カサンドラの出現【統計解析講義応用】

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カサンドラの出現|【統計学・統計解析講義応用】

カサンドラの出現【統計解析講義応用】


目次  カサンドラの出現【統計解析講義応用】

 

 

カサンドラの出現

 

ウイルス増殖をうまく妨害する化合物は,宿主細胞の複製を妨害するだろうということが議論となった.

 

トロイアの王プリアモスと女王ヘカベの娘で,滅亡を予言したが無視された,神話に出てくるカサンドラのようなものである.

 

抗ウイルス療法の実効性に対する根強い不安感は,アシクロビルの合成によりすぐに拭い去られた.

 

しかし,極めて重要な細胞増殖過程におけるヌクレオシドおよびその他の類似体による作用機序については,わかっていなかった(そして未だにわかってはいない).

 

この未知のことが,致命的となりうることがFIAUの最後の試験で示された.

 

延長臨床試験

 

1993年初頭. FIAUに対する全体的な期待は極めて高かった。

 

単純な経口投与により,主要なヒトウイルス病原体の血中レベルを抑制することができ,巨大な市場が見込まれた.

 

Oclassen Pharmaceuticals は,FIAUのさらなる開発には,大規模な非常に費用のかかる臨床試験が必要である会社の援助を求めた.

 

いくつかの候補会社のうち, FIAUのさらなる試験のリーダーシップをとるように,世界的な巨大製薬企業の1つであるイーライリリー社が選ばれた.

 

リリー社の計画は. FIAUを,この時点まで用いられてきた懸濁液剤ではなく錠剤として製剤化すること,投与期間を1年間に延長すること,米国およびHBV治療の大きな必要性が見込まれるアジアにおいて多数の医療機関に試験を拡大することであった.

 

リリー社の試験が別の場所で実施されている問,NIHの筆者らは,より大規模で年単位の長期試験に拡大する前に,別の6ヵ月間投与試験を行う必要があると考えた.

 

この目的のために. 1993年3月に我々にとっては3つ目試験を開始した.

 

HBV感染以外は問題のない24例の患者に, 0.1または0.25 mg/kg/ 日を投与するようデザインされていた.

 

投与の8〜10週間後,数例が嘔気および疲労を報告し始め,プロトコールガイドラインに従って減倔したり投与を中止したりした.

 

この試験の最初の登録患者は,投与4週間後に足先に感覚異常を認めた.

 

神経伝導検査結果は正常であったが,6月初旬にFIAU用量を減量し,それにもかかわらず症状が持続したため,その1週間後に投与を完全に中止した.

 

その2週間後,嘔気と疲労が次第に重度となった.

 

1993年6月25日の夜遅く,彼はバージニア州の近くの救命救急室に搬送され,低血圧とアシドーシスが認められた.

 

この患者に何が起こったか理解できなかったが,過去の有害事象に対する懸念と,この患者の重症度に基づいて.次のような1つの決断を行った.

 

他の試験患者すべてに連絡し,FIAU投与をただちに中止するよう依頼する.

 

その後,この最初の重篤な男性は. NIHクリニカルセンターの集中治療室に搬送され,そこで重度の肝不全が確認された.改善の徴候が認められず,4日後,緊急肝移植術を受けるため,シャーロッツビルのバージニア大学に搬送された.

 

この患者は,進行性アシドーシスおよびショックのため7月6日に死亡した.

 

FIAUの6ヵ月投与試験にエントリーされる予定の24例のうち,15例は,6月末までに既に登録されていた.

 

その15例中11例は,前年の1ヵ月投与の試験に参加していた.

 

これらの症例は,先行試験において,有意ではあるが一過性のHBV血中レベルの低下しか示さなかったため,より明らかで持続的な効果を得るためにはより長期の投与が必要だと考えられたのであった.

 

これらの11例は最初に登録され,試験終了時,FIAU投与を既に8週間以上受けていた.

 

他の新たに登録された4例は,この時点でのFIAU投与は3週間以下であった.

 

他の試験参加者を評価するにつれ,その多くがある程度の毒性徴候を示すことを見出した.

 

数例の患者は嘔気または疲労を感じていたが,2週間毎の血液検査モニタリングでは極めて安定しており,全例が治療に失敗した肝炎のインターフェロンα療法でもこれらと同様の副作用が認められていたことから,患者らは,以前からこのことにあまり気にかけていなかった.

 

しかし,今となって,そのうち数例はより重篤な有害事象を示し,投与を中止しているにもかかわらず,実施する血液検査の結果が進行性に悪化した.

 

あるときは,この15例中9例が,同時に医療機関に入院していた.

 

数時間おきに回診すると,心配される所見および当惑させる所見がどんどん出現した.

 

続く数ヵ月で,計5例が死亡し,2例は緊急肝移植によって生存し,3例は完全に回復し,最低用量のFIAU投与を受けた3例では明らかな有害事象が認められなかった.

 

 

FIAUの毒性

 

患者の衰弱原因は,続く2年問にわたり,多数の施設の共同研究者たちのチームによる分子生物学,生化学,毒性学,動物モデル試験により,次第に明らかになった.

 

急性反応の性質は,この詳しい研究に重要な糸口を提供することになった.

 

FIAU投与を受け死亡に至った患者は,血中乳酸濃度を大きく上昇させ,血液pHが7.0を下回ることも数回あった.

 

肝不全は.低アルブミン血症,低プロトロンビン血症で示される肝細胞合成機能の完全な喪失,さらにアミノトランスフェラーゼ濃度の驚くほど若干の増加しか伴わない死亡直前のビリルビン20 mg/dLへの増加,という特徴があった.

 

血清アミラーゼの上昇とともに,血清リパーゼ濃度が上昇した.

 

世界中の専門家に相談し,アドバイスを得るためいくつかの特別委員会を召集し,この経過を改善するために有用と考えられる治療をすべて試みたが,ほとんど奏効しなかった.

 

毒性はヌクレオシド誘導体から生じたとも考えられ,細胞内の合成経路からFIAU分子を除去するため.チミジンおよびウリジンを静注した. アシドーシスを改善するため.高用量のテキストロースおよび大量の重炭酸塩を静注した.

 

また,ある日の夕方遅く.1人の被験者における肝不全治療のため. FDAから実験的装置を使用する許可を得たこともあった.

 

この装置は毛細管チューブ内で肝芽細胞腫200 g を増殖させたカラムで,人工肝臓としての試験の最も初期段階のものであった.

 

ドナー肝臓を待つ間,この装置にて体外循環を行った.それにもかかわらず,この患者は死亡した.

 

現在でもなお,これらの最終的な治療法のいずれかが有用であったという確信はない.

 

命を助けることができたと確信している唯一の治療法は,肝移植であった。

 

これは5例で試みられたが,3例は,実施された時点であまりにも病態が悪化していた.

 

移植第1週を乗り越えたのは2例だけであり,この2例は全く正常な肝機能を示し,少なくとも数年問生存した.

 

 

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