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母集団

母集団とは，研究者が関心をもつ事例の集合である．

たとえば，博士を有する米国人ナースについて研究する場合，その母集団は，登録ナース（ＲＮ）であって, Ph.D., D.N.Sc.,Ed.D.などの水準の学位をもつ国民と定義できよう．

また，2002年に聖ピーター病院で心臓手術を受けた全男性患者とか，ボストンで乳がんの治療を現在受けている全女性とか，嚢胞線却症をもっカナダの全児童なども，すべて，母集団となる可能性があろう．

母集団は，何千人を含む大きさで定義することもあろうし，わずか数百人に限定することもあろう．

母集団は，人問という対象に限定されるものではない．

ある病院に保管されているすべての病院記録とか，ある健康管理組織のクライエントから採取したすべての血液検体とか，避妊具を配布している学校診療所のある全米の全高校などからなる．

基本単位が何であれ，母集団は必ず，研究者が関心をよせる諸要素の全集合から成り立つ．

標的母集団と対象母集団を区別することが役立つこともある．

対象母集団(accessible population)とは，あらかじめ設定した基準をみたし，しかも研究の対象として接触できる事例の集合である．

標的母集団(target population)とは，研究者が一般化したい事例の全集合である．

標的母集団は全米のすべての糖尿病患者であるが，対象母集団は，ある特定の健康計画のメンバーであるすべての糖尿病患者からなるということもあろう．

研究者はふつう，対象母集団から標本を抽出し，標的母集団への一般化を願う．

エビデンスに基づく実践を展開する際，研究が実施されている母集団についての情報が重要である．

多くの量的研究者は，標的母集団を特定できなかったり，研究結果の一般化可能性の問題を検討できない．

研究の計画や報告の段階で，関心ある母集団を慎重に検討しなくてはならない．

母集団とは、研究者が関心をもつ特定の事例や現象の全体集合を指し、研究の目的に応じて定義される対象範囲が決まります。この集合は、例えば博士号を持つ米国の登録ナース、特定の病院で特定の疾患に対する治療を受けた患者、ある疾患を持つ特定の年齢層の児童など、研究の目的に応じた具体的な属性を持つ個体やケースで構成されます。母集団は人間を対象とすることが多いですが、病院に保管されたすべての医療記録や特定の組織から採取されたすべての血液サンプルなど、人間以外のデータや物品も母集団として設定される場合があります。たとえば、博士号を持つ米国のナースについての研究では、母集団は登録ナース（RN）の中でPh.D.やD.N.Sc.、Ed.D.などの高度な学位を取得している人物に限られるでしょう。また、2002年に聖ピーター病院で心臓手術を受けた全ての男性患者や、ボストンで乳がん治療を受けている全女性、嚢胞性線維症を持つカナダの児童なども母集団として設定されることが考えられます。母集団は、その規模が何千人に達する大規模なものもあれば、わずか数百人に限定された比較的小規模なものもあり、研究の焦点やリソースの制約に応じて範囲が決められます。母集団の定義において重要なのは、研究者が特定の関心を持っている要素が網羅されるように、その範囲が適切に設定されているかどうかです。また、母集団には「標的母集団（target population）」と「対象母集団（accessible population）」の2種類が存在し、それぞれ異なる役割を果たします。標的母集団とは、研究の成果を一般化したいと考える理想的な全体集合であり、例えば糖尿病患者に対する研究の場合、標的母集団は全国に存在する全ての糖尿病患者と設定されることが多いです。一方、対象母集団は、事前に設定された基準を満たし、かつ研究者が実際にアクセス可能な集合を指します。例えば特定の健康計画に参加している糖尿病患者が対象母集団となることがあり、これは、研究者が現実的に接触可能で、データ収集が可能な範囲内にいるためです。研究においては、通常、対象母集団から標本を抽出し、その結果を基に標的母集団に対する一般化を試みることが一般的です。これは、直接全ての標的母集団にアクセスすることが現実的ではないため、対象母集団を設定してサンプリングを行い、得られた結果をより広い範囲に当てはめるための手法です。エビデンスに基づく実践（Evidence-Based Practice: EBP）において、母集団の正確な設定は特に重要です。EBPでは、実証的な研究結果に基づき、医療や看護の現場で最良の方法を採用することを目指していますが、研究が行われた母集団が不適切であると、その成果を実践に生かす際の信頼性が損なわれる可能性があります。そのため、研究者は母集団の範囲や属性を明確に設定し、データの一般化可能性に関する検討を行うことが不可欠です。しかし、多くの量的研究では、標的母集団の特定が困難であるため、研究結果をどの程度一般化できるかについて慎重に検討する必要があります。たとえば、全国の糖尿病患者に適用したいと考えて行った研究であっても、実際には特定の病院の患者を対象とする研究結果であれば、地域特有の要因や医療の提供体制の違いが影響を及ぼす可能性があり、全体への適用には限界があることを認識しなければなりません。研究者は、このような一般化可能性の問題に対処するため、標本の選び方やサンプリング手法に工夫を凝らし、母集団を代表する標本を確保するよう努めます。例えば、無作為抽出や層別抽出といった方法が一般的に用いられますが、これらの手法も必ずしも完璧なものではなく、実際の母集団を完全に反映するとは限りません。無作為抽出であっても、標本が偶然にも偏った特性を持ってしまう可能性があるため、サンプルサイズの設定や、調査結果の解釈には慎重を期す必要があります。また、研究計画の段階で母集団の特定や設定を行う際には、研究の目的に沿った適切な母集団が設定されているかどうか、またその母集団から標本を抽出するための方法が十分に吟味されているか確認する必要があります。これは、特に研究の信頼性や結果の適用範囲を評価する際に重要なステップとなります。さらに、母集団の設定において、研究の倫理的側面も考慮しなければならない場合があります。母集団に含まれる個人のプライバシー保護やデータの取り扱いにおいては、倫理的な配慮が必要であり、倫理審査委員会による審査を通じて適切な手続きを経ることが求められます。このように、母集団の設定は研究計画の基盤を形成する重要な要素であり、その適切な設定が研究全体の質に大きな影響を及ぼします。したがって、研究者は母集団の選定において、研究の目的、サンプリングの実現可能性、データの信頼性、倫理的観点を総合的に考慮しながら慎重に検討を行うことが求められます。