二重指数分布とワイブル分布|極値の予想・再現期間・生起確率【統計学・統計解析講義基礎】
最大値、最小値である観測極値を解析し、さらに起こりうるべき極値を予想することが重要。最大値の分布は二重指数分布、最小値の分布はワイブル分布である。これらの分布により、再現期間と生起確率が推定可能
最大値、最小値である観測極値
「黄河を治める者は中国を制す」という言葉があるように、古代耕地経済は水流に基礎をおいてきました。
また、水路は交通手段としても重要です。
近代においても、原子力発電の廃棄処理問題、化石燃料の環境問題に対し、水力発電によるエネルギー供給の重要性が見直されています。
このとき、生命と財産を洪水と渇水から守る必要があります。
前者に対しては、1年間356日の毎日の流量の最大値が問題となります。
また、最大降雨量、最大降雪量、年度渇水値などが重要となります。
一方、システムの寿命を考えれば、その構成要素の少なくとも1つが故障すれば、システム全体の故障に至る直列システムでは、最小値が問題となります。
また、システムを構成するすべての要素が故障したときに、全体としての故障に至る並列システムでは、構成要素の寿命の最大値が問題となります。
このような最大値、最小値である観測極値を解析し、さらに起こりうるべき極値を予想することが重要となります。
最大値の分布は二重指数分布
1年間の最大水量で考えれば、1日の水量の365回分からの最大値の分布を考えることになります。
ある種の条件(もとの分布が指数タイプ)のもとでは、この最大値の分布は二重指数分布といわれるやや特殊な分布となります。
この分布により、工学上のさまざまな重要な諸問題が解決されました。
たとえば、洪水管理をはじめとし、航空機体設計における着陸負荷・突風問題、気圧・降水・降雪量・降雨量・気温などの気象学への貢献がなされています。
また、洪水に対しては、慣習的な法則「河川を統制するのに、現在までの最近N年間に観測された最大値の2倍に耐えるダムを建設せよ」に理論的根拠を与えるものとなりました。
最小値の分布はワイブル分布
一方、鎖の強度を考えた場合は、鎖を両側から引っ張ると作用反作用の法則ですべての環に同一の負荷が加わるため、それを構成する一つ一つの環の強度の最小値が鎖全体の強度を決定します。
このときの最小値の分布は、確率論の分野では比較的よく知られた「ワイブル分布」に、多くの場合したがうことが、経験的にも理論的にも知られています。
ワイブル分布は形状母数(JISではmにて表現)と呼ばれる母集団の形を決定する値をもちます。図に示しますように、mが変わることにより母集団の形が変わります。
また、図に示すように、信頼性工学の分野において重要な役割を果たす故障率が経過時間tに対しmの値により増加(m>1)、一定(m=1)、減少(m<1)との対応関係があります。
材料が繰り返し応力で破壊するときはm=4、ボールベアリングの摩耗はm=2、電子素子の故障はm=0.8、造りたてのスクリーニング実施前の半導体はm=0.3などが知られており、故障に至るまでの物理的・化学的根拠に基づき、決定される重要な母数です。
再現期間と生起確率
今、洪水が1年間に確率1%で起こるとします。
この洪水は、平均的に何年間隔で起こるでしょうか(これを再現期間といいます)。
また、30年以内に生じる確率はどの位でしょうか。1年当たりの生起確率が0.01ゆえ、1年に平均的に0.01回起こると考え、これが100年間続けば、1回起こることになります。すなわち、1÷0.01=100とすればよいことになります。
また30年以内に生じる確率は、30年間を通して起こらない確率(1−0.01)30=0.74を1から引けばよいので、0.26となります。
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