平均への回帰に対処する方法|【統計学・統計解析講義応用】
平均への回帰に対処する方法
臨床研究探索の場では,バイオマーカーの値を閾値と比較することよって症状が診断もしくは観察されるため,平均への回帰への対処がされなければならない例が多い.
RTMへの対処は,ランダム化比較対照群を置くことによって最もよく行うことができる.
治療の効果がなければ,結果においてRTMに起因するものだと判断され得るいかなる改善も2つの治療処置群に同じように現れるだろう.
同様に,治療効果があるのであれば,結果は2つの群の間の差としてあらわれる.
このことは前で議論したアシクロビルの比較対照試験のケースで見られた.
その試験では新しい治療の効果が強力だったので分担研究者は幸運だった.
イベント率が期待したよりも低かったにもかかわらず.アシクロビル投与群はプラセボに比べて臨床的に明らかな53%の平均エピソード数の減少を示していた(p=0.03) .
ただ,崇拝されているランダム化比較対照試験でさえも, RTMがもたらす混乱(confounding)に完全に耐えるものではないことは留意しておくべきである.
もし治療の唯一の効果が応答の持つ分散の増加であり,平均効果がみられないのであれば. RTMは治療効果に関して結果を誤った方向に導く可能性を持つ.
時折.前述の試験Aのように,ベースラインからの変化のような群毎の治療効果(だが治療問の差ではない)に関心があることがある.
このようなケースで,RTMの効果を消し去ることはできないが,軽減する簡単な方法が少しばかりある.
試験Aのように,高い初期値からの推定変化量に関心があると考えてみよう.
RTMによる混乱の影響を軽減する1つの簡単なアプローチは,閾値を適用する前に,複数のベースライン測定の平均値を求めることである.
2番目の簡単なアプローチは,最初に被験者を分類するため,次に測定値の変化を求めるための2つのベースラインを測定することである.
Sennは,ある条件下で,このアプローチはRTMの影響を打ち消すことを示した。
このアプローチはMinnesota Coronary Survey Dietary Trial で用いられている.
最後のアプローチとしては,治療効果の推定値を直接調整する目的で.必要となる分布パラメータ(平均,分散,相関)を推定するために外部のデータを用いることもできるだろう。
登録基準としての最小の発現数を設定する様な,エピソードイベントを観察する臨床試験を計画する時には,平均への回帰によるイベント率の低下を考慮に入れなければならず,さもなければ試験の検出力を損失するという深刻な問題を起こすことになってしまう.
MacMahonらは,閾値を用いたスクリーニング基準を持つ試験について,追跡期間中に観察された症状発現数,もしくは発現がなかった被験者の割合のいずれかに基づいて治療効果の比較をする時の検出力を計算する式を提示している。
この状況で, RTMがある場合に,適切な検出力を持ったサンプルサイズを特定する解析的手法があることになるが,それはまた平均したベースラインや2つのベースラインといった先ほど述べた方法とともに. RTMの影響を学ぶのに役に立つものである.
RTMの影響が小さいほど,必要となるサンプルサイズも小さくなる.
まとめると、平均への回帰は,医学研究の場に広く存在する.
我々は,臨床研究者たちが患者のいかなる状態の変化からも独立な統計上のアーチファクトによって,誤った結論を導いてしまういくつかの一般的な例について議論した.
また,試験デザインと解析においてRTMに対処するための方法についても議論した.
この現象に目を光らせることや, RTMに影響されている可能性のあるデータの解釈に用心深くなることは,実践者にとって大切なことである.
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