生存時間解析における特記事項|【統計学・統計解析講義応用】
生存時間解析における特記事項
係数と共変量の経時変化
イベントが発生するまでの時間や生存時間解析のことを話す時,通常我々は時間を応答の一部として測ろうとしている.
しかし,時に他より優れる治療処置の有益性(例えば,ハザード比)が時間の経過に対して一定でない,あるいはベースラインで測定された変数が時間とともに変化することがあり,そしてそのような場合に我々はイベント発生のリスクの変化を評価するために統計解析やモデルの中でそれを捉えるようにしたいと思うことがある.
これらの解析とその解釈について議論する.
時変係数または時間依存性ハザード比
Cox回帰では.比例ハザードの概念が重要である.
それはイベントの相対リスク,より具体的には回帰モデルの係数βの値は時間が経過しても不変であることを意味している.
もし比例ハザード性を持たない場合,回帰係数βは経時的にモデル化されて時変係数(time varying coefficient)として参照される必要がある.
この手法は既に標準的な統計解析ソフトウエアに実装されている.
長期臨床試験やコホート研究では,治療処置群のハザード比が時間とともに変化するかをチェックすることが重要であろう.
このためのデータ解析の方法がいくつかあり,そのために前もって良い試験デザインの作成が重要である.
なぜそれが問題になるのか.
もし根本的なデータがその必要な仮定を満たさなければ, log-rank法のような検定やCox回帰の係数が差を検出するために持つ検出力は乏しいものになり,そしてそのような状況はかなりよく見受けられる.
初めの12ヵ月または24ヵ月間で似たような生存時間プロファイルを持つが,その後生存率曲線が分かれていくような2つの治療処置群を考えてみよう.
多くの試験は短い追跡期間の後に終了するので,多分もっと長い追跡の後の少しのデータやあるいはその他考慮すべき問題があるかもしれないが治療群の間に有意な差がないように見えるかもしれないものは,見方によれば,実際には統計的な検定(あるいは試験デザイン)では捉えられない異なった治療介入である可能性がある.
同様に,もし生存時間曲線が初めから分かれていて後の方で一緒になる場合は,試験デザインと検定に用いるモデルの仮定について慎重にならなければ.統計検定は時間の変化に伴う治療間の真の差を捉えることはできないであろう.
相対リスクは時間の経過に伴い変化する場合があるので,すべての生存時間解析の計画は比例ハザード性の仮定が妥当か評価することを含むべきである.
比例ハザード性の仮定に対する検定は概して検出力が低い.
比例ハザード性の仮定が崩れていないという帰無仮説を棄却できないことは,比例ハザード性の仮定が成立していることを意味するものではないことに留意しておくことは大切である.
そのような紛らわしい結論をすることはよくあり,そして読者は誤りを避けるよう慎重になるべきである.
比例ハザード性の検定が持つ検出力は通常低いため,帰無仮説が間違っている時でも大抵の場合で人はそれを棄却することができない.
故に多くの統計家は,モデルの仮定が崩れているかについてはグラフを見て評価し,正規の仮説検定を行わない.
治療の有益性が時間に伴い変化することに関して,もう1つ重要な問題はどのようにして治療の有効性を要約して示すかということである.
治験治療は初めに若干の害をもたらすかもしれないが,後の方で対照群と比較して非常に大きい延命効果に結びつくかもしれない.
解析の段階でこれをどのように扱うか.これは複雑な問題で,試験毎に計画段階で慎重に考慮しなければならないことである.
多くの場合,治療効果が時間とともに変化することが予想されるか,あるいは判明した際には,治療の有益性に関して複数項目の観測を行うことが考えられることになるだろう.
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