PVP指標・PVN指標【統計解析講義基礎】

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目次  PVP指標・PVN指標【統計解析講義基礎】

 

 

PVP指標・PVN指標(predictive values for positive and negative tests)

 

「少数派=異常」の落とし穴

 

たくさんの検査を行えばどれかの項目が異常値となりやすい。

 

しかしただひとつの項目の検査でも、検査陽性の大部分がじつは病気でないこと(偽陽性)になってしまうことがある。

 

ウイルス性肝炎と肝機能検査を例にして説明しよう。

 

日本人の1%程度はC型肝炎ウイルスの保因者であり、職場や地城の健診では肝機能検査(ALT)が行われる。

 

しかし、C型肝炎ウイルスに対するALTの感度(保因者のうち陽性になる割合)は約45%である。

 

一方通常の正常域の決め方からALTが正常域の上限、平均±2標準偏差より高いものは、2.5% (有意水準の5%の上半分)である。

 

これを従業員1万人の職場に当てはめてみよう。

 

PVP指標・PVN指標【統計解析講義基礎】

 

この職場には1%=100人のC型肝炎保因者がいるが、そのうちALT陽性は感度45%から45人のみ(これが感度の定義)である。

 

一方非保因者の9,900人のうち2.5% =247人はALT高値陽性である。

 

したがって、この職場ではALT検査陽性の合計292 ( = 247 +45)人中45人、すなわちわずか15%が肝炎ウイルス保因者で、検査陽性の大部分(85%)は偽陽性になる。

 

ここで検査陽性者のうち患者(保因者)の割合を「陽性検査適中度」(PVP)といい、逆に検査陰性者の中で非患者の割合を「陰性検査適中度」(PVN)という。

 

 

検査の異常は本当に異常か

 

PVPは健診などで検査が陽性になった人が、本当に患者である割合を示す指標で、実際的な意味あいが大きい。

 

PVPが低く、病気でもないのに検査で陽性とされる割合が大きいと、受診者は不安を持つばかりでなく、無用に精密検査を受けることになり身体的、経済的に無駄な負担が大きい。

 

逆にPVNが低く、検査が陰性でもじつは病気である可能性が高い場合は、せっかくの検査が無駄になるばかりでなく、病気の早期発見の機会を逃すことになる。

 

したがって、スクリーニングに用いる検査のPVPやPVNはどちらも十分高くなければならないが、これらの値は感度や特異度と異なり、検査対象集団の有病率に強く規定され、有病率が高いほど高くなる。

 

先のC型肝炎の例も、一般の職域集団であるから有病率が1%でPVPも15%と低かったが、たとえば肝炎の患者が集まっている肝臓専門外来ならば有病率がはるかに高く、PVPももっと高かったであろう。

 

健診に用いる検査はPVPが高いことが必要で、PVPは有病率に依存することはスクリーニングの常識である。

 

しかし、現在わが国の法律で定められた健康診断の中には、こうした原則からはずれているものがある。

 

そのひとつが尿蛋白検査である。

 

通常成人の尿蛋白検査をすると、3〜4%が陽性になるが、その大部分は放置するしかなく、何かしらの医学的対応の対象となるのは1.5%以下もない。

 

すなわちPVPが1.5%未満である。

 

PVPがどの程度ならよいかを判断する絶対的な基準はないが、尿蛋白検査が陽性の場合、医学的対応を決めるのは腎臓に針を刺して組織を調べる腎生検を行う。

 

しかしこれは危険性が高く、1,000回に1回出血で手術が必要となり、3,000回に1人死亡するといわれる。

 

それに対し、腎炎の治療は確立しておらず、そもそも尿蛋白を検査することは意味があったのかと考えざるをえなくなる。

 

PVPを高くする方法

 

健診の検査のPVPを高くするためには、病気を持っている可能性の高い集団に対象を絞り込むことである。

 

外来診療で医師が最終診断にたどり着くプロセスを観察分析した研究では、診断の8割が検査ではなく、問診で得られたという研究がある。

 

そこで問診で病気を持っている可能性の高い集団に絞り込み検査をすれば、PVPが高くなり、検査が有用なものとなる。

 

しかし今日の医療制度のもと、医者は問診に時間をかけても収入は増えないが、検査をすれば収入となる。

 

また健診などでは法律で一律に検査項目が規定され、医者が患者の訴えをもとに必要性の高い検査を絞り込んでいく作業を妨げている。

 

検査を有用にするためには医療制度から見直す必要がありそうである。

 

 

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