因果関係,予測,関連性,交絡の混同【統計解析講義応用】

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因果関係,予測,関連性,交絡の混同|【統計学・統計解析講義応用】

因果関係,予測,関連性,交絡の混同【統計解析講義応用】


目次  因果関係,予測,関連性,交絡の混同【統計解析講義応用】

 

 

因果関係,予測,関連性,交絡の混同

 

以下の例を考えてみよう.母親のゲノムと娘の身長には因果関係がある.

 

なぜなら,娘は,身長に彫響を与える母親の遺伝子の一部を授かっているからである.

 

しかし,もしその母親には息子もいるとすると,息子のゲノムは娘(彼の妹)の身長に単に関連しているにすぎない.

 

なぜなら,その息子と娘はそれぞれ,母親の遺伝子の一部を授かっているが,息子は自分の遺伝子を全く妹に授けてはいないからである(ギリシア悲劇を除いて).

 

結局は,母親のゲノムと栄養プログラムは交絡している.

 

なぜなら,それらが娘の身長に与える影響は混ざり合っているからである(余談:ランダム化研究は交絡の影響を受けないわけではない).

 

母親の身長は,子の身長を予測するためのアルゴリズムの一部として用いられるであろう.

 

別の仮想的な例を考えてみよう.

 

ある研究者のチームが,喫煙は早期死亡を引き起こすかという問いに答えるため,コホート研究をデザインすると仮定する.

 

彼らは,中年男性(50〜55歳)から喫煙者と非喫煙者を2,500例ずつ集め,2つの群を設定する.

 

被験者は,ベースラインで調査を受け,前向きかつ長期的に追跡調査されて,死亡した時の年齢が記録される.

 

仮に,死亡するまでの時問の中央値が非喫煙者に比べて喫煙者で8年早く,この差は統計学的に有意であるとする.

 

研究者が,この研究から喫煙は早期死亡を引き起こすと結論づけることは,正当だといえるだろうか.

 

そうとはいえない.

 

タバコ会社は,喫煙者と非喫煙者は本質的に異なる,と答えるだろう.

 

おそらく,人々に喫煙をさせるような(または,そういう気持ちにさせるような),また,人々を早期死亡させるような,いくつかの遺伝的要因.社会経済的要因.行動要因が存在するであろう.

 

それでもこの研究から喫煙は早期死亡と関連していると研究者が結論づけることは.正当だといえるだろうか.

 

それはいうことができる.

 

関連性を示すことは.観察研究の明確な役割である.

 

この研究において,50〜55歳という年齢層は適切だったのか.おそらく興味のあるイベントの観察や研究課題のためではあるが,もし50歳になる前に死亡していなければ試験に参加していた可能性があった男性は含まれていない.

 

この結果を他の年齢層の集団に一般化するのは困難だといえるかもしれないし.もし,50歳になる前に死亡する男性のパーセントが小さいかその理由がよく特徼づけられるものであるならば,結果を一般化することに抵抗はないだろう.

 

 

観察研究とランダム化研究は,一致することはないと想定すること

 

数多くの観察研究が,女性の健康に関する一連の大掛かりな臨床試験の実施につながった.

 

Womens Health Initiative (WHI : 女性の健康イニシアチブ)は,複数の予防に関する仮説に動機づけられた,閉経後の女性が参加する一連の試験で構成されており,1991年に始まった.

 

女性たちは,ランダム化比較試験や観察研究に登録された.

 

ホルモン補充療法(HRT)の仮説は,エストロゲン補充療法に割付けられた女性は冠動脈性心疾患(coronary heart disease, CHD)と骨粗鬆症による骨折の発生率が低くなるだろう,と想定するものであった.

 

子宮のある女性でプロゲスチンとエストロゲンが併用される場合は,乳がんと子宮内膜がんがモニターされるだろう,

 

閉経後の女性におけるHRTの心保護作用の仮説は,観察研究では証明することはできていなかったが,閉経が脂質プロファイルへ及ぼす悪影響のため. HRTは時間とともに広く受け入れられるようになっていった.

 

WHIより前に,30の観察研究の大部分で,エストロゲンを使用している集団において年齢を調整した全死因死亡率が下がるという疫学的なエビデンスが報告された.
これらの観察研究の参加者に関する人口統計学的特性については疑問が残っていた.

 

それは,60歳以降にHRTを始めた女性にはほとんど関連のないかなり健康的で若い参加者のデータ,プロゲスチンによる拮抗のないエストロゲン補充療法ではなくエストロゲン補充療法にプロゲスチンを追加した併用療法を用いること,総合的にみた時のリスクとベネフィットのトレードオフ,についてであった.

 

観察研究において,長期にわたるエストロゲン投与による乳がん発症リスクの軽度の上昇が指摘されていたが,当時はプロゲスチンに関する有害事象のデータに一貫性はみられなかった.

 

WHIが始まった当初は,最も長い追跡調査を行う研究となる予定であった.

 

その臨床試験で取り組まれた問題は,疫学的なエビデンスに基づいて提起されたものであった.

 

WHIにおける食事の址もまた疫学的エビデンスに基づくものであった.

 

コホート研究をベースとしてランダム化比較試験(randomized controlled trial. RCT)に取り組む場合に,対応しなければならないいくつかの重要な点がある.

 

コホート研究を行う動機が,ある治療や曝露に関連するリスクを評価することであれば,その短期的な効果と長期的な効果を評価するため,研究には,長期にわたって治療や曝露を受けている被験者だけでなく,新たに治療や曝露を受けた被験者も十分に組み入れることが必要である.

 

時間的変動についても考慮に入れる必要があり,曝露の影響を評価するには,定義した曝露期間にわたる評価をすることが必要となるかもしれない.

 

未測定の要因による交絡は,観察研究において重要な問題であり,観察研究が誤解を招く結果に終わる要因の1つである.

 

WHIにおけるエストロゲンとプロゲスチンの併用群は,心保謾作用がみられず.特にHRTを始めてから最初の1年間は, CHDのリスクが高まる可能性があったことから,早期に中止された.

 

重要なことは単純にイエスかノーかでは解決せず,自身の健康状態と家族歴について医師と話すように勧められた.

 

WHIのホルモン療法の試験結果を驚くべきことだと考える人もいれば.そうでない人もいた.

 

その経験が我々に教えてくれることは,観察研究をデザインしたり観察的なデータを解析したりする場合には,細心の注意を払うべきであるということである.

 

パブリケーションバイアスの可能性,研究実施下における集団の変化,以前に実施された研究データの誤った解析(やむを得ない状況だったとしても)が,結果の変動を引き起こす可能性がある,ということは覚えておかなければならない.

 

また,集団は時間とともに変化する.

 

仮説の設定は.特にコホートデータがベースになることが多い予防の研究においては,必須であり,一見して想像するよりもはるかに難しい.

 

研究者として,今の研究を計画している間に,前もってその研究の先にある予期した(予期せぬ)結果に由来するであろういくつかの試験や研究について,常に考えておく必要がある.

 

 

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