労働に関する統計調査とそのデータの分析|【社会経済統計学・統計解析】
▼▼▼▼▼▼▼▼
チャンネル登録はこちら
労働に関する統計調査とそのデータの分析
労働力率
労働量については雇用(人)、時間、人×時間と3通りの単位が考えられる。
また、原数値と指数(特定時点を100とした表示)の二つの表示方法がある。
さらに、労働量は統計的に供給(家計)側と需要(事業所)側から把握可能である。
このうち、労働時間および賃金を中心に、原数値が主として用いられる。
失業率と有効求人倍率
労働経済で注目される一つの指標は失業率である。
なお、統計指標では、完全失業率と呼ばれている。
完全失業率(総務省)は有効求人倍率(厚生労働省)とセットで発表されており、両者は労働市場の需給状況を示す指標となっている。
完全失業率は労働力人口に占める完全失業者の割合をパーセント表示したものであり、労働力調査により得られる。
労働力調査では、完全失業者とは就業者ではなくて、調査期間中に就業可能で、調査期間中(過去1週間)に求職活動を行った者と定義されている。
なお、仕事があればすぐ就ける状態で過去に行った求職活動の結果を待っている者も完全失業者に含めることとしている。
一方、有効求人倍率とは、有効求人数を有効求職者数で除した値であって、求職者1人当たりの求人数を示しており、ハローワーク(公共の職業安定所)の求人・求職者数を集計した職業安定業務統計から得られる。
有効求人数とは、前月から繰り越された未充足の求人数に当月の新規求人数を加えた数であり、有効求職者数とは、同じく前月から繰り越された就職未決定の求職者数に当月の「新規求職者数」を加えた数である。
なお、求職者は必ずしも失業者ではなく、職をもちながら求職活動を行っている者も含まれる。
また、失業者が必ずしも公共の職業安定所で求職活動を行うとは限らず、最近はその数が増えてきているといわれており、カバレッジが指摘されている。
完全失業率が上昇すると有効求人倍率は低下し、完全失業率が低下すると有効求人倍率は上昇する。つまり両者は逆の動きをとる。
また、長期にわたって両者の関係をみると、完全失業率は、有効求人倍率に遅れて推移する傾向がある。
近年は有効求人倍率が上昇しても完全失業率が改善されない傾向がみられる。
これは、仕事が増えてきても求人側と求職側の条件が一致しない(いわゆるミスマッチ)ことにより、就職に至らないケースが増えてきているためとみられる。
失業は発生する原因によって、需要不足失業、構造的失業、摩擦的失業の三つに区分することができる。
需要不足失業は、景気後退期に労働需要が減少することによって生じる失業である。
また、構造的失業とは、労働需要が充たされていないにもかかわらず、企業が求める人材と求職者のもつ能力や希望が一致しない、いわゆるミスマッチにより生じる失業である。
三つ目の摩擦的失業とは、求職者と求人企業の互いの情報が不完全であるため、両者が相手を探すのに時間がかかることにより生じる失業である。
ただし、構造的失業と摩擦的失業を明確に区分することは困難であるため、通常は両者を併せて「構造的・摩擦的失業」と呼んだり、または摩擦的失業を構造的失業に含めたりしている。
それでは、日本の需要不足失業と構造的・摩擦的失業の動向をUV分析によって見てみよう。
UVのUとは失業(Unemployment)すなわち需要不足を、Vとは欠員(Vacancies)すなわち需要超過を意味する。
横軸に欠員率、縦軸に失業率をとり、各時点の組み合わせを図上にプロットして、その時系列的な動きをとらえた曲線をUV曲線という。一般に、欠員が増えると失業が減り、欠員が減ると失業は増えることから、プロットした点を結ぶと右下がりの曲線として描かれることになる。
また、右上(左下)への動きは構造的。摩擦的失業率の上昇(低下)を、左上(右下)への動きは需要不足失業率の上昇(低下)を示している。
実際のデータをプロットしてみると、完全失業率が急激に上昇しはじめた1998年以降、UV曲線は右上に移動しており、構造的・摩擦的失業率が大きく上昇したことがわかる。
雇用状況が悪化すると、日本の失業者数や失業率は、国際的に見て低く計算されているのではないかといわれることがある。
失業者の定義についてはILOが国際基準を設定しており、各国と同様に日本もその基準に準拠し、調査が行われている。
しかし、ILOの基準には、定義に幅があったり、国情に応じた特例を認める部分もあったりすることから、各国が発表した数値を単純に比較することは危険が伴う。
そこで、OECDは各国の失業率をILO基準に近づけるための調整を行った標準化失業率を算出している。
関連記事