FIAU投与で判明、ミトコンドリア損傷の深刻な影響【ChatGPT統計解析】
FIAU投与を受けた患者の合併症の原因は、ミトコンドリア損傷にあると判明した。肝細胞が異常なミトコンドリアを持ち、エネルギーを産生できなくなり、乳酸アシドーシスや肝不全、膵炎、末梢神経障害などの症状が進行する。FIAUがミトコンドリアDNAに取り込まれ、DNAポリメラーゼが誤って異常なヌクレオチドを合成し、ミトコンドリアの機能を停止させる。動物試験では人間への影響を完全には予測できなかったが、ウッドチャック試験で同様の現象が確認され、新薬開発におけるミトコンドリア毒性の重要性が明らかになった。
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合併症の原因
患者の多くの組織を検査するにつれ,合併症の原因が明らかとなった.
できる限りすべての影響を受けた組織を生検した.剖験時や緊急肝移植時に得た肝臓など無数の組織も検討した.
最初に検査した肝臓サンプルは.過去に一度見たものと類似していたことから,暗く沈うつした気持ちになった.
組織切片を通常の方法で染色すると,透明なピンク色の肝細胞は,胆管および血管で区切られたなめらかなモザイク状にみえる.
もちろん.慢性HBV感染は,炎症細胞の浸潤および線維形成反応の密な架橋によりこのモザイク状態を崩壊させるが,肝細胞はかなりのピンク色を保つたままである.
FIAU投与のおよそ3ヵ月後に死亡した患者の肝細胞は,青白く泡状にみえた。それらは,脂肪の小滴が詰まっており,以前実施したFIAU 1ヵ月投与試験における患者の剖検でみられた微小脂肪沈着症と非常に類似していた.
その以前の試験の患者を死亡させたものが何であろうと,現在もその他の患者を死亡させつつあったのである.
FIAU投与を受けた患者において.有害反応のスペクトルは幅広いものであったが,1つの共通点が示唆できた.
嘔気および疲労の初期症状に続き,乳酸アシドーシス,肝不全.膵炎,末梢神経障害.骨格筋ミオパシーと容赦のないカスケードが起こる.
この反応群は,すべての生存細胞における糖および脂質分子をエネルギーに変換する作用を担っているミトコンドリアの損傷によることが示唆された.
ミトコンドリア酵素が阻害されると,細胞に乳酸および長鎖脂肪分子が蓄積され,細胞の正常機能は停止する.
FIAUがミトコンドリアを損傷したと考えられた。
時が経てばこの理由を理解できるだろうと考えられたが,現時点では,すなわち1993年6月下旬および7月初句においては,目標はそれを証明することにあった.
電子顕微鏡により,大事なヒースをパズルにはめ込むことができた.患者から採取した肝切片の電子顕微鏡像により,表面が酸化性でエネルギーを産生する酵素的装置部分が集まる,膜の正常な内部骨格が欠損した大きく重複性のミトコンドリアが認められた。
これらの空のミトコンドリア周囲は,脂質の小滴であり,石鹸の泡のようにより大きなものと小さなものが集まっていた.
同様の脂質小滴の集まりは,筋線維および神経軸索にもみられた.膵臓は.この種の異常を明らかには示さなかった
一度,膵臓が損傷を受けると,そこに詰まっていたすべての消化酵素が放出され,組織が自ら融解したためである.
その後の研究により. FIAUは,そもそも,核酸を作るための分子の誘導体といえるが,これらの分子が合成されるように,細胞およびミトコンドリアDNAにFIAUが取り込まれることが示され核DNAの合成に関連する正常細胞の酵素,すなわちDNAポリメラーゼαは,基質としてFIAUを有効に活用しなかったが,ミトコンドリア酵素は活用した.
ミトコンドリアは. DNAポリメラーゼyという別の酵素を持っているのである.
この酵索は, FIAU分子を正常なチミジン分子と間違え. FIAU分子をチミジンの入る場所に取り込ませたのである.
異常なヌクレオチドを含むミトコンドリアDNAは,それが本来エンコードするRNAおよびタンパク質のテンプレートとしての役割を果たさない.
そのためタンパク質合成は停止するのである。
しかし,なぜFIAUの毒性が,薬物の初回投与後何週間も何カ月も遅れて発現したのか.今日,最も考えていることは.ミトコンドリアの生活環に基づくことである.
これらの細胞内小器官は,その寿命(life span)が数週間から数カ月問とされている.
FIAU投与開始時には,細胞が正常なミトコンドリアで満たされているとすると. FIAU存在下で新たに生成されたミトコンドリアは損傷を受けると考えられる.
最初,全ミトコンドリアは細胞内にあり,正常に機能している.
そのうち.これらのミトコンドリアは. FIAU損傷DNAを含むミトコンドリアに1つずつ置換される.
最終的には,正常なミトコンドリアがほとんど残らなくなると,細胞の酸化装置は消滅する. FIAU存在下である一定期間培養液中で増殖させた細胞のミトコンドリア酵素濃度量,さらに患者から採取した肝臓におけるそれの直接的測定により,酸化能の大幅な低下が示された.
前臨床試験の再評価
どれほど動物実験の適性を考慮しても.前臨床試験は依然として薬剤開発のプロセスの中で代替のきかないものであるにもかかわらず,低く評価されることがある.
動物を対象とした薬物試験は十分ではないが,ヒトヘの投与による作用については計り知れないほど貴重な情報を提供してくれる.
動物実験は, in vitro試験から予測できない毒性を示すのに役立ち,ヒトでの有効性に必要な用量レベルを決定付けるのに役立つ.
これらのデータがないと,ヒトでの試験はより危険なものになると考えられる.
FIACおよびFIAUの開発は,動物試験に依存していた.
ヒトに初めて投与される前にこれらの薬物についての多くの試験が行われ,さらに毒性を示すことが避けられない事実であることがわかった場合,その毒性を理解し,同様の可能性があるその後の薬物を試験する方法を開発するために,より多くの試験が行われた.
FIACやFIAUのヒト臨床試験の前に,マウス,ラット,イヌ,サルにおける多くの試験,そしてウッドチャックにおいて,1つの試験が行われた.
これらの試験により,いずれかの毒性が明らかになるまでに,ヒトヘの投与を予定していた用量の数百倍の用量が必要であり,動物でみられた毒性は主に骨髄および心臓に関することが示された.
肝臓および膵臓に対する毒性はみられなかった.
患者が死亡した後,過去の動物試験のすべてについて.ミトコンドリア損傷を探し出すという特異的な目標に向かって毒性学者は多くの実験を繰り返し行った.
ミトコンドリア毒性を検出するような新薬の正規の試験などなかった.
今や何を探せば良いかがわかった.
しかし,不思議なことに,まだ新薬の試験に用いられる代表的な動物試験でその毒性を見出していない.
しかし,ウッドチャックにおいて.筆者らの患者に起こったことと類似した現象が起こることがわかった.
ウッドチャックの肝炎感染は,慢性ヒトHBV感染に類似していることが思い起こされる.
初期の試験から, FIACの4週間投与がウッドチャックの肝炎を抑制することが示された.
コーネル大学のBudnnantにより,ウッドチャックにおけるFIAUの12週間投与試験が行われた.
最初の8週間投与でウイルスレベルは劇的に低下したが,最終週には,ウッドチャックが衰弱し始め,体重が減少し始めた.
その肝臓において,顕微鏡的脂肪小滴がみられるようになった.
今日,すべての新しい肝炎薬について,ウッドチャックにおける長期投与試験が行われており,これらの薬物がミトコンドリアを損傷する可能性について検討されている.
これらの試験経過を通して,ジドブジン(AZT),ジダノシン(DDI),ザルシタビン(DDC)を含む抗レトロウイルス薬投与を受けたAIDS患者で既に認められていた特定の毒性は,ミトコンドリア損傷によるものであることが明らかとなった。
進行性AIDSのため治療を受けた数千人にのぼる重症の患者のうち,肝不全,アシドーシス.膵炎,筋炎に関する数十例の散発報告について,正しく理解することは困難であった.
これらの薬物も,また,ミトコンドリア毒性を引き起こしていたが. FIAUに関連するものより頻度が低く,明確ではなかった.
6ヵ月投与試験における最初の患者死亡から2年間で単なる臨床試験以上に注目された結果, FIAU毒性の原因が理解されるようになり,そのことについて細胞試験および動物モデル試験が開発されるようになった.
この期間は公的機関および施設の調査期間でもあったため,これらの研究は臨床研究における多くの死亡を単に非難することを目的として計画されたと思われるようなものであった.
FIAU試験を実施した研究者のうち,これらの調査がもたらす個人的および専門家としてのリスクを想像した者はなかった.
研究の監視
臨床試験は,準備とその監視を必要とする慎重に組織化されたプロセスである.
FIAU試験のすべての事柄,すなわち科学的基本的事項,前臨床データ,被験者の選択,すべての用最変更.反復投与および投与期間延長の決定,有害反応による用量変更の基準,有害事象そのものの定義,同意書など,すべて事前の審査を経て承認を得る必要がある.
臨床試験実施の承認を得るための手順は正式なものであり,時々,研究の実施を延期させるほどの大変な仕事であるが,独立した評価とそれを遂行するための法的基盤が提供されるので.これらの手順を大いに信頼している.
臨床研究に従事し公的資金を受け取り,また費やす米国のすべての施設は,詳細な連邦行則集の対象となる.
施設は,科学者がこれらのガイドラインに従って臨床研究を行うこと.さらにすべての研究プロジェクトの初期調査および継続調査のため正規の手続きを用いることを文轡により保証する.
プロトコールを審査した上級研究者による監視を受け. IRBと施設の品質保証委貝会により,さらにNIHのOffice of Human Subjects Research (OHSR,ヒト対象研究局)により,また最終的にはNIHのOffice for the Protection of Research Risks (OPRR.研究リスク保護局)により,それらの研究を行う上で,必要な財源の承認を受けた.
製薬企業のスタッフおよび顧問も.同様に試験を評価し,モニターした.NVのAIDS臨床試験グループ(ACTG)により行われた試験は. NIH外部スタッフおよびACTG試験委員会の承認を受けていた.
試験において, FDAも重要かつ積極的な役割を果たしていた. FDAの医学審査官は,研究用薬剤および生物学的製剤がかかわるすべての試験を調査するよう任命されている.
これらの試験の第一段階を始める前に,物質,その作用,毒性,製造工程会社に関する既存データを調査する.
通常, FDAは,ある新薬について提案された試験実施について非常に受動的な手順を用いる.研究用新薬制度として知られている許可を受けるため,申請をFDAに提出する.
このことは,すなわち特殊な状況において研究用薬剤を使用する許可を得ることを意味している.
FDA審査官が申請の30日以内に試験に対する異議を報告しなかった場合,その試験を開始してもよい. FDAは,実際に試験を承認するわけではなく,単に不承認ではないことを選択しただけになるのである.
FIACおよびFIAU試験では,患者への薬物の初回投与前に,主要な研究者がFDAスタッフと面会した.
その後,筆者らは試験を改訂.または拡大するたびに面会した.
当初から,毒性を有する可能性のある新規クラスの抗ウイルス薬を探索することになることを知っていた.
AIDS患者におけるCMV疾患状況とその既存治療に関連して,また,慢性HBV感染のインターフェロン注射の代替法として試験薬のもつ潜在的毒性は正当化できると考えていた.
FDA審査官に前例のないほど積極的な関与を求め,それを受けた.
彼らは薬物開発計画に助言をし,試験進行をリアルタイムに審査した.
FDA審査官は経験豊富で,新しい治療選択肢を得るために行われている試験ができるだけ速やかに終了することを熱望していた.
当時FDAに対しては新薬機関,特にAIDSに関する新剤開発を促進するようかなりの公的な圧力がかかっており,これらのFDA審査官はこれを実現するために努力していた.
我々研究者とFDAの審査官は共に,研究プロトコールにおける進行および問題を追跡するため,新しい手法を開発した.
登録されたすべての患者に関するデータおよび重要な臨床検査結果と症状を表にした一連のフローシートを作った.
これらのフローシートは,試験期間中,毎週,各試験施設およびFDAにファックスされた.
すべてあわせると,数百枚に及ぶこれらの資料は,試験が終了するまで,国中を巡ったのである.
FIAU(フルオロウラシルアラビノシド)の投与を受けた患者に発生した合併症の原因は、ミトコンドリアの損傷に起因していることが研究によって明らかになりました。この薬物は当初、慢性肝炎やAIDS患者の治療薬として期待されていましたが、その使用により予期せぬ重篤な副作用が発生し、その背後にあるメカニズムを探るための詳細な検討が行われました。肝臓の組織検査を行った結果、患者の肝細胞に異常なミトコンドリアが見られ、それらは正常なエネルギー代謝を行うことができず、乳酸アシドーシス、肝不全、膵炎、末梢神経障害、さらには骨格筋のミオパシーといった一連の症状を引き起こしていました。これらの症状は、ミトコンドリア内でエネルギーを生成する酵素の働きが阻害されることで、細胞内に乳酸や長鎖脂肪酸が蓄積し、結果として細胞の正常な機能が停止することが原因でした。
ミトコンドリアは細胞のエネルギー工場とも呼ばれる重要な細胞内小器官であり、その正常な機能が損なわれると細胞全体の活動が停止し、組織全体の損傷につながります。FIAUはミトコンドリアにおいて異常なDNAの合成を引き起こし、その影響でミトコンドリアの構造が破壊されることが示されました。具体的には、FIAU分子は細胞の核DNAには影響を与えませんが、ミトコンドリアDNAに取り込まれることが確認されました。ミトコンドリアは、核DNAとは異なる独自のDNAを持っており、そのDNAを複製するためにDNAポリメラーゼγという酵素を使用します。この酵素は、正常なチミジンとFIAUを区別できず、FIAU分子を誤ってチミジンの代わりに使用し、異常なヌクレオチドをミトコンドリアDNAに組み込んでしまうのです。その結果、ミトコンドリアDNAの正常な複製や修復ができなくなり、エネルギー産生に関与するタンパク質の合成が停止します。
FIAUが投与されてから数週間から数ヶ月の間、初期段階では患者のミトコンドリアはまだ正常に機能しているため、表面的には目立った問題は発生しません。しかし、FIAUの影響を受けた新たに生成されるミトコンドリアは次第に異常な構造を持つようになり、正常なミトコンドリアが徐々に異常なものに置き換わっていきます。このプロセスが進行するにつれて、最終的に細胞内のミトコンドリア全体が異常なものになり、細胞の酸化的リン酸化が停止し、エネルギー産生が不能になるのです。このようにして、患者の症状は徐々に進行していき、最終的には致命的な肝不全や膵炎などが引き起こされることになります。
さらに、FIAUの投与による影響は肝臓や膵臓に限らず、筋線維や末梢神経軸索にも同様の異常が見られました。筋肉組織においても脂質の小滴が蓄積し、筋力の低下や筋肉痛などの症状を引き起こすことが確認されています。このような全身にわたる影響は、ミトコンドリアがエネルギー供給において非常に重要な役割を果たしているため、どの組織にもミトコンドリアの損傷が及ぶと機能不全が引き起こされることを意味しています。
FIAUの毒性が明らかになる前には、さまざまな動物モデルを使用して薬物の安全性を確認するための試験が行われていました。マウスやラット、イヌ、サルなどの実験動物にFIAUを投与することで、薬物の効果と毒性を評価していましたが、これらの動物試験では肝臓や膵臓に対する毒性は確認されませんでした。実際、動物試験で見られた毒性は主に骨髄や心臓に関するもので、ヒトにおけるようなミトコンドリア損傷による全身的な影響は検出されていませんでした。しかし、FIAUの投与を受けた患者が死亡した後、過去の動物試験の結果を再評価するために、毒性学者たちはミトコンドリアに特化したさらなる検査を行いました。その結果、動物試験ではミトコンドリア毒性を検出するための標準的な方法がなかったため、これまで見逃されていたことが明らかになりました。
興味深いことに、FIAUの毒性はすぐには発現せず、投与から数週間から数ヶ月後に現れることが特徴的でした。この遅延発現の理由としては、ミトコンドリアの生活環が影響していると考えられています。ミトコンドリアは細胞内で数週間から数ヶ月の寿命を持っており、新たなミトコンドリアが次第に異常なものに置き換わるまで時間がかかるため、毒性の発現が遅れるのです。これにより、初期の臨床試験ではFIAUの毒性が検出されなかったものの、長期にわたる試験でようやくその致命的な影響が確認されることになりました。
また、FIAUと同様のミトコンドリア毒性を持つ薬物には、AIDS患者に使用されていた抗レトロウイルス薬(AZT、DDI、DDCなど)が含まれています。これらの薬物もミトコンドリアの機能を損傷することで、肝不全やアシドーシス、膵炎、筋炎などの副作用を引き起こすことが確認されています。ただし、これらの抗レトロウイルス薬の場合、FIAUほど頻繁には重篤な副作用が発生せず、その毒性も比較的軽度であることが特徴です。しかし、FIAU投与による毒性の発現が明らかになったことで、これらの薬物の副作用についてもミトコンドリアの損傷が関与している可能性が再認識されることとなりました。
FIAUの毒性が明らかになると、その原因を解明するためのさらなる研究が行われ、細胞試験や動物モデル試験が開発されました。これらの研究は、FIAUの毒性を理解し、将来的に同様の薬物が開発される際の安全性を確保するために重要な役割を果たしました。また、この過程でFDA(アメリカ食品医薬品局)やNIH(アメリカ国立衛生研究所)などの公的機関も積極的に関与し、FIAUの臨床試験における監視体制の強化が図られました。
FIAUの臨床試験は、薬物の有効性と安全性を確認するための慎重に組織化されたプロセスに基づいて実施されました。研究者は被験者の選択、用量の変更、有害事象の評価、同意書の取得など、すべての手順について事前に審査を受け、承認を得た上で試験を進めました。
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