品質管理|【統計学・統計解析講義応用】
品質管理
品質管理(QC:Quality Control)という概念は製造関連の仕事から始まりました。
すなわち、製造業において、完成した品物が不良品であったならば製品としての価値はなく、無駄な物にすぎません。
しかし、不良品であったとしても原料や作業にかかる人手は既に消費されていますので、利益が減少することになります。
そこで、利益を増加させるには、単純に最終製品から不良品の排除ということではなく、いかにしてこのような不良品を減らすことができるかを工夫する必要があります。
このため、各作業工程を徹底して管理することにより一定水準の製品を不良品の発生率を抑えて製造することを目指します。
この管理工程においては様々な統計的手法が取り入れられ、定量的な評価がなされてきました。
たとえば、初歩的な品質管理においては、パレート図、特性要因図、ヒストグラム、グラフ/管理図、チェックシート、層別、散布図といった手法がQC七つ道具として有名です。
また、言語データを整理して用いるQC七つ道具として連関図、マトリックス、データ解析、系統図、マトリックス図、PDPC(Process Decision Program Chart)、アロー・ダイアグラム、親和図というものがあります。
現在では、品質管理という概念は製造業に留まらず、様々な分野で適用されています。
日本工業規格(JIS:Japanese Industrial Standard)では1999年の改正で削除されましたが、品質管理を「買手の要求に合った品質の品物又はサービスを経済的に作り出すための手段の体系」、品質については「品物又はサービスが使用目的を満たしているかどうかのための評価対象となる固有の性質・性能の全体」と定義していました。
ここで気をつけなければいけないのは、「経済的に」というキーワードが含まれていることです。
徹底的にお金と時間をかけて工夫すれば、品質を極めて高い水準に維持することは不可能ではありませんが、これが本来の目的である利益を増加させるということに結びつくとは限りません。
そもそも、品質を最高レベルにすることが品質管理の目的ではなく、品質を要求に合う一定水準の範囲に保つということであり、コストに対する考慮がなければいけません。
なお、国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)では、品質管理は「品質方針、目標及び責任を定め、それらを品質システムの中で品質計画、品質管理手法、品質保証及び品質改善などによって実施する全般的な経営機能すべての活動」として定義されています。
すなわち、品質管理とは、実際に得られる品質を、経済的に妥当な範囲で目標とする品質にできるだけ近づけられるようにし、得られる品質のばらつきが一定の範囲に収まるように管理するということです。
以上のことを踏まえて考えた場合、臨床試験データに関する品質管理とは、ある一定水準以上の臨床試験データを無理・無駄なく経済的に作成するための手段ということができます。
品質管理では、製品が完成するまでの各工程に介入して不良品が発生する要因を管理することにより、各工程での不良品の発生率を減少させ、最終的に全体としての不良品の発生率を最小化できるようにするという手法が用いられます。
臨床試験データにおいても、各段階でのエラーが発生する要因を管理することにより、全体としてのエラーの発生率を最小化することができるはずです。
これがプロセス管理というアプローチです。
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