ハインリッヒの法則|300件のヒヤリハット⇒1件の重大な事故【統計学・統計解析講義基礎】
ハインリッヒの法則では、300件のヒヤリハットが29件の軽微な事故、1件の重大な事故につながる。失敗をオープンにし、トップ自らのの品質・安全性へのコミットメントが重要
ヒヤリハット分析で未然防止
M社の大型車タイヤ脱落事故により、2002年1月、母子3人が死傷を負いました。
92年6月に初めての脱落事故が生じて以来、12年間に57件の脱落の主要因であるハブの破損が発生していました。
また、2004年3月には六本木ヒルズの回転扉で6歳の男児が頭を挟まれ死亡しました。
2003年4月にオープンして以来、六本木ヒルズで回転扉に絡んだ事故は32件、このうちけが人が救急搬送されたものは10件生じていました。
図は、労働災害の統計データよりハインリッヒが見つけた法則です(ハインリッヒの法則)。
同じ原因であっても、1件の死亡、29件の骨折、300件の軽傷という頻度で生じ、その影響の大きさに違いが出ます。
確率的に言えば、軽傷が最も生じやすく、合計として1+29+300=330件が起こると、その中に1件の割合でしか死亡が生じないことを語っています。
すなわち、かすり傷のような軽傷が生じたときに、その真の原因を究明すれば、将来生じるかもしれない重大事故を未然に防止しうるのです。
ハインリッヒの法則では、300件のヒヤリハットが29件の軽微な事故、1件の重大な事故につながります。
実際には、軽傷にも至らない「ヒヤリ」とした、あるいは「ハッ」とした事象(これをヒヤリハットとよびます)がさらに図の底辺に潜んでいます。
これらの軽傷やヒヤリハットに代表される予兆を収集し、それを分析することにより、将来起こり得る重大トラブルを未然防止することが大切です。
失敗をオープンに
しかし、現実にはこれがなされません。
原因は大きく2つあります。
1つは失敗をオープンにすると上司が怒る、あるいは懲戒免職となる、という点です。
ある1つは予兆を収集し、分析するためにはこのための時間と労力が必要となります。
現在の組織に大きな品質や安全性の問題が生じていないとき、構成員は「そこまでやらなくても大丈夫。これまで通りで何の問題も生じていない」と危機感を持ちません。
これらを打破するには、その組織のトップが品質・安全性に対する考え方を変えなければなりません。
失敗をオープンにできる組織文化を創り、失敗を皆の財産にすることです。
安全は何物にも代えがたい、組織にとって最重要なアウトプットであることを構成員に理解させ、トップ自らが品質・安全性向上に向けて、行動を起こすこと「トップの品質・安全性へのコミットメント」が重要です。
関連リンク