施設審査委員会(IRB)【統計解析講義応用】

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施設審査委員会(IRB)|【統計学・統計解析講義応用】

施設審査委員会(IRB)【統計解析講義応用】


目次  施設審査委員会(IRB)【統計解析講義応用】

 

 

施設審査委員会(IRB)

 

ヒトを対象とした研究を統括する現在の法律の倫理的基盤は, 1979年に発表されたベルモンド・レポートにおいて明確に述べられている。

 

ベルモンド・レポートは,ヒトを対象とするすべての研究に関連する3つの基本的な倫理原則-「人格の尊重(respect for persons)」.「善行(beneficence)」,「正義「」ustice)」-を確立し,どのようにしてそれらの原則を,ヒトを対象とする研究行為に適用するかを説明している.

 

「人格の尊重」は,個人の尊厳と自主性を認めており,被験者が研究に参加する際にインフォームド・コンセントを求めている,

 

しかしながら,すべての個人に自己決定能力があるわけではなく,ベルモンド・レポートでは自主性が低下している人はさらに保護を求める権利があることを認めている.

 

例えば,ある被験者については,彼らに危害を及ぼすかもしれない研究活動から彼らを除外するという観点から手厚い保護を必要とするかもしれないが,一方で,悪影響が起こりうる可能性について理解した上で自由意思によって研究に参加するということを確認する以外に,ほとんど保護を必要としない人もいる.
「善行」は,研究による便益は最大化され,起こりうる危害は最小化されることを求めている.

 

この原則は,個々の研究プロトコールについて,リスクと便益が研究者やIRBによって十分に検討されることに現れている.

 

「正義」は,研究被験者の公平な選択と治療を求めるものである.

 

例えば,被験者は公平に選ばれるべきであり,科学的もしくは倫理的に妥当な理由がない限り,ある特定の個人や階級の者が組織的に研究に選択されたり,除外されたりすることがないよう保証されるべきである.
また.十分に正当化された例外規定がない限り,研究による直接的もしくは,それに続く研究による便益を受けそうもない対象群を研究に入れるべきではない.

 

これら3つの原則はどれもないがしろにされてはならない.

 

それぞれの原則は強い道徳的影響力を有し,それらが衝突するときには難しい倫理的な問題が生じる.

 

しかしながら,ヘルモント・レポートの原則を理解し適用することは.被験者に敬意を表した倫理的な治療を推進するのに役立つ.

 

規制の基盤

 

NIHを含め, DHHSによって資金提供や支援を受けている生物医学と行助研究は.45 CFR 46 (連邦規則集45巻46章)に定められているヒト被験者の保護に関する規制の下にある.

 

これらの規制はベルモンド・レポートの原則を具体化したものである.

 

ひとまとめにすると,ベルモンド・レポートと45 CFR 46 は,研究を実行,審査,監督する人々の最低限の倫理基準と法的義務を明確に示している.

 

また,研究資金源に関係なく,米国で行われる未承認薬・医療機器を扱うすべての臨床試験はFDAの規制下にあり,45 CFR 46に従って試験が行われている.

 

さらにFDAの規制は21 CFP 50 と21 CFR 56 に収められており.それにより研究資金源にかかわらず医薬品・生物学的製剤・医療機器の開発や承認が規制されている.

 

ヒト被験者の保護とIRBに関するFDAとDHHSの規制は,いくつかの違いはあれども多くの点において一致している.

 

DHHSは生物医学と行助研究に対して連邦政府による資金提供を行う主要機関である.

 

DHHSによって実施もしくは支援されるヒトを対象としたすべての研究は,45 CFR 46 の要件を守りながら行われなければならない.

 

資金提供を行った研究におけるヒト被験者の保護を監督するために, DHHSの規制機構は,2段階審査,1つは連邦政府レベルでの審査,もう1つは施設レベルでの審査から成り立っている.

 

例えば.NIHの研究資金を受ける状況にある場合,施設は職員がベルモンド・レポートの倫理原則と45 CFR 46 の要件を遵守することを杳面上で保証しなければならない.

 

この書類は遵守証明書(Assurances of Compliance)と呼ばれる.

 

 

この証明書は, DHHS長官の代理として被験者保護局(Office for Human Research Protections, OHRP)を通じて締結され,承認される契約書のような合意書である.
2011年3月,OHRPは米国内の施設との間に8,557の証明書を,国外施設との間に2,457の証明書を締結している(2011年. OHRPとの私信による).

 

すべての証明書は.ヒトを対象とする研究活動の審査とモニタリングに対する施設の方針と手順を, IRBの構成委員の要件や審査手順・記録保管の手順を含めて明記している.

 

45 CFR 46 の要件や施設の遵守証明書の要件からの違反に対して. OHRPは様々な行政措置を行うことができる.

 

1990年から2000年半ばまでの間に行われたコンプライアンス調査の結果,38の米国内の研究施設において,臨床研究活動の制限や是正措置が行われるに至った.

 

OHRPによる行政措置の内容としては,いくつかの施設においてDHHSが資金提供をしているすべての臨床研究が一時的に停止されたり,施設内で研究を行っている研究者のうち何人かもしくは全員がヒト被験者の保護に関する適切な追加教育を受けることが求められたり,確認された不備の改善面に関する施設の進捗についてDHHSへ3ヵ月毎に報告させること,などがある.

 

2005年から2010年末までの間に行われたコンプライアンス調査の結果,3つの米国内の研究施設において,研究活助の制限や停止が行われた.

 

OHRPによる行政措置として,いくつかの施設において.連邦政府が資金提供をしているすべての臨床研究の一時的な停止や新たな承諾受け入れ責任者(Authorized Institutional Official on the Assurance)の任命,適切な継続審査を受けていないすべてのDHHSもしくは連邦政府によって支援されるヒトを対象とした研究プロトコールの再審査が求められた.

 

米国で行われているほとんどの研究は. NIHもしくは他の政府機関によって資金提供されているという理由か,未承認薬や医療機器を用いているのでFDAによって規制されている.という理由のどちらかのために,連邦規則集の管轄下に置かれている.

 

連邦政府によって資金提供されていないという理由や. FDAの規制下にある化合物を使用していないという理由によって,連邦規則集によるヒト被験者保護の管轄下にはおかれない研究もある,

 

これには,教育機関(大学など)によって行われる研究や連邦政府によって資金提供されない他の研究が含まれる.

 

これらの研究の質についてや,どのような状況下で行われているのかについては知られていない.

 

米国で行われるすべての臨床研究を連邦規則集の管轄下に置こうとする取り組みが行われてきているが,いまだ成功していない.

 

施設審査委員会(IRB)

 

DHHSとFDAの規則は,計画中のほとんどの臨床研究がIRBにより前もって審査を受けることを求めている.

 

IRBの存在は,臨床研究者には利益相反がつきものであるために重要である.医療専門職として,彼らは個々の患者の福祉を増進することに身を捧げている.

 

研究者としては,彼らは自分の個々の患者以外の患者にも適用できる一般化可能な知識を求めている.

 

第二の目標が第一の目標と対立するかもしれないので.多様な人間が集まってヒトを対象とする研究を客観的に審査することが,ヒト被験者を保護し,倫理的欠陥のない研究の促進につながる可能性が最も高いということを我々の社会は法律によって定めてきた.

 

IRBの制度は完璧ではないが,良心的なIRBは米国国民に,ヒト被験者の権利と福祉はその研究に直接参加していない人々(IRB委員)によって熟考されている,という安心を与えている.

 

研究の審査と承認の過程を通して,研究者や研究施設やIRBのメンバーやその他の人々は,彼らの決定および行為に対して公的に責任を負い続ける.

 

ヒトを対象とした研究の, IRBの審査と承認に関する用語の定義,記録保存の必要性,要求される要件は45 CFR 46 に規定されている.

 

研究リスク保護局(OPRR.訳注:現在のOHRPにあたる)の承認を受けた証明轡を有する施設においては,施設のもつ証明文書にも要件は記載されている.
そのうちのいくつかをここでは説明する.

 

 

定義

 

「研究」とは,一般化可能な知識に発展もしくは寄与するようにデザインされたあらゆる系統的調査である(45 CFR 46.102[d]。

 

「ヒト被験者」とは,研究者が(1)被験者へ干渉または介入することによってデータを得ようとしている,

 

もしくは(2)識別可能な個人情報を得ようとしている生きている個人とされる(45 CFR 46.102[f]).

 

例えば,ある医師が病院の診療記録部門にHW感染と診断されたすべての患者の診療記録を再調査のために利用できないかと尋ねた状況を取り上げてみよう.

 

その医師は,過去5年間にその病院で治療されたHW患者の医学的管理について知りたい.上述の定義によると,その医師がもう生存していない患者の診療記録を再調査する場合は,研究を行っていることにはなるものの,ヒト被験者(ここでは生きている個人と定義している)を対象としていることにはならない.

 

しかしながら,その医師がまだ生きている患者の診療記録を再調査する場合は,ヒトを対象とした研究を行っていることになる.

 

ゆえに.生きている患者の診療記録を再調査する前には,その研究が前もってIRBの審査と承認を受ける必要があるかどうか,もしくは免除されるものかどうかを判断する必要がある.

 

IRB審査を免除される研究活動

 

ヒトを対象とするすべての研究が,前もってIRBの審査と承認を必要とするわけではない.

 

ヒトを対象としていながらもIRB審査に関する45 CFR 46 の要件を免除される6つの研究カテゴリーがある.6つのIRB審査を免除されるカテゴリーの背景にある一般的な理論的根拠は,研究がヒトを対象としていても,被験者を日常生活で被る以上の身体的,社会的,心理的,その他のリスクにさらすことがない,ということである.

 

IRB審査を免除される研究の1例としては,現存している記録(例えば,病理標本,診療記録)の調査で,これらの原本が公的に入手できる場合,もしくはその情報が研究者によって記録され,被験者が直接特定できない,または連結可能ではない場合である.

 

ゆえに,研究者が現存する診療記録を調査するという上記の例において,匿名の(患者を判別できる関連物もしくは暗号がない)様式でカルテから情報を記録する場合には. IRBの審査と承認を免除してよい.

 

しかしながら,多くの病院が診療記録と病理標本の研究利用に関してより厳しい方針を有しており,研究者は研究に関連する施設の方針をよく知っておくべきである.

 

また,調査研究とアンケート研究も米国ではよく行われている研究である.

 

これらの研究は.調査情報が外部に公開された場合に,被験者を刑事責任もしくは民事責任上の大きなリスクにさらしたり,被験者の財政状態や雇用可能性,評判に被害を与えたりする可能性がない限り. IRB審査の対象から除外してよい.

 

ゆえに.例えば薬物使用や,子どもや配偶者への虐待,性的嗜好や他のプライベートな行為のように取り扱いが難しい問題についての情報を扱うアンケートや調査は. IRB審査を免除されるべきではない.

 

計画中の研究活動がIRB審査を免除されるかどうかについて決めるには,施設によって手順が異なる.

 

例えば. IRBが決定を下している施設もあれば,研究統制部門やそれに相当する部署が決定を下す施設もある.

 

しかし,計画中の研究活動が前もってIRBの審査や承認を免除されるかどうかについて,研究者は最終決定を下す権限を与えられていない.

 

研究者は研究を開始する前に,免除を求めるもしくは受けるための施設の手順をよく知っておくべきである.

 

最小限のリスクと迅速審査手順

 

「最小限のリスク(minimal risk)」とは,「研究に参加することにより,予想される危害や不快の可能性と程度が,日常生活や日常臨床で行われる通常の身体的・精神的診察や検査によって被るものよりも大きくない」ということを意味する(45 CFR 46.102[i]).

 

規則における「最小限のリスク」の定義は,最小限のリスク研究が迅速審査手順によるIRB審査の対象となることから規定されている.

 

これは, IRB委員長や委員長に指名された経験のあるIRB委員が. IRBを代表して研究を承認してもよい(しないのではなく),ということを意味している.

 

迅速審査のプロセスは,最小限のリスクを有する研究活動のIRB審査を効率化し,手早く容易にするために導入された.

 

 

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