interaction)によって医師の判断に影響が生じることが.研究によって明らかにされている。

 

製薬企業から何らかの報酬を受け取っている研究者には,これらの製薬企業の医薬品の安全性を支持する傾向が高いことから,研究活動においても同様に影響を受けるであろうと推定することができる.

 

製薬企業やバイオテクノロジー企業(バイオテク企業)は,臨床試験を頻繁に支援している.

 

これらの試験の質が非営利団体(Nonprofit Organization, NPO)の行う研究よりも厳密性に欠けるという証拠はない.

 

しかし, Bekelmanらが製薬企業の援助があった文献で報告された研究結果をについて系統的レビューを行ったところ製薬企業による援助と薬剤に関する肯定的な試験結果との間には,統計的に有意な関連性が認められた(オッズ比3.60%,信頼区間2.63〜4.91).

 

多発性骨髄腫の治療に焦点を当てた136件のランダム化試験についての他のレビューでは,製薬企業が試験を援助した場合,新治療法が肯定的な結果になる割合が,製薬企業の援助がない試験の47%と比較して74%であると報告している.

 

これらのデータは,治験依頼者(スポンサー)が経済的に利益を得る場合には肯定的な結果が出る可能性が高く,スポンサーが試験に金銭的なつながりがない場合には,より否定的な報告がなされることが多いというバイアスを示している.

 

臨床研究者の信頼を損なう可能性がある利益相反の事例として, New York 77・Es,その他のメディアに収り上げられた一連の記事がある。

 

投資家に対して助言を行う投資エージェントは,新薬や医療用機器が認可される見込みについての見解を求めるために,医師や臨床研究者に対してますます調査を行うところが増えている.

 

情報に通じた臨床研究者から製品化の可能性についての見通しを聞くために,巨額の手数料が支払われている.

 

そしてアドバイスに対する多額の報酬を受け取りたい科学者がいるために,臨床試験情報業との関係に関する制約は,全面禁止ではなく,その公正性が侵害される可能性が高くなっている.

 

強固な協力関係や相互関係は残っている.

 

 

共同研究的に臨床研究プロトコールに関与している臨床研究者の研究開発契約(Cooperative Research and Development)は,そのような相談を避けることが適切である.

 

臨床試験の結果を論文や学会で発表・レビューを行う場合に関して,問題が指摘されている.

 

医薬品や医療用機器の研究や評価を公表することによって利益を受ける企業があり,その企業との間に金銭的その他の利害関係がある研究者は,利益相反によって自分の研究者としての信憑性が損なわれる可能性があることを認識しなければならない.

 

見識のある学術誌は,著者に利益相反関係があることを表記することによって,この問題に対処しようとしている.

 

このプロセスは,「利益相反の開示(disclosure)」と呼ばれているが,利益相反を排除することはできないので,研究結果を信頼することができるのかどうか,読者は迷うことになる.

 

医学生涯教育認定機構(Accreditation Council for Continuing Medical Education, ACCME)では,この問題に対して厳格な立場を取っており. ACCMEが認定する訓練活動には,利益相反開示のみでなく,利益相反がないことを要求している.

 

医学会その他の医学教育を提供する団体が利益相反に対して対処する方法として.次の3つの方法が提唱されている.

 

すなわち. (1)研究者に対してあらゆる利益相反の開示を求めること. (2)利益相反が存在する場合には,様々な方法で管理を行うものの,完全には排除できないことを認めること. (3)利益相反自体を禁止すること,の3つである.

 

専門機関では,この3つの方法を用いてガイドラインを策定しているところも多い.

 

利益相反を回避する,あるいは利益相反の出現を回避するのが明快な方法である.

 

2005年8月に交付された利益相反規則を始めとする,倫理に関する連邦法と連邦規則に基づいて, NIHでは可能な限り,臨床研究者の利益相反を排除する試みを行っている.

 

米国保健福祉省(Department of Health and Human Services, DHHS)がNIH傘下の全機関を対象に利益相反規則を制定してから7年が経過した. Zinnerらは, NIHにおける科学者のモラル,採用および生産性に対する連邦規則の効果について報告した.

 

ほとんどの研究者にとって,制定された規則が好ましいものではないものの.研究機関と産業界との相互関係に対して及ぼした全体的な効果から考えて,両者の関係は健全で利益相反のないものであったことを示している

 

2005年に導入された製薬企業やバイオテク企業Agreements, CRADA)や臨床試験契約(Clinical Trials Agreement, CTA)を含む業界との契約については. NIH技術移転・倫理審査室(NIH Technology Transfer and Ethics Office)が徹底的な審査を行っており,産業側との関係を強化するとともに,倫理ガイドラインに従い利益相反を防止して,より社会から信頼を得られるような試みが行われている.

 

このような方法は,政府系研究機関以外の臨床研究者にとっては,理想的とは言えないものかもしれないが,利益相反を避けることを目指す臨床研究者にとっては,目標となりうる高い基準となっている.

 

NIHや公衆衛生局では,外部団体等との間で経済的な利益相反が発生しないように規制する制度が設定されている(42 CFR 50. subpart F).現行の連邦規則は,改正が行われており,最新版は,http://grants.nih.gov/grants/policy/coi/からアクセスすることができる.

 

 

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