バングラデシュ女性とノルプラント利用:質的研究が映す多様な視点【ChatGPT統計解析】
ラシッド(2001)はバングラデシュの女性たちによるノルプラント避妊具の利用に関する見解を研究し、自身がバングラデシュ出身かつ国外育ちという立場が影響を与えていると自己開示している。質的研究の方法論においては、リンカーンとグーバ(1985)によれば、フィールドワークは「方向づけと概観」「探索の焦点化」「確証と終了」の3つの段階で進行し、これらの段階はプロジェクトごとに重なる場合がある。また、質的デザインは特定の状況に応じて柔軟に変更され、独立変数のコントロールを行わず、現象を文脈の中で理解することが重視される。質的研究ではグループ比較の計画はあまり行わないが、データから得られるパターンが示唆的な比較を生むことがある。例として、ドラッカーとスターン(2000)は性的暴力を受けた女性の反応を「着実な前進」として記述し、サブグループ間で異なるプロセスが確認された。データ収集は横断的および縦断的研究があり、状況に応じて選択される。
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潜在的な偏りを自己開示する例
ラシッド〔Rashid, 2001〕は,バングラデシュの地方の女性たちが,ノルプラント埋め込み式避妊具をもちいることについてどうみなすかを研究した.
彼女は,「この主題を記述するにあたって,私自身がバングラデシュ出身者(バングラデシュで生まれた)であり,また,外側の人間(1979年から1993年まで外国で育った)である,という2つの立場からの影響がある.
私が行ったフィールドワークは,私の文化的背景の影響を受けている.
つまり,私がイスラム教徒であり,未婚のベンガル人女性であり,文化的に多様な環境での生い立ち…」と書いている,
質的デザインにおける相
質的研究の厳密な形式は事前には知りえないし,また特定されないが,リンカーンとグーバ〔Lincoln & Guba, 1985〕は,自然的探究は,ふつう,フィールドにいる期間を,おおまかに3つの相(フェーズ)で進んでいくと述べた.
1.方向づけと概観:量的研究者は,通常,自分が何を知らないかをわかっていると考えている.
つまり,研究を行うことによって,どのような種類の知識を得られそうかを正確に把握しており,それを得ようと努める.
これに対して,質的研究者は,自分が何を知らないかをわからないままに,つまり,探究を推し進めている現象について何も知らないままに,研究に着手する.
したがって,多くの質的研究の第1相は,関心ある現象の特徴が何かを把握することである.
2.探索の焦点化:研究の第2相は,さらに焦点を絞って吟味し,特徴的であると判断した現象の側面について,徹底的に探索する.
研究で問うべき質問や研究参加を依頼する人々のタイプを絞る.
3.確証と終了:最終相では,質的研究者はふりかえり,研究参加者とともに得た知識を検討し,結果の信用性を確立しようとする.
上記の3つの相は別個のできごとではなく,さまざまなプロジェクトでは,多かれ少なかれ重なり合う.
たとえば,最初の数回の面接や観察は,一般にはその後の情報提供者を選択するための根拠として利用されるが,研究者はさらに,現象の全体像を理解し,大きな次元でとらえようとする.
さまざまな相を終了するのに,何か月も,ときには数年を要することもあろう.
質的デザインの特徴
量的研究のデザインの特徴のいくつかは,質的研究にもあてはまる.
しかし,質的デザインの特徴は,事前に具体的に計画されたものというよりは,特定のフィールドで「何が起こったか」によってあとから決まるものといえる.
独立変数のコントロール
質的研究は,ほとんどの場合,非実験的である(質的研究が実験プロジェクトにはめ込まれる場合もある).
自然主義パラダイムで研究を行う研究者は,通常,彼らの研究を独立変数と従属変数をもつようなものとして考えていないので,研究しようとする人々や環境のある側面をコントロールしたり操作することはほとんどない.
多くの質的研究の最終目標は,ある現象を,現実世界に存在するがままに,また現実世界の文脈で個人が構築するがままにとらえ,豊かな理解を得ることにある.
グループ比較のタイプ
ほとんどの質的研究は,現象を完全に記述し説明することを意図しているので,質的研究者は通常,グループ比較をしようと事前に計画を立てることはない.
それでも,データに現れるパターンが,ある種の比較が有意味で啓発的であると示唆することもある.
もちろん,質的研究で比較を計画する場合もある(例:2つの異なる文化の比較).
質的な比較の例
ドラッカーとスターン〔Draucker & Stern, 2000〕は,クラウンデッド・セオリー研究を行って,親しい男性から性的暴力を受けた女性の反応を記述した.
こうした女性の中心的な過程を,彼女らは「着実な前進」と名づけたが,異なる種類の性的暴力を体験した女性の3つのサブグループでは,この過程が異なることがわかった.
データ収集を行う時点の数
質的研究では,量的研究と同様に,ある一時点でデータ収集をする横断的研究と,一定の期間内でデータ収集の時点を複数設定して,ある現象の展開を観察する縦断的研究の両方をもちいる.
質的研究者は,事前に縦断的研究を計画することもあるが,予備的データを収集し分析したのちに,ある現象を縦断的に研究するという判断がフィールドでなされることもある.
ラシッド(2001)の研究では、バングラデシュの地方に住む女性たちがノルプラントという埋め込み式避妊具に対してどのような見解や態度を持っているのかを明らかにすることが目的とされている。このような研究は、地域社会に根付いた文化的な価値観や宗教的背景が大きく影響するため、外部の研究者がアプローチする場合、様々な課題に直面することが多い。ラシッド自身がバングラデシュ出身であることに加え、国外で長期間過ごした「外側の人間」としての立場を持っていることを、自己開示の中で述べている。この自己開示は、研究における潜在的な偏りや価値観の影響を受け入れつつも、バングラデシュの文化的コンテクストを理解し、フィールドワークを行う際の中立性を維持するための重要な姿勢を示している。彼女は、自分がバングラデシュ生まれであるが、1979年から1993年までの期間を海外で過ごしたことで、現地の文化に完全に属しているわけではないことを認識しており、イスラム教徒としてのアイデンティティや、ベンガル人であること、さらに未婚であることといった属性が、研究対象である女性たちへのインタビューやデータ収集において影響を与える可能性があると考えた。このような自己開示を行うことで、ラシッドは読者に対して自身の立場を明確にし、研究結果に対する客観的な理解を促すとともに、質的研究の信頼性を向上させている。
次に、質的研究における方法論としてリンカーンとグーバ(1985)が示したフィールドワークの3つの段階についても詳述する。彼らは、質的研究が「方向づけと概観」「探索の焦点化」「確証と終了」の3つの段階を経て進行することが多いとし、これらの段階が独立しているわけではなく、相互に影響し合いながら進行していくと述べている。第1段階である「方向づけと概観」では、質的研究者は現象に対する理解がまだ不十分であるため、まずは研究対象の広範な状況や文脈を理解することに努める。この段階では、研究者が「何を知らないのか」について十分に把握していないため、従来の量的研究とは異なり、特定の仮説や明確な目標設定が行われることは少ない。むしろ、現象についての理解を深めるために、データ収集とその分析を繰り返し、得られた知見に基づいて次に行うべき探究の方向を徐々に明らかにしていく。具体的なフィールドワークでは、研究者は現地に足を運び、観察やインタビューを通じて現象についての初期的なデータを収集し、そこで得た情報をもとに、次のステップで何を探るべきかを模索する。
第2段階の「探索の焦点化」においては、研究者が対象とする現象の特定の側面について深く掘り下げる段階となる。方向づけの段階で得られた知見や洞察に基づき、研究者は焦点をより具体的に絞り、特定の仮説や質問を設定することが多い。この段階では、例えば特定の文化的価値観がどのように日常生活に影響を与えているのか、あるいは家族や地域コミュニティ内での相互作用が避妊具の利用に対する見解にどのような影響を及ぼしているのかといった具体的な側面に焦点を当てることができる。研究者は、観察やインタビューの内容をより詳細に分析し、重要と考えられるテーマを抽出し、そのテーマに基づいて追加的なデータを収集する。ラシッドの場合であれば、避妊具に対する抵抗感や受容態度が、宗教的背景や社会的地位、婚姻状況などの変数によってどのように異なるのかを分析することが焦点となり得る。
最終段階である「確証と終了」では、これまでに得られた知見やデータを再確認し、研究結果の信頼性や妥当性を確立するための手続きを行う。質的研究においては、信頼性や妥当性の確保は量的研究と異なり、数値による証拠に基づくのではなく、研究参加者との対話やフィードバック、データの三角測量などの方法を通じて行われる。例えば、ラシッドは自身の研究結果がバングラデシュの女性たちの実際の価値観や生活体験を反映しているかどうかを確かめるために、フィールドワーク中に得られたデータを再度参加者に確認してもらう手続きを行ったかもしれない。このようにして、研究結果の「信用性」を高め、結果が現地社会の文脈に適合していることを確認する。この過程を通じて、研究者は現象に対する豊かな理解を得るとともに、質的データの信頼性を強化することができる。
質的デザインの特徴として、事前に計画される量的デザインとは異なり、フィールドでの状況に応じて柔軟に設計が変更される点が挙げられる。質的研究においては、研究の進行に伴って現場から新たな発見が得られるため、研究者はその都度、研究デザインを見直し、適応させる必要がある。このため、質的デザインでは固定的な独立変数や従属変数の設定は一般的でなく、研究対象となる人々や環境そのものをあるがままに捉えることが求められる。質的研究の目的は、現象を現実世界の文脈において豊かに理解することにあるため、研究者は環境の中で人々がどのように現象を体験し、解釈しているかを観察し、その文脈に基づく知見を得ようとする。このようなアプローチは、単に数値で測定できるデータを提供するのではなく、より深い意味や価値観を含むデータを生成し、現象の全体像を明らかにすることに寄与する。
また、質的研究ではグループ比較も柔軟に行われる場合がある。質的研究者はあらかじめグループ比較を計画することは少ないものの、データ収集や分析の過程で浮かび上がってきたパターンをもとに、現象の違いや共通点を探ることがある。ドラッカーとスターン(2000)の研究では、親しい男性から性的暴力を受けた女性の反応をクラウンデッド・セオリーを用いて分析し、その結果を「着実な前進」と名付けたが、この過程が異なる種類の性的暴力を経験した3つのサブグループで異なることが明らかになった。
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