セントラルラボ|【医療統計学・統計解析】
セントラルラボ
欧米では,臨床試験においての臨床検査の測定は集中測定,つまりセントラルラボと呼ばれる臨床検査測定センターにて実施することが一般的である.
これに対して日本では,臨床検査値が主要評価項目であるような場合に関連する一部分の臨床検査項目,あるいは特殊な項目などについてだけ集中測定が行われることが多い.
しかしながら,基準範囲について考えた場合に,施設での測定は測定方法が異なって単位系が異なる場合や,施設間でのばらつきが大きいことがあり,多施設共同臨床試験を実施する場合に,単純に平均値などを算出しても妥当か否かという問題が生じる.
たとえば, GPTについての基準範囲がA施設では0-27 IU, B施設では6-50 IUというように異なる場合がある.
このような場合には,正常・異常の判定が異なることになるのはもちろんであるが,全施設での各測定時点の平均値を表示することにも注意を払わなければならない.
セントラルラボを使用した場合には,このような問題が生じる可能性は極めて少なくなるため,全ての項目について集中測定を行う方が臨床試験の評価についての影響は少ないと言える.
さらに,セントラルラボから臨床試験の依頼者へは,電子的に測定結果を転送することも可能な場合が多く,臨床試験の依頼者にとってセントラルラボを利用するメリットは多い.
しかしながら,実際にセントラルラボを使用する場合には,それまでに施設で蓄積された患者の臨床検査値と集中測定での単位系の違いや測定値のばらつきなどが異なることが考えられるため,臨床試験の範囲ではなく患者の治療として考えた場合に,臨床検査値に基づく医学的な判断に影響を与えてしまう可能性が生じる.
また,緊急検査としてオーダーする場合を除いても施設測定の場合には早ければ当日には結果が出る項目について,翌日以降になってしまうことがあるなどというような時間的ずれが生じることがある.
このことも,患者の治療を考えた場合に問題となる危険性がある.
さらに,施設での臨床検査オーダリングシステムで臨床検査のオーダーが取り扱えなくなってしまう場合や,測定結果を臨床検査オーダリングシステムには取り込んでもらえない場合も考えられる.
あるいは,検体の回収や輸送などについての手順などをきちんと確立しておかないと,検体が行方不明になってしまうことや,検体の保存状態が悪かったために測定不能になってしまう危険性もある.
そして,採血時間の記録方法や採血後の処理方法などについてもきちんと定義しておく必要がある.
また,臨床試験用には集中測定を用いて,患者の治療のためには集中測定と並行して施設測定を行うということも考えられるが,患者の費用負担や採血量の増加という負担の増加があるため,現実的には難しい.
このような実務的な面も考慮に入れた上でセントラルラボの利用を判断する必要性がある.
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