メタアナリシスにおけるばらつきと信頼区間|【統計学・統計解析講義応用】
メタアナリシスにおけるばらつきと信頼区間
メタアナリシスは,過去に行われた独立した複数の研究の結果を統計学的に統合し,包括的な分析をする統計解析方法です。
目的
1.サンプルサイズを大きくすることで統計学的検出力を高める
2.論文の結論が一致していない場合に,その不確実性を解決する
3.効果量を改善する
4.研究の最初に分からなかった問題に答える
サンプルの数が少ない研究や,複数の研究の結果が一致しないときには決定的な結論が導き出せません。
メタアナリシスは複数の研究を統合することによって一定の結論に導きます。
しかし,その結論は,メタアナリシスが行われた時点での結論であり,絶対的なものではありません。
その後に行われた大規模なランダム化比較試験と結果が異なる可能性もあります。
特定のテーマに関して,再現性のある方法で体系的・網羅的に文献を集めたシステマティックレビューにおいて客観的な結論を得るためにメタアナリシスが行われ
ています。
複数のランダム化比較試験をまとめたメタアナリシスが,根拠に基づく医療(Evidence Based Medicine : EBM)でもっとも高い推奨水準に挙げられています。
2つのグループの間に差があるかどうかを調べるときにP値がよく使われます。
これは。¨2つのグループに差がない¨という帰無仮説に基づく仮説検定の結果を
示す値です。例えばP < 0.05でグループ問に有意差が存在するという記述は,95%以上の確率で2つのグループの間に差があることを意味します。
しかし P値による有意差の判定は。サンプルサイズに影響されます。
サンプルの数が増えると,実質的に差がなくてもP値が小さくなるという特徴を持っています。
施設A(平均値40,標準偏差10)と施設B(平均値43.標準偏差10)のアルコール性肝障害患者のy -GTPを比べるために。それぞれの施設で華丸先生が50人,
大吉先生が100人のデータを集めました。両施設の平均値の差はゼロ。
両医師の採血データともに3.0です。
これに対応のない/検定を行うと,華丸先生のデータではP=0.137 (P > 0.05)となりレ右意差がありません。
一方,大吉先生のデータではP=0.015(P<0.05)となり、有意差があると判定されます。
実質的な差が|司じであっても、サンプルの数が大きくなればなるほどP値が小さくなります。
P<0.05とP<0.001という記載があると,P<0.001のほうがグループ間の差が大きいような印象を与えますが,これは間違った解釈です。
Pの値が実質的な差の大きさを表すことはありません。
帰無仮説に基づく仮説検定
AとBのグループが全く同じ(A=B)であるということを直接証明することができないので,2つのグループが異なる(A≠B)ことから間接的にA=Bであ
ると導きます。
先に,2つのグループに差がないという仮説(帰無仮説)をおいて,その仮説を否定することによってグループ間の差を調べる方法が仮説検定です。
ランダム化比較試験(randomized controlled trial : RCT)では,結果とともにその精度を記載することが推奨されています。
精度はその値の正確性のことであり,裏返して表現すると不確かさになります。ばらつきの大きさです。
われわれが知りたいのぱ真の値”ですが,試験から得られる値はあくまで“推定値”です。
サンプリングは必ず偶然の影響を受けて,ばらつきによる誤差が生じます。
信頼区間とぱ推定値”が存在すると考えられる値の範囲のことです。
全く同じ条件で繰り返しサンプリングを行っても,偶然の影響で同じ結果は得られません。
サンプリングを100回繰り返すと100個の推定値とそれに呼応した100個の信頼区間が算出されます。
この100個の信頼区間のうち,95個が“真の値”を含むように設定した信頼区間が95%信頼区間です。
95%の確率で“真の値”が含まれる範囲のことです。
逆に,“真の値”が95%信頼区間から外れる確率が5%あります。
信頼区間は試験の回数によって影響されます。
試験回数が多いと信頼区間の幅が狭くなり,試験回数が少ないと信頼区間の幅が広がります。
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