平均への回帰|【統計学・統計解析講義応用】
平均への回帰
平均への回帰(regression to the mean)というタイトルは,この統計的な現象による罠に陥っている大部分の医師達にとって実に捉えどころがないトピックである.
平均への回帰とは何か
平均への回帰(regression to the mean. RTM)は,繰り返しの測定によって値がより極端でなくなる観測値の傾向である.
臨床研究では,ベースラインの1つの測定値がある健康基準に比べて極端数値で,そして治療介入を終えた後に治療が有用だったかどうかを見るために追跡観測を行う時に,その罠が仕掛けられる.
血圧を例にとろう.
RTMにより.ベースラインであるカットオフ値より高かった血圧は,2回目の測定では治療介入の効果がなくても低くなっていることを我々は予想する.
それは血圧というものが,血圧を測定する機器によるばらつきと,個人内の真の血圧の(生物学的な)変動によるばらつきの両者により,本質的にノイズの大きい測定値であることによる.
平均の血圧より値が高かった人たちは,本当に血圧が高い人とたまたま普段より高い測定値であった人が混ざった集団である.
もしばらつきがなければ,そこにはRTMはなく,血圧は繰り返して測定しても同じ値となるだろうし,より大きなばらつきがあればより大きなRTMの効果が見られる.
平均から遠く離れた測定値であるほど.(介入による効果がないと仮定しても)測定を繰り返した時に値は下がると多くの人は思うだろう.
平均への回帰という名称は, Francis Galtonが1886年に発表した有名な論文「Regression toward Mediocrity in Hereditary Stature」に由来している.
この論文でGaltonは子どもの身長とその親との関連性を調べた.身長が平均値より高い親について,その子どもの身長は親の身長より全体の子どもの平均身長により近かったことを彼は記述しており,そのことを「凡庸への回帰(regression to mediocrity)」と表現した.
実のところ,回帰という言葉は彼のこの画期的な論文からその名を取っている.
回帰理論では,相関がρの2つの測定値に関して一つ目の測定値xがもし標準偏差らの大きさで平均値から離れた値をとるのならば二番目の測定値は平均の大きさでその平均値から離れた値をとる.
2つの測定値の間に完全な相関がない場合,つまりρが1よりも小さい場合,xが平均値に対してとる値よりもその平均により近い(標準偏差の単位で)値となる.
関連記事