ネステッド・ケースコホート研究【統計解析講義応用】

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ネステッド・ケースコホート研究|【統計学・統計解析講義応用】

ネステッド・ケースコホート研究【統計解析講義応用】


目次  ネステッド・ケースコホート研究【統計解析講義応用】

 

 

ネステッド・ケースコホート研究

 

ネステッド・ケースコホート研究とケースコントロール研究はよく似ているが,ネステッド・ケースコホートデザインとネステッド・ケースコントロールデザインは,いくつかの点で異なる.

 

ネステッド・ケースコホートデザインは,被験者の状態や時点に関係なく,事前に(a priori)標本を抽出する.

 

主にケースコホートデザインは,興味のあるアウトカムが,ある2値のイベント(もしくはfailure)が起きるまでの時間に着目したものである場合に用いられる.

 

failureが稀で,共変量の値を確認するのに多大な資源が必要となる可能性がある大規模なコホートでは, failureまでの時間を解析したいことがよくある.

 

時間軸やfailureまでの時間に関するアウトカムに様々な選択肢がある場合は,ネステッド・ケースコホート研究は,ネステッド・ケースコントロール研究に比べてより柔軟である.

 

ケースコホートデザインの解析は,容易ではないが,標準的なソフトウェアで行うことができる一般的なCox回帰を改良した方法である.

 

観察とデータ解析

 

研究対象となるすべての変数,特に疾患アウトカムは,試験開始前に的確に定義し,それを研究の進行中一貫して維持しなければならない.

 

ただ,研究が長期にわたる場合には,時間とともに診断方法や技術が進化していくために難しい.

 

例えば, Framingham Heart Study (フラミンガム心臓研究)が始まった1948年の心筋梗塞の基準は,今とはかなり違っている.

 

頭蓋部画像の追加は脳卒中診断に大きな影響を与えた.

 

非常に軽度の脳卒中の発見が増えたため,脳卒中の発生率が上がると同時に致死率は下がった.

 

このような場合,新技術が利用できても敢えて従来の観測法を用い続けることで対処できる.

 

ただし,新技術が明らかに改善を意味するならば,科学的に不合理で非倫理的である.

 

また,臨床現場において既に新技術が採用されていれば,選択の余地はない.

 

検査プロトコールの中で従来法を用いると規定したとしても,病院記録や外部の医療情報から得られた追跡情報では,おそらく新技術が採用されているであろう.

 

この場合の対処法としては,新旧両方法を一定期間用いてその比較を行った上で,新旧方法の違いを(可能であれば)経時的に解析で調整することがあげられる.

 

この例は心筋梗塞診断法でみられた.

 

クレアチンキナーゼアイソザイム,最近ではトロポニン測定が導入された.

 

新測定技術が従来法に比べて改善しているかが判然としない場合は,従来法を維持する方が賢明であろう.

 

軽度の技術革新ならば広く採用されず,結果的に開発者らが放棄してしまうかもしれないのだから.

 

アウトカム変数は,信頼の度合い(ハードさの度合い)と再現性に幅がある.

 

死亡は,明白な状態なので「ハード」アウトカムと見なされている.

 

他のすべての変数は,客観的だといわれている臨床検査値でさえ,それらをより変助させてしまう主観性や測定誤差を有しており,その度合いはそれぞれの変数で様々である.

 

例えば.一般的に死亡したのかそうでないのかは確認できるが.データは往々にして統一した方法で収集されておらず,収集も不完全なので,死因を正確に特定することはより困難である.

 

統一された定義がないアウトカムや,狭心症や異形成症など競合死因の多いアウトカムの分類はますます難しくなる.

 

すべての研究デザインに共通していえることだが,標準化した分類基準を曝露ありおよび曝露なしの両群に適用し.アウトカム判定時に生じるバイアスを回避しなければならない.

 

疾病の定義には,複数の研究者グループが.同一の基準を用いて同じ症例を評価したときに,同じ結論に到達できるだけの信頼性と再現性が求められる.

 

大規模な研究に参加する研究者は.アウトカムの分類方法について再現性の評価を実施する必要がある.

 

特に難しいあるいは重要な評価項目については,同じ症例を複数の人に評価させる,

 

または,最初の分類から何年か後に盲検下で再度分類させることなどが必要となる.

 

これは,研究のためだけでなく,後に研究結果を自分自身の状況や集団に当てはめようとする人のためにも重要なことである.

 

追跡完了率は可能な限り高く維持すべきである.

 

欠測データに対処するための最も簡単な方法は.欠測データがないことである.

 

長期にわたる観察研究では,臨床試験と比べてデータが欠測となりやすい.

 

なぜなら,介入を受ける可能性がないため,被験者は関心がなくなって脱落することがより多いからである.

 

非回答者と同様,研究から脱落する人としない人の特性の違いは,深刻なバイアスの原因となり得る.

 

追跡不能例の数が,研究対象集団の10%,特に20%を超える場合は,結果の正確性と一般化可能性に関する問題が生じてくる.

 

いくつかの非常に大規模な研究では,何年にもわたってほぼ100%のデータの追跡率を維持してきた.

 

困難ではあるが,それは可能なことなのである.

 

前向き研究の結果は,前述したように2×2分割表で示すことができ,曝露要因を測定した後に対象疾病の発生を確認できることから,相対リスクを直接出せるメリットがある.

 

しかし,2×2分割表は,存在する可能性のある,複数の関連性の構造を考慮にいれることができない.

 

回帰分析などの統計的手法は,潜在的な関連性を明らかにするのに役立つものとなるだろう.

 

データの解釈では,疾病との関連性や疾病の危険因子を特定し,得られた結果がどの集団にまで一般化できるかを考察する.

 

特定の曝露に関連したリスクの統計学的有意性に加え,関連性の強さ(相対リスクの大きさ)および曝露要因の有病率は,一般人口全体の疾患発症のリスクに与える曝露要因の影響力を判断する大事な要素である.

 

疾患と弱い関連性のあるありふれた危険因子の方が,アウトカムにはるかに強い関連性のある稀な危険因子よりも,公衆衛生への影響は大きい可能性がある.

 

 

メリット/デメリット

 

前向き研究での症例は.発生(incident)症例であり有病(prevalent)症例ではない,というメリットがある.

 

ケースコントロール研究に組み入れられることが多い,有病(より長期間の罹患,既に確認されている)症例に比べ,全患者をより代表しているといえる.

 

前向きコホートデザインにより,発生率や相対リスクの推定値を直接得ることができるだけでなく,疾病の自然史に関する情報もより多く得ることができる.

 

後ろ向き研究と比較すると,バイアスの原因となり得る要素は少ない.

 

ただ,対象者の選択,曝露要因の測定,アウトカムの判定から生じるバイアスについては,どちらの方法であっても注意が必要である.

 

ケースコントロール研究とは対照的に,多種の疾病アウトカムを対象曝露要因との関係で評価できるが,曝露要因は研究開始時や適切であれば研究期間中に,アウトカム発生以前に定義・測定する必要がある.

 

これにより,さらなるメリットとして,曝露と疾病の前後関係をしっかりと確立できる点が挙げられる.

 

ケースコントロール研究は稀な疾患について研究する唯一の方法だといえる一方で,前向きコホート研究は研究開始時に稀な曝露を有する人を集めることで,稀な曝露について研究する唯一の方法だといえる.

 

同時的コホートデザインのデメリットとしては,研究の実施期間が非常に長引く可能性があり,標準化した実施方法を維持することや,スタッフや対象者の熱意・関心を維持することが難しいということがある.

 

さらに,自由意志で生活する住民の追跡調査は,引っ越したり,連絡先の情報が変わったりするため.費用がかかる.

 

また,追跡が難しい可能性もある.

 

通常は大規模な対象人口を必要とし,稀な疾病の調査となると,極端に大きなサンプルサイズでない限りは,実施できない.

 

 

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