臨床試験データの保存【医療統計解析】

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臨床試験データの保存|【医療統計学・統計解析】

臨床試験データの保存【医療統計解析】


目次  臨床試験データの保存【医療統計解析】

 

 

臨床試験データの保存

 

臨床試験データをコンピュータにより解析を行おうとすれば,まず,データをコンピュータに入力して保存する必要がある.

 

そして,どのようにして臨床試験データを集計・解析するのかということも,コンピュータ上に臨床試験データを保存する方法に対して重大な影響を及ぼす因子である.
その昔,ほとんどの科学計算プログラムがFORTRANによって作成されており,プログラムやデータはパンチカードなどで読み込んでいた時代の末期頃から臨床試験データのコンピュータへの保存が行われるようになった.

 

当時は臨床試験データの保存形式としてはアスキーファイル(テキストファイル)しか考えられなかった.

 

その後,ディスクなどが利用できるようになってもかなりの間は,アスキーファイルが依然として主流を占めていた.

 

臨床試験データを症例報告書からコンピュータに入力するためには,データシートと呼ばれるコーディングシートに転記し,キーパンチャーによりデータ入力をしてもらうことが一般的であった.

 

データシートは各行の各カラム(桁)でのデータ配置を示すものである.

 

このデータシートを利用する方法では,とくにデータ転記は労力がかかり,書き間違いも生じやすいことなどから,症例報告書上に行やカラムの情報を印刷しておいて,直接にデータ入力ができるような症例報告書も工夫されてきた.

 

SASがFORTRANプログラムに替わり臨床試験データの集計・解析の主流を占めるようになり始めた1980年代前半頃でも,アスキーファイルはデータ保存の方法として依然として用いられていた.

 

しかしながら,このデータ形式では,修正のための効率的なツールがエディタ以外にはなかったことやデータ項目ごとの履歴管理が難しいことなどから,コンピュータ技術の発展とともにほかの方法が用いられるようになった.

 

その一つのアイデアがSASデータセットとしての保管であり, SAS/FSPあるいはSAS/AFなどとSCL (Screen Control Language)を組み合わせてSASによるアプリケーションとして臨床試験データの管理が行われた.

 

 

しかしながら, SASデータセットもそのままでは履歴管理することができないという問題やダブルエントリーの実現が難しいというような問題があり,次第にほかの解決策へと向かうようになった.

 

この時期に試みられたほかのデータ保存方法としてはMUMPS言語の利用がある.

 

MUMPS言語とはMassachusetts general hospital Utility Multi -Programming System のことであり, 1966年頃から米国にあるマサチューセッツ総合病院のコンピュータ科学研究所で臨床データならびに病歴情報を処理することを目的として開発されたものである.

 

その後1977年には米国規格協会(ANSI ;American National Standards Institute) , 1992年には国際標準化機構(ISO) , 1995年には日本工業規格(JIS)で標準として制定されており,階層型データ構造,柔軟な可変長の文字列処理機能を持つという特徴がある.

 

日本でも1980年代中頃において臨床試験データの管理への実験的な利用が行われたが,リレーショナルデータベースなどの台頭により広く使用されるまでには至らなかった.

 

そして,現在ではリレーショナルデータベースを利用することが一般的である.

 

SASデータセットやリレーショナルデータベースを利用して臨床試験データを保存した場合の一つの問題として,全てSASなりデータベースに依存し,これらがないとデータを見ることさえできないということがある.

 

アスキーファイルの場合には,とくに機種やシステムに依存することなく,いろいろなデータ処理環境で柔軟に利用することができる.

 

このため,臨床試験データそのものの独立性を高めるためには,臨床試験データの管理はSASやデータベースにより行ったとしても最終的にアスキーファイルを自由に作成できる機能も考慮に入れておくべきである.

 

この機能により,様々なシステム間でのデータ交換にも柔軟に対応することができるようになるというメリットが生じる.

 

アスキーファイルを作成することにより, 求められている電子データの見読性を保証することに繋がる.

 

 

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