▼▼▼▼▼▼▼▼
チャンネル登録はこちら

臨床研究者とメディア

NIH (National Institutes of Health, 米国国立衛生研究所）で臨床研究を実施している科学者であれば，メディアの対応に携わる機会に遭遇する．

記者とうまくつき合うためには,他のスキルと同様に，基礎を学び，助言を受け入れ，練習することが必要である．

一見簡単そうに見えるが，実際行動に移すのは難しいものである．

健康(health)と医学(medicine)は，メディア社会的関心が高い２大トピックであり，連日のようにメディアに取り上げられている．

リポーター(reporter.記者）は，常に新しいニュース，新しい見地を探している．

それが，医学研究にとって良いニュースであるか悪いニュースであるかどうかにかかわらず，メディア側への情報提供を期待される．

将来有効な治療につながる可能性がある研究結果が出た場合には，いち早く公表されることが期待される．

より多くの影響（インパクト）を及ぼすほど．公衆の関心も大きくなる．

研究者側に十分な対応が準備できる前に，メディアへの情報提供が余儀なくされる場合がある．

逆に，悪い何かが研究中に起これば，メディアはあなたのもとへ押しかけてくる．

例えば，研究中の治療の有害反応のために患者が死亡した場合，あるいは，プロトコールが規制やガイドラインに準拠しなかったために患者が被害を被った場合，または，調査報道型リポーター(investigative reporter)は利益相反の申し立てをかぎつけ，メディアから執拗に追われることとなるかもしれない．

直接的な関与のいかんにかかわらず，対応を求められることもある．

研究施設以外で起こった出来事でさえ，呼び出される可能性は大いにあり，リポーターに，あなたの反応や観点が求められる．

ましてや, NIHが支援している臨床試験であるならば. NIHのスタッフが何らかの形で関与していたと判断され対応を迫られる.

ＮＩＨの臨床研究者は，税金(public dollars)で支えられている機関で慟いている．

国民（公衆）には，良いニュースおよび悪いニュースを知る権利がある．

彼らが肯定的に捉えているか否定的に捉えているかにかかわらず，つまり，研究者はメディアの質問に対処することができなければならない．

メディアは，多くの場合，臨床研究や患者保護の改善をもたらす情報を発信している．

現代の臨床診療(clinical practice)を管理するルールや規制の変更の多くは，歴史における踏み誤り(misstep)や濫用(abuses)の結果として生じた.

1932年のTuskegee(タスキギー）の梅毒実験に始まり, 1999年に遺伝子治療の臨床試験に参加した青年の悲劇的な死. 2010年に発覚した1940年代のグアテマラにおける非倫理的な研究など，臨床研究の倫理と継続的な改善の必要性の社会の認識を形成する上で，メディアは重要な役割を果たしてきた．

あなたの臨床研究が主要な新聞の一面で．夕方のニュースに取り上げられる可能性もある．

良い例は，2009年の春の米国におけるH1N1型インフルエンザのアウトブレイク(outbreak)である.

NIHと国中のＮＩＨサポート機関の研究者は，効果的なワクチンの開発に直ちに取り組んだ．

メディア報道は，新聞，ラジオ．テレビ，ウェブと広範囲にわたった．

国立アレルギー・感染症研究所(National Institute of Allergy and Infectious Diseases, NIAID)の所長であるAnthony Fauci博士は，数えきれないほどのインタビューを受け，テレビ，ラジオ，そして新聞記事に何度も登場した．

ほんの数カ月で．臨床試験は候補ワクチンの試験を開始した．

秋までには，効果的なワクチンが開発され，大量に製造されて，国内および世界中至る所で投与された．

これは，科学の進歩と公衆の健康の危機に対して「上手く立ち回って(turn-on-a-dime)」対応した素晴らしい例である.

Fauci博士はメディアの重要性を理解し，彼自身をリポーターに利用できる立場においた．

そして公衆が理解できる方法で，複雑で科学的な問題に対してわかりやすい，説得力のある回答を提供するようにした．

NIH（米国国立衛生研究所）で臨床研究を行う科学者には、メディア対応の機会が多くあります。メディア対応は、単に情報を伝えるだけでなく、広く公衆に科学の意義を理解してもらうための重要な機会でもあります。特に健康や医学は社会的関心が高く、メディアにとって常に注目されるトピックです。臨床研究者が効果的に記者と付き合い、正しい情報を提供するためには、他のスキルと同様に基礎を学び、経験者からの助言を受け入れ、さらに実践を通してスキルを磨くことが必要とされています。これは一見すると簡単そうに見えますが、実際に行動に移すとなると難しい部分も多いのが現実です。健康や医学に関するニュースは、良いニュースであれ悪いニュースであれ、日々メディアで取り上げられており、リポーターは新しいニュースや視点を常に探し求めています。これにより、研究が将来有望な治療法に繋がる可能性がある場合には、メディアはその情報をすぐに知りたがり、公表の期待が高まります。一方で、研究者側の準備が十分でない状態でも、情報提供が求められることがあり、これは場合によっては研究の進行に影響を及ぼすこともあります。また、悪い出来事が研究中に発生した場合には、メディアが研究者に急接近する可能性も高まります。例えば、臨床試験中に治療の有害反応が原因で患者が亡くなる事例や、研究プロトコールが規制やガイドラインに準拠していないために患者が被害を受けた事例、または利益相反の疑惑が調査報道によって浮上した場合などが挙げられます。こうしたケースでは、直接的に関与していない場合でも、研究者に対してメディアからの説明が求められることが多く、時には施設外で発生した出来事であってもコメントを求められることがあります。特にNIHが支援する臨床試験においては、研究に関わるNIHのスタッフが何らかの形で対応する責任を負うことが求められ、これに対する準備が重要になります。NIHの臨床研究者は、税金（public dollars）によって運営される公的な機関で働いており、国民にはその活動内容や研究の成果について知る権利があります。したがって、たとえ研究結果が肯定的であろうと否定的であろうと、研究者はメディアからの質問に対して誠実に対応することが期待されています。このメディア対応は、国民に科学の意義や研究の価値を伝え、公衆の関心を高めることにつながると同時に、研究の透明性を確保し、信頼性を高める役割も担っています。また、メディアは臨床研究や患者保護の改善に寄与する情報を発信することも多く、これは研究者とメディアが共通の目標に向かって協力するための土台を築く上で重要な役割を果たしています。臨床研究におけるルールや規制の多くは、過去の研究において踏み誤りや倫理的な問題が発生した結果として生まれたものであり、メディアはこれらの出来事を報道することで、公衆が臨床研究の倫理や継続的な改善の必要性について認識を深める契機を提供してきました。1932年のタスキギー梅毒実験、1999年に発生した遺伝子治療の臨床試験における青年の死亡、2010年に明るみに出た1940年代のグアテマラでの非倫理的な研究など、メディアはこれらの事件を通して、研究の透明性や患者の保護がいかに重要であるかを広く知らせてきました。このように、メディアは臨床研究が一面に報じられる可能性を持ち、記者はリスクと利益のバランスについても研究者に鋭い質問を投げかけるため、研究者にとってはメディア対応の重要性がますます高まっています。例えば、2009年春の米国で発生したH1N1型インフルエンザのアウトブレイクの際、NIHと全国のNIH支援機関の研究者たちは効果的なワクチンの開発に迅速に取り組み、メディアも新聞、ラジオ、テレビ、ウェブサイトなどを通じて広範囲にわたる報道を行いました。この際、国立アレルギー・感染症研究所の所長であったAnthony Fauci博士は多くのインタビューに応じ、テレビやラジオ、新聞記事に頻繁に登場し、公衆に対してわかりやすく説得力のある回答を提供しました。彼の迅速かつ明確な情報提供は、科学的な事実に基づいたメッセージを発信することで、パニックを避け、公衆に冷静な判断を促す効果がありました。数カ月のうちに候補ワクチンの試験が開始され、秋には効果的なワクチンが開発され、大量生産されて国内外で使用されるようになりました。この例は、科学の進歩が公衆の健康危機に迅速に対応する力を持っていることを示しており、また科学者がメディアと協力して公衆に正確な情報を伝えることの重要性を強調しています。Fauci博士は、メディアの重要性を理解し、記者が質問を投げかけやすい環境を整え、科学的なテーマについて公衆が理解しやすい言葉で説明することに努めました。彼のように、科学的な知見をわかりやすく伝える能力は、臨床研究者にとって非常に重要であり、特にメディア対応の際には不可欠なスキルです。