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記述的質的研究

ほとんどの質的研究者が，研究の伝統の１つ，または研究のタイプの１つを汲んでいると認めている．

しかし，学問的起源や方法論的起源として，いずれにも該当しないと主張する質的研究者もいる．

彼らは単に，自分は質的研究を行ってきた，自然的探究を行ってきた，または質的データの内容分析(content analysis) (つまり，浮かび上がるテーマやパターンの分析）を行ってきた，というかもしれない．

したがって，質的研究には正式名称をもたないものや,類型にあてはまらないものもある．

われわれは，こうした研究を記述的質的研究(descriptive qualitative study)とよんでいる．

サンデロウスキー〔Sandelowski, 2000〕は，研究者は，記述的質的研究をする際，奥深い解釈によってデータを理解していない傾向にあることに注目している．

これらの研究は，日常的な言語で，現象やできごとを包括的に要約する．

質的記述的デザインは，多岐にわたる傾向があり，自然的探究の一般的前提に基づいている．

サンデロウスキーは，研究デザインとして質的記述を「ただ」使うだけであることを研究者が恥じることはない，と強調する．

できごとや現象をありのままに記述したい場合は，この方法を選択すべきである．

記述的質的研究の例

スタブルフィールドとマレイ〔Stubblefield & Murray,2001〕は，肺移植した子どもをもつ15人の親に面接し．親の人間関係に関する手引きの効果を研究した．

著者らは，「親とほかの大たちとの関係についてのナラティプな記述を形式化するために，内容分析を行った」と述べている．

イデオロギーの観点

質的データをよりどころとする研究者には,イデオロギーの枠組みのなかで探究する者がいる．

それは概して，ある社会問題やある集団の要求に関心を引くことを目的とする．

これらの方法は，調査研究の重要な手段である．

記述的質的研究（descriptive qualitative research）とは、特定の研究伝統や方法論的な枠組みに必ずしも当てはまらず、それらの学問的な分類から独立した形で行われる質的研究手法であり、現象をありのままに描写し、データに基づいた内容分析を行うことが特徴です。これは、研究対象を解釈や理論に基づいて分析するというよりも、あくまで現象そのものや出来事を包括的に記述することに重点が置かれ、自然な言語表現による理解が重視されます。サンデロウスキー（Sandelowski, 2000）は、この方法における研究者の傾向として、データに対して深い解釈を試みるのではなく、データを「あるがまま」に捉えることを目的とし、記述的質的研究が行われる場合が多いことに注目しています。このため、こうした研究では、社会的あるいは文化的背景に基づいた抽象的な意味づけや、理論に基づいた複雑な枠組みの構築よりも、現実の経験や出来事について詳細で具体的な理解を提供することが優先されます。記述的質的研究の特徴として、日常的な言語を用いて、現象や出来事をわかりやすくかつ包括的に記述することが挙げられます。これにより、専門用語や抽象的な概念を使わずに一般的な読者にも理解可能な形で結果を提示できるため、実務者や政策立案者など、実際の社会的文脈での応用が求められる分野で有用性が高まります。また、質的記述的デザインと呼ばれるこの手法は、多様な現象をそのまま描写する点において、自然的探究の基本的な前提に基づいており、解釈的な意味を持つ他の質的研究手法とは一線を画します。特にサンデロウスキーは、研究者がこの記述的質的デザインを選択する際、「ただ」データを記述するだけであることに対して、劣等感や不満を抱くべきではないと強調しています。むしろ、出来事や現象を忠実に記述することで、より現実に即したデータが得られるため、この手法は非常に価値のあるものであると評価されています。例えば、スタブルフィールドとマレイ（Stubblefield & Murray, 2001）の研究は、この手法の有用性を実証する一例といえます。彼らは、肺移植を受けた子どもを持つ15人の親に対して面接を行い、親が抱える人間関係や社会的サポートの影響について調査を行いました。その際、彼らは「親と他の大人との関係性についてのナラティブな記述を内容分析によって形式化した」と述べており、これは親がどのように人間関係を築き、どのような支援が必要であるかを具体的に理解するための貴重なデータを提供しました。このように、記述的質的研究は、複雑な現象をそのまま理解しやすい形で提示するため、特定の集団や現象の理解を深めるのに役立ちます。一方で、質的研究を行う研究者の中には、研究を単なるデータ記述の枠を超えたイデオロギー的な観点から取り組む者も存在します。このようなアプローチでは、特定の社会問題やある集団の要求に焦点を当て、研究を通じてそれらの関心を引くことを目的とする場合があり、質的研究を通じて問題の解決や社会的変革を図ることを目指します。例えば、ある社会集団が直面する不平等や差別、あるいは特定の問題に対する政策的対応を提案するために、質的データを基にした研究が重要な役割を果たします。このイデオロギー的な観点からの質的研究は、単なるデータ収集・分析の枠を超えて、調査結果を通じて特定の視点や立場を明確に表現することを重視し、調査研究における重要な手段として機能します。このため、質的データを利用する研究者には、単なる記述や内容分析だけではなく、収集したデータを特定の社会的、文化的、あるいは政治的な枠組みの中で分析し、現実に存在する問題に光を当て、そこから生じる社会的意義や行動変化を促進しようとする傾向があります。