オッズ比,リスク比,相対リスク,寄与リスク|【統計学・統計解析講義応用】
オッズ比,リスク比,相対リスク,寄与リスク
オッズ,オッズ比,リスク比,相対リスク,絶対的な差を説明するために,単純な2×2分割表を用いる.
これらの指標は,観察研究で報告されることが多い.
これらの関連性の指標の多くは.様々なタイプの回帰モデルからも得ることができる.
絶対リスク(absolute risk)は.ある群におけるリスクの大きさである.
比較群は存在しない.
多くの人が,臨床医と話す時にこんなふうに尋ねることがある.
「私が死ぬリスクはどの程度でしょうか?」これが絶対リスクである.しかし.その回答を聞くと.私たちは比較し始めることが多い.
オッズ(odds)は確率と関連している.
オッズは,ある事象が起こる確率と起こらない確率の比として定義される.
つまり,オッズ=p/(1 - p)と表される.
例えば,馬がレースに勝つ確率が50%なら,勝利するオッズは1対1になる.
もし確率が25%なら,勝利するオッズは1対3であり,負けるオッズが3対1であるともいえる.
疾患ありの人が曝露しているオッズと疾患なしの人が曝露しているオッズを比較すると,オッズ比(odds ratio, OR)は(a/c)/(b/d)またはad/bcとなる.
オッズ比は,ケースコントロールのサンプリングにおいても妥当な関連性の指標であり,広く用いられているロジスティック回帰から推定される関連性の指標であることから,疫学研究で広く使用されている.
その一方で,ケースコントロール研究では,デザインによってケースとコントロールの人数を固定していることから,疾患の絶対リスクを推定することはできない.
例えば,ケースコントロール研究では,ケースとコントロールの人数を等しく設定することが多いが,標本中のケースの割合(1/2)は,一般集団における疾患のリスクを表しているわけではないだろう.
ケースコントロール研究から推定することはできないが,より頻繁にみられる関連性の指標として,相対リスク(relative risk)またはリスク比(risk ratio.RR)がある.
これは,曝露した人のリスクを曝露しなかった人のリスクで割ったものである.
対象疾患が稀であればあるほど,相対リスクはad/bc (オッズ比)に近似することになる.
疾患が稀ならばオッズ比は相対リスクを十分に推定できるが,相対リスクと比べ.リスク=1の値から常に遠ざかってしまう.
つまり,もしオッズ比を相対リスクの指標として用いると,疾病リスクの上昇(相対リスク> 1)疾病リスクの減少(相対リスク<1)のどちらの方向においても真の効果を過大評価する危険性がある.
相対リスクやオッズ比が1の意味は,曝露のリスク(または曝露のオッズ)は,疾患の有無に関わらず同等,つまり,疾患と曝露との間には関連性はないことを示す.
相対リスクとオッズ比は,関連性の強さの指標であり,例えば,ある曝露を取り除くことができたら,どの程度疾患を防げるだろうか,という問いに答えるものではない.
リスクまたは発生率の差は,曝露を受けた集団やある特徴を有する集団の疾病リスクから,それらを有しない集団の疾病リスクを単純に引き算したものである.
この考え方は,絶対リスク,リスク差,寄与リスクとして表される.
寄与リスク(attributable risk)は,ある疾患のリスクの中で,ある特徴や曝露に起因すると想定される量を表す.
寄与リスクは,比較群における絶対リスクの割合として表されることが多いが.目的は過剰リスクを調べることである.
もし.ある観察研究において,新型インフルエンザに感染している群(Group A)の死亡率が25%,変異のある群(Group B)の死亡率が50%であるという報告があった場合,一般的に我々はGroup B は2倍予後が悪いと速断する.
それは.直感的に相対リスクを用いているといえる.
オッズ比は3である,とすぐに答える人はわずかだろう.
オッズ比は3であるが,その値を,コンピュータなしで単純なデータからそう判断する人はほとんどいない.
文書中にオッズ比を報告することがあるが,残念ながら,オッズ比は3である,という記載をみた人は, Group B の人は死ぬ可能性が3倍になると誤った解釈をするだろう.
オッズが3倍高いと記述するかもしれないが,そのように記述してもニュースを読んだ人に誤って解釈され,死について不安にさせるだろう.
その上,リスク差でさえも様々な解釈ができる.
もしかしたらGroup A における生存確率は0.005 %, Group B における生存確率は0.00001%であるかもしれない.
このことから死について心配し,可能な限りの予防手段をとるべきだろうか.絶対リスクはその必要はないということを教えてくれるだろう.
もし,我々や我々の身近な人が死ぬと,関心をもつであろうし,予防手段を取っていたらと思うだろう.
そのような状況が身近なものでなければ,測定されることすべてに不満を表すこともあるだろうし,もしくは,死について必要以上に不安に思ったりすることもあるだろう.
相対リスクと寄与リスクの概念は,政策や予防策を決断しようとする際には,極めて重要である.
それらは観察研究で用いられるだけでなく,研究データを解釈するために使われることも多い.
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