実験の限界【統計解析講義応用】

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実験の限界|【統計学・統計解析講義応用】

実験の限界【統計解析講義応用】


目次  実験の限界【統計解析講義応用】

 

 

実験の限界

 

実験研究は利益をもたらすが,この種のデザインには限界もある.

 

まず,実験の方法が実際的でなかったり,不可能であるような制約が多数ある.

 

実験は,その人為的な不自然さに関して批判を受けることがある.

 

無作為化とグループ内での均等な処理を必要とする点に,困難さの一端がある.

 

日常生活において,われわれが人々と交流する方法は無作為ではない.

 

たとえば,患者のある側面(例:年齢,身体的外見,病気の重症度など)が,われわれの行動やケアを変更する原因になることがある.

 

その違いは微妙ではあるが,明らかに無作為ではない.

 

実験が人為的であると考えられる場合のもう1つの側面は,かぎられた数の変数だけをとりあげ,残りのすべての変数を一定とすることである.

 

この点が還元主義的であり,また人間の経験を人為的に制約するものと批判されている.

 

手引きとなる理論的枠組みがないままに着手した実験は,なぜ介入が観察された結果をもたらすのかという因果関係の説明がなくても,独立変数と従属変数の因果関係を確証できる可能性があるので,批判されることもある.

 

臨床環境で行われる実験は,研究者ではなく臨床スタッフが介入を管理することが多いため,実験群の対象が実際に処理を受けたか,またコントロール群が処理を受けていないかを判断するのがむずかしいことがある,という問題がある.

 

研究期問が長期に及ぶ場合は,介入とコントロールの条件の一貫性を維持することが,とくにむずかしいかもしれない.

 

さらに,臨床研究は,研究者があまりコントロールできないような環境で実施されることが多いが,実験研究では,コントロールが重要な因子である.

 

マクガイアら〔McGuire et al.,2000〕は,臨床環境での介入を検証するという課題について,いくつかの問題を説明している.

 

対象者自身が処理への参加に慎重な場合に,問題が生じることがある.

 

たとえば, HIV感染症患者を,特別な支援グループ介入群またはコントロール群に,無作為に割り付けるとしよう.

 

支援グループに参加しようとしない実験対象者,またはまれにしか参加しない対象者は,実際には実験の条件というよりも,まるでコントロールの条件のような「条件」にある.

 

その処理がほかでいかに効果的であったとしても,参加しなければ処理の価値がなくなり,処理のいかなる効果をも検知することがむずかしくなろう.

 

こうした問題は,研究をデザインするときに考慮せねばならない.

 

考えられるもう1つの問題はホーソン効果(Hawthorne effect)であり,これは一種のプラシーボ効果である.

 

その用語は,ウェスタン・エレクトリック社のホーソンエ場で行われた一連の実験に由来する.

 

照明,作業時間といった環境条件をさまざまに変えることが,労働者の生産性にどのような影響を与えるのかを調べる実験であった.

 

どんな変化を導入しても,つまり,照明を明るくしても暗くしても,生産性は向上した.実験に参加していると知っていることが,労働者の行動を変え,それによって関心ある変数の影響があいまいになったものと思われる.

 

病院という環境では,研究者は二重のホーソン効果と戦わなければならない.

 

たとえば,手術陂の患者への新しい手順の効果について調べる実験を行う場合,ナースと病院スタッフも,そして患者も,実験に参加していることを自覚しており,両群とも自分たちの行為をそれ相応に変えてしまう可能性がある.

 

二重盲検実験(double-blind experiment)がとても強力である理由は,対象も実験処理を施す人も,誰が実験群であり,誰がコントロール群であるかを知らない,まさしくこれにある.残念なことに,二重盲検法は,ほとんどの看護研究には利用できない.看護介入は,与薬などよりも隠すことがよりむずかしいためである.

 

二重盲検実験の例

 

マコーミク,ブックマン,メイキ〔McCormick, Buchman,& Maki, 2000〕は,(事前事後デザインで)二重盲検法を使って,深刻な手荒れのあるヘルスケア労働者のために,2種類の手のケアの処理(油性ローションと新しい皮膚保護クリーム)の効果を検証した.

 

両群の対象者ともに,手荒れが著しく改善した.要約すると,実験は,因果関係の仮説を検証するうえで断然に優れているが,多くの限界もあり,そのため,多くの現実世界の問題に対して適用がむずかしくなっている.

 

しかし,エビデンスに基づく実践の要求は急増しており,看護実践や看護手順の効果を検証するために,真の実験デザインが使われるようになっている.

 

 

実験研究の例

 

ペアレントとフォーティン[Parent & Fortin, 2000〕は,実験デザインを使って,心臓手術を受ける男性患者の不安を軽減し,手術後の活動を促すための介入を検証した.
介入は,「代理体験(vicarious experience)」・を含む.

 

選択的な冠状動脈バイパス移植(coronary artery bypass graft: CABG)を施術されようとしている患者に,同様の手術から回復した元患者のボランティアを紹介した.
入院中と回復期間に3回の支援的な訪問を受け,元患者が見せる積極的な生活が患者によくわかるように,デザインした.

 

初めてCABG手術を受ける56人の男性患者の標本を,代理体験群と,特別な介入を受けないコントロール群に,無作為に割り付けた.両群ともに,患者は手術と回復の過程についての通常の情報を,医療者から得た.

 

コイン投げによって,対象を2群に割り付けた.

 

対象の広範な特徴(年齢,職業,喫煙状態,バイパス移植の数)に関して,介入前に,2群の類似が確認された.

 

しかし,実験群のペースラインの平均的不安レベルは,コントロール群のそれに比べてかなり高かった.

 

このように,無作為化によって,2群の特徴は,完全にではないがほぽ均等化した.たまたま,不安がより高い患者が,処理群に割り付けられた.

 

患者の不安の軽減を評価するために,事前事後デザインをもちいた.

 

不安について,手術前48時間と24時間,そして手術の5日後と4週間後に測定した.

 

手術後のデータ収集には,活動と自己効力への期待についての質問も含めた.

 

代理体験を受ける男性は,当初,より高い不安レベルを示していたが,介人後,実験群はコントロール群よりも有意に低い不安レベルとなった.

 

実験群の男性だけが,入院中に不安が有意に低く,さらに手術後,コントロール群の男性よりも自己効力感と自己報告活動について高いレベルを報告した.

 

研究者は,患者の相互支援をとおして提供された代理体験は,心疾患患者が手術の不安に対処するのを助ける効果的な方略であると結論づけた.

 

一般に,偏り(バイアス)の可能性を減らすために,可能な場合には無作為化をするのが賢明である.

 

実験では,無作為に対象をグループに割り付け,グループを処理に割り付け,また(反復測定デザインにおいては)条件を対象に割り付けることを意味する.

 

また,一般に,無作為に患者を病室に割り付けたり,看護スタッフを患者に割り付けるように,条件が対象とともに変化するときにはいつでも,他の無作為化の機会を探すという意味もある.

 

 

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