アウトカム研究|【統計学・統計解析講義応用】
アウトカム研究
アウトカム研究(outcome research ; アウトカム・リサーチ)は,ヘルスケア・サービスの効果を記録するためのデザインで,看護とヘルスケア領域での研究事業として勢いを得ている.
アウトカム研究は,ある場合には評価研究と重なりあうが,評価研究が通常は特定の新しい介入の評価に焦点をあてるのに比べ,アウトカム研究は看護やヘルスケア・サービスをより広範に査定する.
アウトカム研究にはずみがついたのは, 1970年代にProfessional Standard Review Organization(psro ;医療基準調査委員会)から生まれた質的アセスメントおよび質的保証の機能による.
アウトカム研究は,改善した患者のアウトカムと経費の双方の点で,ケア実践とシステムの十分な根拠を示すよう,政策立案者,保険者,および大衆から要求が増大し,それに対して1つの回答を与えるものである.
1980年代のアウトカム研究は,主に医療に関する患者の健康状態と経費に焦点があったが,看護ケアに関連した患者のより広範なアウトカムを研究することに関心が示されている.
多くの看護研究は,患者のアウトカムや患者の満足度の検証に関連しているが,ヘルスケア・システム全体が提供するケアから看護ケアを区別して,その質を評価し記録するという具体的な取り組みは,そう多くはない.
主な障害は,原因となるもの,つまり,ヘルスケア・チームの他のメンバーの活動にではなく,特定の看護活動や介入に,患者のアウトカムを結びつけることである.
アウトカムとヘルスケアの介入との因果関係についての判断は,場合によってはむずかしい.
なぜならば,ヘルスケア・システム以外の因子(例:患者の特性)が,複雑にアウトカムに影響するためである.
しかし,今世紀,アウトカム研究は盛んになるだろう.
アウトカム研究は,さまざまな従来のデザイン,標本抽出法,そしてデータ収集と分析方法をもちいてきたが,従来の研究枠組みにはない多数の方法も開発している.
アウトカム研究は複雑で学際的であり,この発展分野によって,これから数年のうちに,方法論を創造する機会がもたらされると考えられる.
ヘルスケアの質の評価モデル
ヘルスケアと看護サービスの質を評価する際には,さまざまな要素を考慮しなくてはならない.
ドナベディアン〔Donabedian, 1987〕の先駆的な努力によって,アウトカム研究のための枠組みがつくられた.
その重要な3つの要素は,構造,過程,そしてアウトカムである.
ケアの構造とは,広く組織的かつ管理的特徴をいう.
構造は,サービスの規模,場所,範囲,設備のタイプ,技術,組織的構造,組織風土というような属性の点で評価できる.
構造変数は,看護技術の混合と,意思決定における看護の自律性の2つであり,患者のアウトカムとの関係がわかっている.
過程には,臨床的管理,意思決定,臨床的介入という側面がある.
アウトカムは,患者ケアの特定の臨床的最終結果を指す.
ミッチェル,ファークテイッチ,ジェニングズ〔Mitchell, Ferkctich, fc Jennings, 1998〕は,「ケアの質を評価する際の力点は,構造(適切なものごとを備える)から過程(適切なことをする)へ,そしてさらにアウトカム(適切なことをもたらす)へと移行しつつある」と述べている.
ヘルスケアの質を評価するドナベデイアンの枠組みは,部分的な変更が求められてきた〔例:Holzemer,1994; Mitchell, Ferketich, & Jennings, 1998〕.
たとえば,ミッチェルら〔1998〕は,もとの枠組みほど直線的ではなく,よりダイナミックで,クライエントの特性を考慮したモデルを提示した,
彼らのモデルは,介入と過程をアウトカムにびつけず,介入の効果にはクライエントとシステムの特性が仲介している,とみる.
通常,アウトカム研究は,モデル全体の検定よりも,こうしたモデル内部のさまざまな連関を中心に取り組む.
たとえば,研究者は,さまざまなヘルスケア過程やアウトカムに与えるヘルスケア構造の影響を研究してきたが,ナースにとっては主要な関心事ではなかった.
看護の観点から,組織的構造の諸側面を正確に測定する努力も始まっている.
しかし,看護における大部分のアウトカム研究は,過程一患者−アウトカムの連関に焦点をあててきた.
構造に関する研究の例
リヒティグ,ノーフ,ミルホランド〔Lichtig, Knauf,& Milholland, 1999〕は,カリフォルニアとニューヨークでのデータをもちいて,看護スタッフの配置パターンが患者の入院期間に与える影響を検証した.
看護過程と介入
健康アウトカムヘのナースの影響を明らかにするために,研究者には,ナースの臨床行為と行動をていねいに記述し文書化(量的にまた質的に)することが求められる.
看護のプロセス変数の例には,次のような巨視的,微視的な看護行為がある.
・ナースの問題解決技術
・臨床判断
・臨床能力
・ナースの自律性
・看護の強度(intensity)
・臨床のリーダーシップ
・特定の行為または介入(例:コミュニケーション,タッチ,臨床行為)
確立された分類システムや分類法にてらして,ナースの仕事を記述することへの関心が高まっている.
また,看護行為を,完全で正確,系統的な記録として,コンピュータ化したデータセット,つまり,看護ミニマルデータセット(nursing minimal data set: NMDS)に保存することへの関心も高まっている.
看護介入について,研究に基づいた多くの分類システムが開発され,改善され,検証されている.
将来,多くの研究が,上記のような分類システムから健康アウトカムヘと過程をつなぐことが期待される.
今までのところ,これらの分類システムをもちいた研究は,患者の問題や看護介入を記述し,これらのシステムの運用について査定することを中心としてきた.
分類システムの研究例
パウルス〔Bowles, 2000〕は,オマハシステムの2つの部分(問題分類方式と介入方式)をもちいて,高齢入院患者における問題の種類と頻度,およびナースが施した介入を記述した.
研究は,もっとも多く体験された問題を記述し,それらをもっとも日常的な看護介入に結びつけた.
アウトカム研究の主要な焦点は,看護介入が患者のアウトカムに及ぼす影響である.
介入が新しい場合や正式に検証されていない場合,アウトカム研究は,評価研究の枠組みで準実験または実験デザインを採用できる.
患者のリスク・アセスメント
患者のアウトカムは,患者が受けるケアのみならず,患者の状況や併存疾患の違いなどによってさまざまである.
どんな看護介入をもちいようと,不都合なアウトカムが生じることもある.
このように,アウトカムヘの看護介入の影響を評価する際に,患者が予後不良となるリスクや,複数のリスクが混合している担当患者数について,コントロールしたり考慮に入れるという,なんらかの方法が必要である.
医療のアウトカム研究の多くでリスク調整が行われてきたが,看護アウトカム研究では現れはじめたばかりである
アウトカム
アウトカムを測定し,それらを看護行為と結びつけることは,エビデンスに基づく実践を開発し,質の高い改善努力を行ううえで重要である。
看護に関連するアウトカムは,身体的または生理的機能(例:心拍数,血圧,合併症),心理的機能(例:安楽,生活の質,満足度),または社会的機能(例:家族との関係)などにより定義できる.
ナースにとって関心あるアウトカムは,短期的または一時的なもの(例:術後の体温),もしくはより長期的で永続的なもの(例:正規雇用への復帰)のどちらかであろう.
さらに,アウトカムは,ケアを受ける個々の患者の最終結果,またはコミュニティや社会全体といった,より広範な単位の最終結果として定義できるだろう.
そして,これには費用の要素もある.
看護介入の分類を開発する努力がなされてきたと同時に,アウトカム分類システムを開発する作業が始まった.
とくに注目に値するものは,看護感受性成果分類(Nursing-Sensitive Outcomes Classification: NOC)であり,看護介入分類NICを補完するために,アイオワ大学看護学部のナースが開発した〔Maas, Johnson, &: Moorhead, 1996〕.
アウトカム研究の例
グリーンパーク〔Greenberg, 2000〕は,以下のようなアウトカムについて,電話相談看護と電話トリアージの利用を研究した.
それは,クライエントの満足度.診療所への溜まり場的な立ち寄りが減少すること,外来小児科診療所の利用者が救急部門や緊急ケアを必要としなくなることである.
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