質的研究における標本の大きさ【統計解析講義応用】

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質的研究における標本の大きさ|【統計学・統計解析講義応用】

質的研究における標本の大きさ【統計解析講義応用】


目次  質的研究における標本の大きさ【統計解析講義応用】

 

 

質的研究における標本の大きさ

 

質的研究での標本の大きさを決めるための基準や規則はない.

 

標本の大きさは,おおまかには,探究の目的,情報提供者の質,もちいる標本抽出法の種類について,役割を果たす.

 

たとえば,典型例の標本抽出よりも,最大多様性抽出のほうが,大きな標本を必要とする傾向にある.

 

質的研究では,標本の大きさは,情報の必要性に基づいて決めるべきである.

 

それゆえ,標本抽出でのガイドとなる原則は,データの飽和(data saturation)である.

 

つまり,それ以上に新しい情報は得られず,過剰状態に到達したという時点まで標本抽出をすることである.

 

モースによれば,飽和に達するのに必要な参加者の数は,多くの要因にかかわっている.

 

たとえば,研究設問の範囲が広いほど,より多くの参加者が必要だろう.

 

データの質もまた,標本の大きさに影響する.参加者が,自分の体験をふりかえることができ,効果的に人に伝えることができる,適切な情報提供者である場合は,比較的に小さい標本でも飽和に達することができる.

 

また,縦断的データを収集する場合は,1人ひとりが提供する情報量がかなり多いため,必要な参加者は少なくてよいだろう.

 

研究を計画しているとき,またはプロジェクトの承認を得たり助成を得ようというときは,標本の大きさがあいまいたと,実践上のジレンマが生じることがある.

 

パットンは,現象を理解するのに十分に適切であろう,最小限の標本を特定することをすすめている.

 

飽和に達するために,必要であれば,事例を追加できる.

 

質的標本の評価

 

質的研究では,妥当性(十分さ) (adequacy)と適切性(ふさわしさ) (appropriateness)に関して,標本抽出計画を評価する.妥当性は,標本がもたらすデータの数が十分であること,およびその質をいう.十分な標本は,「希薄な」ところのないデータを研究者にもたらす.

 

研究者が真に飽和を得たとき,情報が十分に得られたことになり,結果としてもたらされた記述または理論が,豊かに編みあげられて完成する.

 

適切性は,標本抽出にもちいる方法に関するものである.

 

適切な標本とは,研究の概念上の要件に従って,もっともよく情報を提供しうる参加者を見つけ,もちいた場合のその標本をいう.

 

たとえば,非確認事例を含まない標本計画は,研究に必要な情報を満たさないかもしれない.

 

どのような種類の質的標本抽出をもちいるにしても,標本抽出過程に関するアイデアや記憶すべきこと(例:次に誰を面接するべきか)を日誌やノートに害きとめたほうがよい.

 

メモがあれば,標本についての貴重なアイデアを思い出す助けとなる.

 

 

3つの主な質的伝統における標本抽出法

 

標本抽出法に関して,さまざまな質的伝統には類似点がある.

 

標本は通常は小さく,確率標本抽出はほとんど使わず,最終的な標本抽出の決定は,通常,データ収集期間中にフィールドで行う.

 

しかし同様に,いくつかの相違点もある.

 

エスノグラフイーにおける標本抽出法

 

エスノグラファーは,まず「大網」法(“big net”approach)をもちいて始めるだろう.

 

つまり,研究している文化の,できるだけ多くの人々と会話をする.

 

研究者は,多くの人々(通常25〜50名)と会話するが,少数の主要情報提供者(key informailt ; キー・インフォーマント)をかなり頼りにすることが多い.

 

その人々は,自分の文化についてよく知っており,研究者と特別な持続的関係を結んでいる.

 

こうした主要情報提供者は,研究者と「内部」をつなぐ主幹であることが多い.

 

エスノグラファーが理論的に精通したうえでの判断によって,主要情報提供者を有意に抽出する.

 

エスノグラファーがもっている,関連する枠組みを構築するための既存の理論的知識いかんで,主要情報提供者となりうる人を蓄積できるかが決まることが多い.

 

たとえば,エスノグラファーは,役割(例:医師,ナース・プラクティショナー)や他の理論的に重要な区分に基づいて,さまざまな種類の主要情報提供者について探すことを決定することもあるだろう.

 

主要情報提供者となりうる人を蓄積したら,当該の文化についてどの程度の知識があるか,また,その文化を明らかにし解釈する際に,エスノグラファーにどのくらい意欲的に協力してくれるか,ということが,最終的に情報提供者を選択するうえでの重要な考慮点となる.

 

外部者(アウトサイダー)」の標本を利用するか,また当事者(インサイダー)」の標本を利用するか,ということが,エスノグラファーのあいだでいくらか論議があることに注意したほうがよいだろう.

 

エスノグラファーは,自分が知っている人々や,利害関係がある人々を標本とすべきではない,といわれてきた.

 

この主張によれば,多くの情報を入手できて,人々の協力を得られる,という明白な利点があっても,妥当なエスノグラフィーを「自分の裏庭で」行うことは不可能である.

 

エスノグラファーが研究している文化に属している場合,自分に染みついた規範や価値観のあつかいがむずかしいかもしれないことが問題である.

 

さらに,自分が知っている人々を研究するエスノグラファーは,すでに彼らと人間関係を確立しているので,客観的な問いかけや観察に支障をきたす可能性がある.

 

エスノグラフィーは,伝統的に,研究者が外部者である文化を研究するが,誰もがこれを必須だと認めているわけではない.

 

たとえばフィールドは,自分自身の文化と環境を研究する看護研究者がもつ固有の問題について記述している.

 

観察や他のデータ収集法は,研究者が文化を理解する助けとなる大きな役割を担っているので,エスノグラフィーにおける標本抽出法は,通常,情報提供者を選ぶこと以上の意味をもつ.

 

エスノグラファーは,誰を標本とするかだけでなく,何を標本とするかについても決定しなくてはならない.

 

たとえば,エスノグラファーは,事象と活動を観察すること,記録と作品を検証すること,また,文化についての手がかりを与えてくれる場所を探索することについて,決定しなくてはならない.

 

主要情報提供者は,エスノグラファーが何を標本とするかを決める助けとなるよう,重要な役割を果たすことができる.

 

エスノグラフィーの標本の例

 

ホガ,アルカンターラ,デリーマは,ブラジルの低所得のコミュニティで,「性と生殖に関する健康(リプロダクティブ・ヘルス)」への男性のかかわりを探索した.

 

エスノグラファーたちは,レイニンガー(Leininger)のエスノナーシング・リサーチの方法をもちいてデータを収集した.

 

その標本は15名の成人男性で構成され,そのうちの7名は主要情報提供者であった,

 

「主要情報提供者は,探究領域について知識が豊かなことと,“観察一参加一再確認”過程での観察に基づいて選んだ,その過程で,彼らは,社会生活上の規範,価値,信念について,身近な実例や,子どもや近親者との会話を中心に語った」.

 

 

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