5フェーズで解明!産後うつ病の量的研究プロセス【ChatGPT統計解析】
量的研究のプロジェクトは、5つのフェーズに分けられます。フェーズ1では概念の整理を行い、文献のレビューを補完しました。フェーズ2では研究デザインの調整と病院への許可取得に時間をかけました。フェーズ3では、150人の母親に産後うつ病のスクリーニングを行い、データ収集に約1年かかりました。フェーズ4では統計分析を行い、スクリーニングの精度を検証しました。最後のフェーズ5では、研究結果を報告し、学術誌に投稿しました。
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量的研究のプロジェクト・スケジュール
ベックとゲーブル〔Beck & Gable, 2001〕は,出産後まもない母親の不安定な気分をスクリーニングするために新しく開発された,産後うつ病検定尺度(postpartum depression screening scale: PDSS)の精度を評価する研究を行った.
フェーズ1:概念の相(1か月)
この相はもっとも短期間だった。
概念的作業の大部分は,ペックとゲーブル〔Beck & Gable, 2000〕が最初の研究で開発した検定尺度ですでに済んでいたからである.
文献はすでにレビューしており,最新の文献を補充するだけだった.
最初の研究と同じ枠組みと概念的定義を,新しい研究でも使った.
フェーズ2:研究デザインと計画の相(6か月)
2番目の相には時間がかかった.
研究デザインを微調整するだけでなく,対象を募集する病院への入場許可を得,病院の研究対象者検討委員会の許可を得た.
この期間に,ベックは研究デザインを最終決定するために,何回も統計コンサルタントや測定用具開発コンサルタントと会った.
フェーズ3:経験的な相(11か月)
データ収集を終えるのに約1年かかった.
デザインは,産後6週間の150人の母親にPDSSを施行することと,産後うつ病であるかを判断するために,精神科診断の面接の予定を組むこととした.
対象となる女性の研究への参加は,出産準備クラスで募集した.
研究者は,データ収集を産後6週間まで待たなくてはならないので,データ収集の4か月前に募集を始めた.
臨床で心理療法士をしているナースが,来院して診断面接をできるのは,1週問に1日だけだった(車で2時間かかる).
これによって,望んだ標本の大きさに到達するまでに要する時間が決まった.
フェーズ4:分析の相(3か月)
統計学的検定を行い,母親を産後うつ病であると判定するPDSS上のカットオフ値(分割値)を決定した.
産後うつ病を予測するうえで, PDSSの精度を決定するためのデータ分析も行った.
この相で,ベックは統計学者と測定用具開発コンサルタントと,研究結果の解釈について話しあった.
フェーズ5:普及の相(18か月)
研究者は研究報告を作成し,『Nursing Research』誌に掲載されるよう投稿した.
4か月以内に受理されたが,発刊まで14か月問の「近刊(in press)」(出版待機)となった.
この間,著者たちは研究結果を地域の学会や国際学会で発表した.
研究者たちはまた,研究助成機関へ要約報告を提出する準備の必要があった.
質的研究のプロジェクト・スケジュール
ベック〔Beck,2002〕は,産後1年間の双子の育児についてのクラウンデッド・セオリー研究を行った.
フェーズ1:概念の相(3か月)
ベックは,産後うつ病の量的研究の結果,多胎の子どもたちの母親に関心をもった.
これらの研究結果により,1人の子どもをもつ母親よりも,多胎の子どもたちの母親のほうが,産後うつ病の発生率が高いことがわかった.
ベックは,それまで多胎の出産を研究したことがなかったので,慎重に文献をレビューする必要があった.
しかし,ある病院での研究経験があったので,その病院のゲートキーパーを知っており,研究の場(病院)への入場許可を得るには時間はかからなかった.
ゲートキーパーは,多胎の子どもたちの親を支援するグループを担当しているナースだった.
ベックは,そのナースとこれまで研究できわめてよい関係をつくっていた〔そのナースは,産後うつ病の研究で母親を募集する手助けをしたバース・エデュケーター(出産教育者)の1人だった〕.
フェーズ2:研究デザインと計画の相(4か月)
概念の相での文献レビューののち,クラウンデッド・セオリーデザインが選ばれた.
研究者は,双子の母親を研究に募集する最良の方法を計画するため,支援グループを代表するナースに会った.
研究者が支援グループの毎月の定例会に出席する計画も立てた.
デザインが仕上がり,研究提案書を病院と大学の双方の研究対象者検討委員会に提出した.
フェーズ3:経験的な相/分析の相(10か月)
データ収集とデータ分析の相は,このクラウンデッド・セオリー研究では同時に起きる.
ペックは,「多胎の子どもたちの親(parents of multipies)」支援グループの会合に10か月間出席した.
この期間に,ベックは,母親たちの自宅で,16人の双子の母親に徹底的な面接を行った.
そして,その豊かで広範なデータを分析した.ペックの分析によって,「人生をおあずけにする(life on hold)」ということが,生後1年問の双子との生活で母親が体験する基本的問題であることがわかった.
母親が自分の生活を再開しようとするプロセスは,「一時停止ボタンを解除する(releasing the pause button)」とベックがよんだ4段階を経て進んだ.
フェーズ4:普及の相(6か月以上)
この研究を説明する論文を書き,雑誌に投稿した.
論文は「Qualitative Health Research」誌に2002年に掲載された.
雑誌論文として研究結果を普及させるとともに,ベックは,地域の看護研究学会で研究結果を発表した.
・量的研究においては,基本的には実験研究と非実験研究とが区別される.実験研究では,研究者は介入したり処理を加えることを積極的に行う.一方,非実験研究では,研究者はそこに存在する状況や特徴を,介入することなく観察する.
・質的研究は,人類学,社会学,そして心理学という学問領域に由来する研究の伝統に強く根ざしていることが多い.この3つの伝統は,グラウンデッド・セオリー,現象学,民族誌学という質的看護研究に大きな影響を与えている.
・クラウンデッド・セオリーは,社会環境で生じる主要な社会心理学的,そして構造的プロセスを記述し理解しようとする.
・現象学は,人の生きられた経験に関心をもち,人々の生活経験とはどのようなものかを考える方法である.
・民族誌学は,ある限定された文化的集団にとっての意味,パターン,経験を全体論的な方法で研究する枠組みを提供する.
・量的研究では,調査研究を行うステップはごく標準的であり,研究者が研究設問を提起してからそれに答えるまでのたどる経過は,通常,直線的である.
・量的研究における主な相とステップは,概念の相,計画の相,経験的な相,分析の相,そして普及の相である.
・概念の相には,以下のステップがある.@研究の問題状況の明確化,A文献レビュー,B臨床研究のための臨床フィールドワークの遂行,C枠組みと概念的定義の明確化,D検証すべき仮説の明確化
・計画の相には,以下のステップがある.E研究デザインの選択,F実験研究の場合は介入プロトコルの作成,G母集団の特定,H標本抽出計画の作成,I自己報告法,観察,または生物生理学的方法の利用など,研究変数を測定する方法の特定,E対象の権利を守るステップの施行,I同僚と話しあい,測定用具をプレテストし,ある場合にはパイロット・スタディ(予備的研究)を実施して,研究計画を仕上げる.
・経験的な相には,以下のステップがある.Iデータ収集,I分析のためのデータの準備
・分析の相には,以下のステップがある.I統計学的分析によるデータ分析,I結果の解釈
・普及の相には,以下のステップがある.E研究報告の準備による研究結果の伝達.研究結果を囗頭発表したり,よくあるのは雑誌論文として出版できるようにすること.I看護実践における研究のエビデンスの利用を促す努力をする.
・量的研究の施行には,注意深い計画と組織化が必要である.作業達成のために,あらかじめ期限を設け,予定表を準備することがすすめられる.
・質的研究の活動の流れは,量的研究に比べて柔軟で直線的でない.
・質的研究者は,関心ある現象について,まず幅広い問いをもち,ほとんど研究されていない側面に焦点をあてることが多い.
・質的研究の初期の相では,研究者は場を選び,その場と,データ収集を行う特定の環境への入場許可を得ようとする.たいてい,入場許可には,その場にいるゲートキーパーの協力を得ることが含まれる.
・質的研究における研究デザインは,概して創発的デザインである.フィールドに入ると,研究者は情報提供者を選び,データを収集し,それから,それらを繰り返し分析し解釈する.フィールドでの体験をとおして,研究のデザインの輪郭が明らかになる.
・初期の分析は,飽和(情報の重複)に達するまで,標本抽出とデータ分析のなかで洗練されていく.
・質的研究者は,研究結果の普及によって研究を完結する.研究結果は,以下の目的のために利用される.@後続する研究の方向性をかたちづくる(より高度にコントロールされた量的研究を含む),A臨床目的と研究目的にかなう構造化された測定用具の開発を導く,B問題や状況に対するナースの認識を形成し,潜在する解決法の概念化を助ける.
量的研究のプロジェクトは、全体として非常に計画的かつ段階的に進められたものであり、研究を実施する上での重要なプロセスが5つのフェーズに分けられています。それぞれのフェーズには独自の目的と作業があり、これらのフェーズを順次進めることによって、研究の信頼性や正確性が確保され、最終的な成果としての研究結果の普及に至るまでの流れが形成されました。まずフェーズ1は「概念の相」として位置づけられており、このフェーズは研究の土台を固める重要なステップです。概念の整理や文献レビューを通じて、研究の枠組みが明確にされます。このフェーズは通常短期間で完了しますが、それは過去の研究や既存の理論を基にした概念作業がすでに行われていることが多いためです。特にベックとゲーブルの研究においては、彼らがすでに開発した産後うつ病検定尺度(PDSS)という既存のツールがあり、このツールを用いることで概念的作業の大部分が簡略化されました。文献レビューも、すでにレビューされた文献に最新のものを追加するだけで済んだため、ここでの作業は比較的短期間で終わりました。研究の枠組みや概念的定義は前の研究と同じものを使用し、新しい研究にも適用されました。
フェーズ2では、研究デザインと計画の策定が行われます。このフェーズは、研究の実施において極めて重要な段階であり、研究の全体的な計画を詳細に設定し、研究が円滑に進むように各種手続きや許可を取得する必要があります。このフェーズには6か月という長い時間がかかりました。研究デザインの微調整を行いながら、研究に参加する対象者を募集するために病院への入場許可を得る必要がありました。また、病院の研究対象者検討委員会の許可を得る作業も含まれていました。さらに、ベックは研究デザインの最終決定を行うために、統計コンサルタントや測定用具開発の専門家と何度も会合を重ね、研究の方向性や使用する測定方法について詳細な議論を行いました。こうした一連の作業を通じて、研究デザインが完成し、実際のデータ収集に向けた準備が整いました。
フェーズ3は「経験的な相」と呼ばれ、実際にデータを収集する段階です。このフェーズは最も時間がかかるフェーズであり、データ収集には約11か月を要しました。具体的には、150人の母親に対してPDSSを施行し、その後精神科診断の面接を行い、産後うつ病であるかどうかを判断するというデザインが組まれました。対象となる母親たちは、出産準備クラスを通じて募集されましたが、研究者たちはデータ収集を産後6週間の時点で行う必要があったため、データ収集が始まる約4か月前から募集活動を開始しました。さらに、臨床心理士として働いているナースが、診断面接を行うために週に1度病院を訪れる必要がありましたが、その病院までの移動には車で2時間かかるため、このような条件がデータ収集のペースに影響を与えました。こうした要因から、最終的に研究の標本の大きさに達するまでに長期間を要することになりましたが、研究者たちは計画に従って粘り強くデータ収集を続けました。
フェーズ4は「分析の相」であり、このフェーズでは収集されたデータを基に統計分析が行われました。PDSSのカットオフ値、すなわち母親を産後うつ病と判定するための基準値を設定するために統計学的検定が行われました。また、PDSSが産後うつ病をどれだけ正確に予測できるか、その精度を評価するためのデータ分析も同時に行われました。この分析作業を通じて、研究者たちは得られたデータを詳しく解釈し、PDSSの信頼性や有効性を確認することができました。ベックは、このフェーズでも統計学者や測定用具開発のコンサルタントと協力し、研究結果の解釈について議論を重ねました。こうして、データに基づいた結論が導き出され、研究の重要な知見が明らかにされました。
最後にフェーズ5は「普及の相」として、研究成果を広く発表し、共有する段階です。研究報告が作成され、『Nursing Research』誌に投稿されました。この論文は4か月以内に受理されましたが、実際に出版されるまでには14か月という「近刊(in press)」状態が続きました。この間、研究者たちは地域や国際的な学会で研究結果を発表し、研究の成果を広く普及させるために活動しました。また、研究を支援した助成機関への報告書も作成し、提出する準備を進めました。このように、研究結果が発表され、実践やさらなる研究に活用されるまでのプロセスが完了しました。
一方、質的研究のプロジェクトも独自のスケジュールに従って進行しました。ベック〔Beck, 2002〕は、産後1年間における双子の育児に関するグラウンデッド・セオリー研究を実施しました。フェーズ1では、量的研究の結果から多胎児の母親に対する関心が高まり、その結果、双子の母親の間では産後うつ病の発生率が高いことがわかりました。この発見を基に、ベックは双子の母親を対象とした研究を開始することを決めました。ベックはこれまで多胎児に関する研究を行ったことがなかったため、まずは慎重に文献レビューを行い、既存の研究を踏まえた上で新たな研究計画を立てました。しかし、ベックはある病院での研究経験があり、その病院で多胎児を支援するグループを担当するナースと良好な関係を築いていたため、研究の実施に必要な病院への入場許可を得るのに時間はかかりませんでした。
フェーズ2では、クラウンデッド・セオリーデザインが選ばれ、双子の母親を対象にした研究デザインと計画が策定されました。研究者は双子の母親を募集するために支援グループのナースと協力し、支援グループの定例会に出席して直接母親たちと接触する方法を計画しました。研究のデザインが仕上がった後、研究提案書が病院と大学の研究対象者検討委員会に提出され、研究の実施に向けた準備が整いました。
フェーズ3では、データ収集と分析が同時進行で行われました。ベックは10か月間にわたり、多胎児の親を支援するグループの会合に参加し、その間に16人の双子の母親に徹底的な面接を行いました。これらの面接で得られた豊富なデータを分析した結果、双子を育てる母親が「人生をおあずけにする」という感覚を抱いていることが明らかになりました。つまり、母親たちは自分の生活を一時的に停止し、双子の育児に全力を注ぐことが求められているという現実を体験していたのです。この分析に基づき、ベックは双子の母親が生活を再開しようとするプロセスを「一時停止ボタンを解除する」という4段階のプロセスとして解釈しました。
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