母集団の均質性|【統計学・統計解析講義応用】
母集団の均質性
母集団が比較的に均質であると考えられる理由があるとすれば,小さな標本があてはまるだろう.
これを例で示してみよう.
10名ずつの3つの異なる母集団での架空の母集団の値である.
これらの値は,たとえば,不安尺度での得点をあらわしている.
すべての母集団で,不安得点の平均は100である.
しかし,母集団Aでは,各個人はかなり似通った不安得点を示し,最低90から最高110の範囲にある.
母集団Bでは,得点はもっといろいろで,母集団Cでもやはりいろいろで,70から130まである.
3つの母集団での3つの標本値を示している.
もっとも均質性の高い母集団(A)では,標本の平均不安得点は98.3で,その値は100という母集団の平均値に近い.母集団が均質でなくなるほど,その標本の平均値は母集団の値からずれてくる.
いいかえると,母集団が主要な変数において異質であると,標本誤差が大きくなる.
標本の大きさを大きくすることによって,標本抽出の誤差の危険が減るだろう.
たとえば,標本Cが3人でなく5人の値を使えば(つまり,すべて同数の母集団の値),その標本平均値は,母集団の平均値により近づくだろう(つまり,90でなく102).
多様性が限られるような生物生理学的プロセスをあつかう臨床研究では,小さな標本は,母集団を適切に反映するかもしれない.
しかし,ほとんどの看護研究では,それと反するような先行研究によるエビデンスがないかぎり,かなりの程度の不均質性を前提とするほうが安全である.
効果サイズ
検出力分析は,効果サイズ(effect size)の概念に立脚している.
効果サイズは,研究変数間の関係性の強さをあらわしている.
独立変数と従属変数が強く関係していると予測できる理由がある場合,その関係を統計学的に実証するには,比較的に小さい標本が適切である.
たとえば, AIDSを治療する強力な新薬をテストしようとするならば,小さな標本でその薬の効果を実証できるかもしれない.
しかし,典型としては,介入は中程度に効果があり,通常,変数は互いに中程度に関連している.
関係性が強いと考える理由が事前にないとき(つまり,効果サイズが中程度であると予想されるとき),小さい標本では危険である.
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