パス解析におけるモデルの種類|【多変量解析・統計学・統計解析】
パス解析におけるモデルの種類
完全に逐次なモデルと一般的な逐次モデルの間の違いを区別しておくことは,重要である。
完全に逐次なモデルは,すべての変数がすべての変数に対して直接的な影響をもち,因果のつながりがどんどん下へおりていくものである。
完全に逐次的なモデルでは,変数Aは変数Bの原因であり,変数AとBはC に影響し,変数A B, C はDに影響し,A, B, C , DがEに影響している。
完全に逐次ではないモデルは,1つ以上の直接的影響関係が因果の序列の中で欠けているものである。
1つ以上のリンクが欠けていれば,完全逐次モデルにはならない。
症状の再発事例では,モデルAは逐次的で,モデルB は完全に逐次的である。
再婚と健康モデルは逐次的である。
モデルが完全に逐次的かどうかに注意する理由は,完全に逐次的なモデルはいつもデータがモデルに完璧に適合してしまうからである。
だから,モデルがあるデータセットに適合したことに感動してはいられない。
このモデルは5 つの変数からなるどのようなデータにも完全に適合してしまう。
もしモデルが1つでもリンクが欠けていて,そのときモデルにデータがフィットしたら,喜んでもいいだろう。
変数A,B, CがDに影響するのはすべて間接的だからである。
くり返しになるが,モデルが完全に逐次的であれば,それはどのようなデータにも適合し,パラメータの推定値の大きさだけが興味の対象になる。
しかし,モデルが完全に逐次的でないならば,適合度を問うことも大事である。
だから,病状の再発データに関する興味深い結果とは,双方のモデルのパラメータ推定値の大きさと,データと一致していないが故のモデルAの否定である。
モデルBは完全に逐次的なモデルであるから,その適合度は検証しようがない。
次に便利な区別は,逐次モデルと非逐次モデルの違いである。
逐次モデルにおいては,すべての影響が一方向である。
つまり,変数間にくり返して因果がくることがないし,(たとえば,変数Aが変数Bの原因で,変数Bが変数Aの原因になるというような)ループ(変数Aが変数Bの、BがCの、CがAの原因となるような)もない。
さらに,逐次モデルにおいては,誤差項(残差)が他のものと相関しないと考えられている。
多くのモデルは逐次的である。
非逐次的なモデルは,時々魅力的なのだが(現実世界では多くの変数が相互に影響し合っていることは想像にかたくない),それらのパラメータを推定するのはむずかしい。
純粋に技術的な観点から,重回帰分析を使って推定することはできない。
しかし,この問題はそれほど大きくない。
というのは,コンピュータのソフトウェアに実装されたさまざまな技術があるからだ。
非逐次的なモデルのもっと厄介な問題は,時々モデルの識別が困難になることだ。
つまり,非逐次的モデルは各パラメータが唯一の推定値をもつような方程式を立てるのがむずかしいのである。
データに同じように適合する推定値の組み合わせがあるかもしれないのである。
たとえば,モデルがちょうど2つの変数A,Bからなり,互いが原因になっているようなパスをおくことを考えてみよう。
つまり,AからBへのパスとBからAへのパスがある場合だ。
AとBの間に観測される相関係数は1つだけで,2つの独立したパス係数を推定するための十分な情報が提供されていないことになる。
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