統計学におけるフレーミング【統計解析講義基礎】

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統計学におけるフレーミング|【統計学・統計解析講義基礎】

統計学におけるフレーミング【統計解析講義基礎】


目次  統計学におけるフレーミング【統計解析講義基礎】

 

 

統計学におけるフレーミング(framing)

 

羅生門効果

 

カメラで対象(被写体)を撮影するとき、「構図」を考える。

 

ファインダーに枠が現れて、その「枠」(フレーム)の中がそのものとして切り取られ、写真となる。

 

写真を見る人は、その切り取られた構図を見て、実際にはそのもののごく一部がとくにとり出されたにすぎないが、それをそのものと思ったり感じたりする。

 

写莫を見るとき、プロの写真家、たとえば報道写真家のようになってみよう。

 

この場合、意図やプロット(筋書き)、哲学や信念、問題意識があるなら、積極的に「○○○のように写そう」という態度に出るに違いない。

 

こうなると、はっきりと○○○に「組立てる」意志が働く。

 

ここまではたとえだが、このように、対象の一部を切り取り、ある意味やメッセージをもったイメージ、あるいは問題を「組み立てる」ことを「フレーミング」という。

 

芥川龍之介の「羅生門」を思い浮かべる人もいるだろう。

 

およそ人がものを観察したり描こうとするとき、すべてを尽くすことはできない以上、「一部を切り取る」ことにならざるをえないし、それがどのような一部であるかはその人によるだろう。

 

あるいは研究や調査をする場合、テーマはそれ自体「フレーミング」になっている。

 

したがって、「フレーミング」は必ず起きるし、一般には良いとか悪いとかの議論ではない。

 

たとえば、外科手術で10例中7例が成功し、3例が不成功に終わったという事実に対し、2つのフレーミングがある。

 

フレーミング1:「10例中7例で成功を収めた」

 

フレーミング2:「10例中3例の失敗例があった」

 

フレーミング1は医師によるフレーミング、2はこれから手術を受ける患者によるフレーミンクになることは想像できる。

 

しかも、1、2は互いに矛盾していない。

 

にもかかわらず1、2が引き起こす結果の意味はずいぷんと違う。

 

このように、フレーミンクの影響(フレーミング効果)は日常次元でも無視できない。

 

 

マスコミのデータにおけるフレーミング

 

次のような記事がある(東京新聞2004年8月29日朝刊)

 

−民主支持、自民を逆転−

 

共同通信が27、28両日実施した全国電話調査によると、民主党の支持率が参院選直後の7月前回調査から1.0ポイント上昇して28.8%で、27.9%だった自民党を上回り、トップとなった。

 

民主党が自民党を上回ったのは、小渕内閣発足直後の緊急電話調査に続き2度目。

 

森、小泉両内閣では初めて。

 

まず、本記事に限らず、わが国のマスコミによる世論調査データには、統計理論上大きな問題点がある。

 

サンプリング調査につきものの誤差幅(エラー・マージン)を表示しないことである。

 

誤差幅は調査の信頼度を大きく左右する。

 

欧米の有力なマスコミ世論調査はこれを表示している。

 

この誤差幅はサンプルの人数によって異なり、人数が少ない場合は幅は大きく、多い場合は幅は小さい。

 

この記事には電話世論調査のサンプル数が示されていないので、幅を(推量)することもできないが、かりに通例そうであるように1000人程度としてみると、最大数%にもなるこのケースでは2倍の標準偏差で2.8%。

 

したがって、

 

28.8%と27.9%は誤差幅が大きく異なり、実質上差はない(「有意差」はない)。

 

有意差がないのに、「差がある」と報道されることはきわめてしばしばあり、これ自体も大きな問題だが、むしろここで、なぜ結論が出る(ここでは「逆転」)のだろうか。

 

そのためには、あらかじめ「組み立て」、「筋書き」が立てられていなければならない。

 

このケースに限っていえば、選挙が二大政党の「保革逆転成るか否か」という「フレーミング」がなされていたからであろう。

 

フレーミングによってその問題だけに人びとの関心が集中し、他の重要な問題は受け手の関心から消える。

 

これが世論操作に利用される危険は大きい。

 

単純な議論の怖さ

 

統計の分野においても、フレーミング効果は無視できない。

 

単純に「経済成長か環境か」、「賃金か雇用確保か」、「日本的雇用か能力主義か」、あるいは「人道支援」、「地球環境問題」などという問題の組み立て方をすることは議論をしたり、統計データを収集する上で必要なことではある。

 

しかし、ある問題を立てると、必然的にわれわれのものの見方、データの読み方をその次元の上に限ることになり、知らず知らずのうちに、思考を制約する。

 

他の見方をしていれば得られたはずの問題解決も見出せなくなる迷路に、われわれを引き込んでいるかもしれない。

 

情報の受け手としてだけではなく、われわれの認識自体が「フレーミング」になっているから、つねにものの見方を自由にオープンにしておくべきことだけはいえるであろう。

 

 

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