質的研究における標本抽出|【統計学・統計解析講義応用】
質的研究における標本抽出
質的研究は,ふつう,小さい非無作為標本を使う.
このことは,質的研究者が自分の標本の質について考えなくてよいということを意味するのでなく,研究参加者を選ぶのに異なる基準をもちいるということを意味している.
質的研究の標本抽出の論理
量的研究は,母集団の属性や関係性の測定にかかわるので,代表的な標本によって,その測定が適確に母集団を反映するか,また母集団への一般化ができるかを確認する必要がある.
大部分の質的研究の目的は,意味を発見し,多元的な現実を明らかにすることにあり,よって一般化可能性をめざしているのではない.
質的研究者は,標本抽出において,以下のような問いを念頭に研究を始める.
誰が自分の研究にとって豊かな情報をもたらすだろうか.
誰と話をすればいいのか,または,現象についてできるかぎり理解するには,まず何を観察をすべきか.
質的な標本抽出での大切な第一歩は,豊富な情報を得る可能性の高い環境を選択することである.
研究が進むにつれて,以下のような,標本抽出における新しい問いが生じる.
自分の理解を確かめるために,誰と話したり,誰を観察できるか.また,自分の理解を反証するか,または修正するか.自分の理解を豊かにするには?
このように,質的研究での全体のデザインがそうであるように,標本抽出デザインは,初期にわかったことを,その後の方向性を導くために十分に利用するという,生成するデザインである.
質的標本抽出の種類
質的研究者は,確率標本をさけるのがふつうである.
無作為標本は,よい情報提供者になるであろう人々,つまり,見識があり,はっきり発言し,反応がよく,研究者と長いこと話をしようとする人々を選ぶ方法としては最良ではない.
さまざまな非確率標本抽出デザインを,質的研究者は使ってきた.
対象の募集は,研究者が予想したよりもゆっくり進むことが多い.
必要な標本の大きさを決定したら,さらに対象を募集する予備計画を立てておくとよい.
最初の計画はあまりに楽観的であるとわかるはずである,
たとえば,予備計画では適性基準を緩め,参加者を募集できる組織を別に探し,参加したくなるように謝礼を提供したり,募集期間を延長したりする.
予備計画を最初に立てておけば,満足のいかない大きさの標本で妥協する,という可能性は減るだろう.
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