時系列データ解析で見える経済のリアル【ChatGPT統計解析】
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時系列データの変動:傾向変動・季節変動・不規則変動
時系列データとは、価格や生産の水準など、時間の順序に従って与えられたデータを指します。
その変動とは、@傾向変動(trend-cycle, TC)、A季節変動(seasonal variation, S)、B不規則変動(irregular variation, I)に分解して考えることが多いです。
傾向変動は、基本的な変動方向を表すものであり、数年周期のサイクルも含めます。
季節変動は1年を周期として循環を繰り返す動きであり、農産物の生産など自然現象に左右されるほか、ボーナスの支給による毎月の収入額の変動のように社会的・経済的要因で生ずる場合も多いです。
不規則変動は規則性をもたない偶然変動であり、天候やストライキなど予測が困難な変動も含まれます。
図に示す雇用者報酬の四半期データでは、毎年1-3月期が小さく、10-12月期が大きいという季節性が明瞭に現れています。
形式的に原系列ytが3つの成分の和からなるという関係式yt=TCt+St+Itまたはyt=TCt×St×Itという式を想定し、それぞれ加法モデル、乗法モデルと呼びます。
乗法モデルは原系列の対数に対して加法モデルを考えることに等しくなります。
傾向変動TCの値を求める簡単な方法として、t期の前後からそれぞれk個の観測値をとって平均する移動平均法(moving average)があります。
季節変動がない場合、原系列TCに対応するなめらかな関数fと偶然変動Itの和としてyt=f(t)+Itと表されるとすれば、t期の前後(2k+1)期の平均yt-hatはf(t)の平均とItの平均に分解されます。
偶然変動Itの平均はほぼ0になり(大数の法則)、f(t)がt期の前後で1次式に近ければその平均はほぼf(t)に等しいから、yt-hat≒f(t)となってTCを求められます。この手法を(2k+1)項移動平均とよびます。
移動平均による季節調整
季節成分Sについては、四半期の場合は周期4(月次なら12)であり、St+4=Stがほぼ成立します。
したがって、連続する4項の和St+St+1+St+2+St+3は時点tによらず一定となり、4項移動平均を適用すると季節性を消すことができます。
一方でTCを正しく求めるためには、平均を取る観測値の数は時点tの前後で対称でなければなりません。
その解決策として、4項移動平均を適用した後に2項移動平均を適用する方法があります。この操作を中心化といいます。
その結果は、5項加重移動平均の特別な形になります。
図には5項(加重)移動平均を適用した結果も掲げてあります。
月次データの場合には12項移動平均の後で中心化のために2項移動平均を行います。
なお、直近の時期(および最初の時期)には観測値がないため移動平均が計算できないという難点があります。
最後の観測値を延長するのが最も簡単な対応方法であり、図の表にもその結果(*印)が示してあります。
たとえば2001年第4四半期のyt=74,798は(72,000+2×66,486+5×78,681)÷8と求められます。
移動平均によって得られた系列は傾向変動とみなすことができます。
TCを原系列から引くことによって、季節変動と不規則変動だけからなる系列を得ることができます。
毎年の各四半期(各月)について平均すれば、大数の法則によって不規則変動成分が除かれて季節変動の推定値だけが残ります。
季節変動成分を原系列から除去した系列を季節調整済み系列と呼びます。
通常、季節変動はその合計が0になるように基準化されます。実際の経済時系列では乗法モデルが多く用いられます。
季節変動は乗法形では季節変動指数と呼ばれます。
官庁統計で使われる実際の季節調整の手法のうち最も有名なものは、アメリカの商務省センサス局で開発されたセンサス局法X-12 ARIMAで、基本的には移動平均の繰り返しです。
移動平均では直近の期に対応する値が求められないので、センサス局法ではARIMA(自己回帰和分移動平均)モデルと呼ばれる手法で予測値を作成し、最近時点までの移動平均を求めます。
日本でも主要な統計の季節調整にはX-12 ARIMAか、ARIMAを用いない移動平均のX-11が用いられています。
なお、経済分析において季節変動調整済の系列を用いる理由は、季節変動は政策などによって管理できない要因であるから、これを除去した方が経済現象を容易に理解できることにあります。
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