費用分析|【統計学・統計解析講義応用】
費用分析
新しいプログラムや政策を実施するには費用を要することが多く,既存のプログラムを機能させるにも費用を要する場合がある.
ヘルスケアコストの高騰という目下の状況において,プログラム評価では,プログラムの利益が経費に勝るかどうかを判断するために費用分析(cost analysis)を行うことが増えている.
管理者や公的政策担当者は,何か「役に立つ」かどうかという点だけでなく,経済的に実行可能かどうかという点に基づいて,ヘルスサービスヘの資金配分についての決定を行う.
費用便益分析は,通常はインパクト分析や臨床試験第m相との関連で行う.
つまり,プログラムの有効性に関して確固たるエビデンスがある場合に行う.
チャンとヘンリー〔Chang & Henry, 1999〕が記述したように,いくつかのタイプの費用分析があり,以下の2つはもっともよく使われるものである.
費用便益分析(cost-benefit analysis)
費用と便益の双方を金銭的に概算する.
このような分析には,ヘルスサービスの便益を金銭的に定量化するというむずかしさがある.
また,人の生活の価値をドル換算する方法にも議論がある.
しかし,費用便益分析は,もっとも広く使われる費用分析の方法である.
費用効果分析(cost-effectiveness analysis)
健康のアウトカムと,さまざまな介入に必要な資金とを比較するために使う.
費用は金銭で計ることができるが,アウトカム効果はそうではない.
こうした分析のポイントは,簡単にドル換算できないアウトカムヘの影響を生みだすのにいくらかかるかを概算することである.
この方法では,生活の質といったアウトカムをドル換算しなくてよい.
しかし,金銭的な便益についての情報がなければ,こうした研究によって意思決定者の気持ちを変えるよう説得するのはさらにむずかしい.
こうした費用分析をする研究者は,新しい介入と別の介入の双方について,その実施にかかる費用を記録する必要がある.
複雑なプログラムでは,費用分析によって,個々のプログラム構成要素のための費用を示す必要があろう.
また,さまざまに費用がかかるだろうと予期されるサブグループそれぞれについて,費用を明確にすることも有用であろう.
費用便益分析では,生じうる数々の短期的便益(例:介入後6か月以内のクライエントの逸失労働日数)および長期的便益(例:生産的労働生活が可能な年数)を慎重に考慮する必要がある.
費用便益分析を行う者は,以下に記すいくつかの評価上の立脚点に立って,経済的利益と損失を検証する.
たとえば,標的集団,プログラムを実施する病院または施設,第3者支払い者,雇用者,納税者,社会全体(つまり,標的集団と納税者との組み合わせ)などである.
特定のプログラム効果が,ある集団(例:納税者)にとっては損失であり,別の集団(例:標的集団)にとっては利益であるような場合には,こうしたさまざまな立脚点を判別することは重要である.
看護研究者は,このような経済的分析とかかわることがますます求められるだろう.
デュレンーウィンフィールドら〔Duren-Winfield et al., 2000〕は,慢性閉塞性肺疾患患者への運動介入の費用効果分析を行い,その方法をみごとに記述している.
費用分析の例
ウィルソン〔Wilson, 2000〕は,都市部の学校でのB型肝炎ワクチンプログラムの費用便益分析を行った.
完全に免疫を得た6年生の児童の割合は,8%から80%以上に増えた,学校でのワクチン接種は.従来の方法に比べ,1投与につき1.46ドル安くなる.
ウィルソンはまた,このプログラムによって. 2000万ドル以上のヘルスケア費用が軽減されると概算した.
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