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参加型アクションリサーチ

参加型アクションリサーチとして知られるタイプの研究は,批判的研究やフェミニスト研究の双方によく似ている．

参加型アクションリサーチ(participatory action research: ＰＡＲ）は, 1940年代に，社会心理学者タルト・レヴィン(Kurt Lewin)が提唱したアクションリサーチの１つであり，知的産物は，政治的であることも，権力行使のために利用されることもあるという認識に基づく．

概して，こうした方法の研究者は，優勢な集団や文化による支配や抑圧に対して，傷つきやすい立場の集団やコミュニティと仕事をする．

参加型アクションリサーチはその名のとおり，参加型である．

問題の定義，アプローチや研究方法の選択，データの分析，研究結果の利用について，研究者と参加者が協同する.

PARの目的は，知識を生みだすだけでなく，行動を起こすことや意識の向上である．

研究者は，とくに知識を構築し利用する過程をとおして，人々が力をもつこと（エンパワー）を支援しようとする.

PARの伝統は，当初より，研究しようとする集団の無力感に関心をもっている．

したがって，主要な目的は，教育や社会政治的行動をとおして，改善に向けて直接にもちいることができるような推進力を生みだすことである.

ＰＡＲでは,研究方法よりも,動機づけ，自尊心を高め，コミュニティの連帯感を生みだすことができるような,協同と対話という創発的な過程を優先する．

したがって，「データ集め(data-gathering)」の方略には，面接と観察という伝統的な方法だけではなく（質的方法も量的方法も含む），口承文学，社会劇，スケッチや絵画，劇や寸劇，また，人々が，自分たちの生活を探索する創造的な方法を見つけ，彼らのストーリーを語り，自分自身の強さを認識できるよう，デザインされた諸活動がある.

ＰＡＲについてさらに学ぶために役立つ情報源には，ホワイト〔Whyte, 1990〕，エルデンとチソム〔Elden & Chisholm, 1993〕，モリソンとリルフォード[Morrison & L�V･ord, 2001〕，ホルダーとシュワルツーバーコット〔Holter & Schwarts-Barcott, 1993〕がある．

多くの専門分野にわたる雑誌である『laborative Inquiry』誌は，とくに, PARや関連する研究法をあつかっている．

PARの例

アンダーソン,ニャマティ，マッキャヴォイ，コント，カシー〔Anderson, Nyamathi, McAvoy, Conde, & Casey,2001〕は. PARをもちいて，少年院の思春期青年における. HIVおよび他の健康問題のリスクについての認識を調べた．

研究者がＰＡＲを選んだ理由は，研究の活動をとおして，思春期青年とパートナーシップを担うことにある.

PARは，研究結果から生みだされた知識や技術を拘留された思春期青年に提供することで，彼らが力をつけることを支援した．

参加型アクションリサーチ（Participatory Action Research：PAR）は、1940年代に社会心理学者クルト・レヴィン（Kurt Lewin）によって提唱されたアクションリサーチの一形態であり、研究の過程と成果を単なる学術的知識の生成だけでなく、社会変革や政治的目的にも活用できるという特徴を持ちます。この研究アプローチは批判的研究やフェミニスト研究といった社会構造に関する批判的視点を持つ分野とも共通点が多く、特に権力関係の影響や支配的な集団や文化による抑圧に対抗する方法論として注目されてきました。PARの特徴はその名の通り「参加型」であり、研究者と参加者が対等な立場で協働しながら、研究のすべてのプロセスに関与していくことが重視されます。具体的には、研究の課題や問題の定義から、アプローチや研究方法の選択、データの収集や分析、そして研究結果の利用に至るまで、研究者と参加者が協力し合うことを前提としています。これは従来の研究アプローチとは異なり、研究対象者が単なる「観察対象」として扱われるのではなく、研究プロセスの共同責任者として主体的に関わることができる点に大きな意義があります。このような協同の過程は、参加者が自身の置かれている状況や社会的な立場をより深く理解する助けとなり、またそのプロセスを通じて、自己の力を認識し行動に移すための「エンパワーメント（empowerment）」を得られることが期待されます。PARの目的は単に知識を生み出すことにとどまらず、研究を通じた行動の促進や、参加者の意識向上にまで及びます。研究者は、特に知識を構築し、利用する過程を通して、参加者が自己の能力を信じ、主体的に問題に取り組む力を得ることを支援する役割を果たします。PARの伝統は当初から、研究対象となる集団の無力感に着目し、彼らが自らの問題を解決するための推進力を生み出すことを主な目的としています。このため、教育や社会的・政治的行動を通じて、対象となる集団が実際の改善を直接に目指せるような効果的な変革を促すことが重要視されています。PARでは、研究方法そのものよりも、参加者の動機づけや自尊心を高め、コミュニティの連帯感を醸成するような協同と対話の創発的なプロセスが優先されます。この協同と対話の重要性は、参加者が研究に主体的に参加することによって生まれる意識の変化や、コミュニティ内での結束力を強化する点にあります。PARにおけるデータ収集の方法には、面接や観察といった伝統的な手法に加え、口承文学や社会劇、スケッチや絵画、劇や寸劇といった、参加者が自らの生活を表現し、探索できる創造的な方法が含まれます。これらの方法は、単なるデータ収集にとどまらず、参加者が自分自身の経験やストーリーを通じて自己を認識し、内面的な力を発見する機会を提供します。PARの伝統では、特にマイノリティや疎外された立場の人々が自らの体験や視点を表現し、共有することが重視され、これにより参加者は自己のアイデンティティや自尊心を高め、社会的な力を再確認することが可能となります。PARに関する情報源として、ホワイト（Whyte, 1990）、エルデンとチソム（Elden & Chisholm, 1993）、モリソンとリルフォード（Morrison & Lilford, 2001）、ホルダーとシュワルツバーコット（Holter & Schwarts-Barcott, 1993）などの研究があり、これらはPARの理論的な枠組みや具体的な実施方法について詳述しています。また、広範な専門分野にわたる研究を掲載する雑誌『Collaborative Inquiry』は、特にPARや関連する研究手法について多くの論文を取り上げており、PARに関する理解を深めるための貴重なリソースとなっています。PARの応用例としては、アンダーソン、ニャマティ、マッキャヴォイ、コント、カシー（Anderson, Nyamathi, McAvoy, Conde, & Casey, 2001）による研究が挙げられます。彼らはPARのアプローチを用いて、少年院に収容されている思春期青年のHIVおよびその他の健康問題に対するリスク認識を調査しました。この研究では、研究者と収容青年との間でパートナーシップが構築され、PARを通じて彼らに健康に関する知識や技術を提供し、リスクに対する意識を高めることが目指されました。PARが選ばれた理由は、単に健康に関する情報を提供するだけでなく、青年が自分たちの健康や将来に対して主体的に向き合うための力を育むことができると考えられたからです。このようにPARは、研究の成果を参加者に還元することで、彼らが自己の力を信じ、自分自身やコミュニティに対して肯定的な変化をもたらすための基盤を提供する役割を果たします。また、PARは教育的な観点でも非常に有効であり、例えば学校や地域コミュニティにおいて、メンバーが共同で問題を解決するスキルやリーダーシップを身につけるためのプロジェクトに適用されることもあります。このような教育的プロジェクトでは、学生や地域住民が問題の分析から解決策の実施までを主体的に行い、実際の社会的状況で必要な知識やスキルを実践を通じて学ぶ機会が提供されます。PARの過程で行われる対話や協同は、参加者が個々に抱える問題を共有し、相互に支え合うことで、コミュニティの一体感を生み出す効果もあります。したがって、PARは個人の成長や自己認識の深化だけでなく、地域社会全体の発展にも貢献し得るアプローチであるといえます。