資産等のストックに関する統計|【社会経済統計学・統計解析】
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資産等のストックに関する統計
資産等のストックに関する統計
家計の資産,負債等の全体的な把梶に関しては,家計(個人企業を含む)部門のバランス・シートが明示されている国民経済計算の結果が便利である。
資産は大別すると,住宅,設備(個人企業を含むため),土地等の非金融資産と,預金,株式等の金融資産とからなる。
この資産から負債を差し引いたものが正味資産といわれ,いわば家計部門の富を示すバランス項目である。
家計部門の主要資産の金額(各暦年末の存在高つまり残高)と構成比については、固定資産は住宅,設備等の和であり,金融資産には預金等以外に債券,生命保険等が含まれている。
各資産の構成比の推移は、固定資産は1980年の14.2%から1990年の8.4%に低下したが, 1995年に9.7%に上昇し,その後は9%台で推移している。
土地は地価の影響を大きく受ける資産である。
したがって,バブルの1990年には54.3%と全資産の半分を超えていた。
その後,地価の下落とともにその比重は低下し, 2003年には32.7%となっている。
金融資産は1985年(41.2%)から1990年(36.2%)にかけて低下した後,バブル崩壊後は上昇に転じ2003年では57.3%となっており,金利がかなり低い中で,その比重は高まっている。
期末資産(合計)は1980年は1002兆円であったが,バブル期の1990年には2735兆円と2.7倍に増加している。
その後,地価の下落により1995年には2640兆円に減少し,2000年は2677兆円とやや増加したが, 2003年は2533兆円と, 1995年に比べて200兆円の減少となっている。
このように1980年以降,資産額および資産構成(選択)は大きく変化している。
資産の大きな特徴の一つは,フローの所得分布等と比べて世帯単位に見た分布が不平等なことである。
全国消費実態調査は家計調査より規模の大きい標本調査で5年ごとに実施されている。
家計調査に比べて資産に関する結果は多岐にわたっており,金融資産・負債残高が調査されているほかに,住宅・宅地や耐久消費財についても,調査結果をもとに資産額が推計されている。
各項目のジニ係数は,年間収入が0.297、耐久消費財が0.341、金融資産残高が0.538、住宅・宅地資産が0.641、負債が0.793である。フローの所得である年間収入のジニ係数がやはりこの中では小さく,最も平等といえる。
耐久消費財は通常フローでは,隧入時点て消費されたとみなされるが,中古自動車などは実際に市場で売買されている。
そのため,残存価値があるので資産と見て,その残高を推計してジニ係数を求めると,その値は年間収入よりも大きい。
また,住宅・宅地資産のジニ係数は金融資産残高よりも大きい。
それよりもさらに負債のジニ係数が大きい点に注目する必要がある。
これは負債のある世帯は一部の世帯で,また高額に偏っていることを示唆している。
次に個別資産の動向について、住宅と土地については,5年ごとに実施される大標本調査の住宅・土地統計調査(指定統計:総務省)がある。
この調査では,住宅の所有関係,構造,規模,建築時期,敷地面積,家賃などのほか,住環境や世帯の年間収入などの世帯属性についても調査している。
しかし,物理的な項目が主であり,金額的な項目は多くない。
したがって,住宅属性の分析に適している。
ただし,年間収入等の情報を利用すれば,住宅立地の分析等にも有効である。
空き家率を見ると,全国平均では1983年には8.6%であったのが, 2003年には12.2%まで上昇しており,住宅全体の1割以上が空き家となっている。
東京都の空き家率も1983年は9.2%であったのに対して, 2003年は11.2%と上昇している。
しかし,5年前(1998年)と比べるとやや低下しており,全国平均の動きと異なっている。
これは,地価の低下による都心回帰を反映したものと見られる。
次に持ち家率を見てみよう。全国平均の持ち家率は,地価の高騰もあって1993年(59.8%)までは低下していたのが, 1998年(60.3%), 2003年(61.2%)と上昇している。
東京都区部の持ち家率も全国と同様の動きを示しているものの,全国平均と比べてその水準は低く, 2003年で43.3%となっている。
東京都の持ち家率が低いのは,地価や住宅価格が高いだけではなくて,若年単身者の割合が高いなど世帯構成がかなり異なっていることも影響している。
住宅の延べ面債は,全国平均で見ると,持ち家は1983年(107.25 m2)から2003年(123.03 m2)までの20年間に15%程度広くなっている。
借家も同様に広くなっているとはいえ,増加幅はやや低く, 2003年では持ち家に比べると4割弱の面積(46.91 m2)である。
一方,東京都区部について見ると,2003年の持ち家の延べ面積は87.01 m2と,全国平均の約7割となっている。
また, 1993年(89.68 m2)までは増加していたのが, 1998年(89.10 m2),2003年(87.01 m2)と減少している。
これは,一戸建てよりも狭いマンションなどの集合住宅の占める割合が高くなったためであろう。
しかし,一人当たりの居住室の畳数を見ると,持ち家に限定した数値ではないが,1世帯当たりの世帯人員が少なくなったこともあり, 1998年, 2003年と増加している。
借家の1ヵ月当たりの家賃は,全国平均で見ると1983年(25,606円)から2003年(51,127円)までの20年間に約2倍となっている。
この時期は延べ面積も増加しているものの,それは1.12倍にすぎないので,かなりの上昇である。
また,2003年の家賃を東京都区部と全国平均で比較してみると,東京都区部は全国平均の約1.5倍となっている。
東京都区部の延べ面積は全国平均に比べて狭いので,1m2当たりに換算して比較すると、その差はさらに広がり約1.9倍となる。
住宅の価値はその広さだけでなく,住宅の立地環境にもよる。
その一つの指標として,「日照時問が3時間未満住宅の割合」を見ると,全国平均,東京都区部とも1988年をピークに低下しており,改善している。
また,介護制度の導入もあって, 1998年より最寄りの老人デイサービスセンターまでの距離についての集計結果が公表されている。
これを見ると,全国平均では住宅の割合は1998年では23.4%にすぎなかったのが,2003年には43.7%に上昇しており,老人デイサービスセンターが近隣にかなり増えたことがうかがえる。
ちなみに人口が集中している東京都区部の同割合を見ると, 2003年では73.9%となっており,やはり全国平均に比べて利便性が高いことがわかる。
この統計は住宅,世帯の属性,住宅関連の物的情報に詳しい反面,全国消費実態調査のような金額情報が少ないので,住宅の資産面(金額表示)を分析するときは工夫が必要である。
次に住宅価格の推移について見てみよう。
わが国の住宅価格は一般に高いといわれている。
そのときに示されるのが年間収入に対する倍率(年収倍率)である。『2004年版 住宅経済データ集』からの引用で,首都圏の新規に発売された住宅の平均価格とその年収倍率を、建売住宅について見ると,年収倍率の推移は1990年の8.5倍をピークとして,バブル期に当たる88年(7.5倍)から92年(7.2倍)が高くなっている。
また,その後は低下傾向か続き, 2001年以降では6倍を下回り, 1987年(5.6倍)の水準近くにまで下がっている。
しかし,仮に無利子の住宅ローンを借りて住宅を購入し,年収の25%をその返済に当てたとしても,返済までに22.4(= 5.6÷0.25)年もかかることになる。
実際には無利子の作宅ローンはないので,それ以上の期間がかかるであろう。
年収倍率がパブル期前の水準に低下したとはいっても,やはり住宅の購入が家計に与える影響はかなり大きいといえる。
金融資産について資産選択の状況を見ると、金融資産には,現金,預金等のリスク,リターンがともに小さい安全資金と,将来の市場価値や収益性が不確実な株式等の危険資産(リスク資産)がある。
両資産をどの程度選好するかは,経済学的には富に関する将来時点における期待効用の最大化問題として定式化される。
金融資産の構成比を見ると,日本は現金・預金の割合が54%と最も高く,保険・年金準備金はイギリスが52%と突出して高くなっている。
これは年金制度の違いによるものと見られる。
というのは,年金は大きく公的年金と私的年金とに分けられるが,資金循環統計では私的年金は個人の金融資産に,また公的年金は政府の金融資産に分類されるので,公的年金の役割が柤対的に小さな国ほど個人の金融資産が大きくなる傾向があるからである。
有価証券は,アメリカが57%と最も高く,次いでフランスが43%となっている。
さらに有価証券の内訳である株式・出資金の割合を見ると,アメリカは34%,フランスは32%となっている。
なお,株式・出資金の割合を比較する際は,各国で個人企業の取扱いが異なっていることに留意する必要がある。
それは,個人企業と個人が日本では分離されていないのに対して,アメリカではそれぞれ別部門として両者の出資状況を明示的にとらえているからである。
そのため,株式・出資金の割合が高くなりやすい。
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