悉皆調査と標本調査|【社会経済統計学・統計解析】
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悉皆調査と標本調査
悉皆調査と標本調査
調査方法から統計を区分すると、悉皆調査(全数調査、センサス)と標本調査とに分けられる。
悉皆調査とは調査対象をすべて調査するものであり、標本調査とは調査対象全体(母集団という)から一部分(標本という)を抽出し、調査するものである。
両者には一長一短があり、相互に補完する側面をもつ。
まず、悉皆調査はすべてを調査するのであるから、統計数値に関する信頼性は高く(正確性は統計法においても重視されている)、対象の属性に見合った各種のクロス分類が容易であるなどの長所をもつ。
しかし、調査費用が高くつく、集計時間がかかる、調査事項が比較的一般的な項目に限定されるなどの欠点をもつ。
また、統計調査員の数が膨大な数となるので、実際の調査の段階で、統計調査員に調査の目的や方法がどの程度徹底しているかという問題もある。
なお、全数把握という観点からは、貿易統計などの業務統計の一部も該当する。
一方、標本調査では調査費用が比較的安く、調査の徹底化も行いやすい、集計時間もかからない、調査目的に合致した調査項目がとりやすいなどの長所をもつ。
しかし、標本調査の大前提である標本抽出には母集団(悉皆調査)が必要であり、その標本が母集団をどの程度代表しているかという基本的問題をもつ。
これは標本抽出法という統計学の分野の基本的な問題である。
一般に広く利用されている方法は無作為抽出法である。
これは単位選定の際、抽出者の意思を入れずにランダムに(乱数表などを利用して)抽出することである。
これによれば、母集団の推定に際して、誤差を客観的に評価できるという長所がある。
日本の調査統計は標本調査が圧倒的に多い。
もちろん、標本調査の母集団のフレームとして利用される重要な悉皆調査も、いくつか存在する。
国勢調査は、住宅・土地統計調査、労働力調査、就業構造基本調査、社会生活基本調査、国民生活基礎調査、住宅需要実態調査(これは承認統計)など世帯や個人を対象とする重要な標本調査の抽出枠として使用される。
他方、生産サイド(事業所)の抽出枠として用いられる悉皆調査に事業所・企業統計調査がある。
この調査を抽出枠とする主な統計調査は、毎月勤労統計調査、賃金構造基本統計調査、特定サービス産業実態調査、サービス業基本調査などがある。
同様に、農業や農家などについての標本調査は農林業センサスを、製造業の標本調査は工業統計調査を、商業・流通や物価の標本調査は商業統計調査をその抽出枠として使用する場合がある。
もとより、標本調査の抽出枠には業務資料なども利用される。
このように、国勢調査などの悉皆調査は、その調査内容だけではなくて、母集団としての意義も大きい点に注意する必要がある。
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