観察研究におけるオッズ比|ケースコントロール研究のオッズ比はコホート研究のオッズ比に等しい【統計学・統計解析講義基礎】

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観察研究におけるオッズ比|ケースコントロール研究のオッズ比はコホート研究のオッズ比に等しい【統計学・統計解析講義基礎】

観察研究におけるオッズ比|ケースコントロール研究のオッズ比はコホート研究のオッズ比に等しい【統計学・統計解析講義基礎】
コホート研究で定義されるオッズ比の値とケースコントロール研究で定義されるオッズ比の値は必ず等しくなる。オッズ比はそのままでは解釈不可能な指標であるが、発生が稀な疾患であれば、オッズ比は近似的に解釈可能となり、しかもコホート研究の弱点を補ってくれる。ケースコントロール研究ではリスク比やリスク差を計算してはいけない


目次  観察研究におけるオッズ比|ケースコントロール研究のオッズ比はコホート研究のオッズ比に等しい【統計学・統計解析講義基礎】

 

コホート研究におけるオッズ比

 

ある都市で、肺がん発生のリスクが高いと考えられる人を全員集めてきて、喫煙ありとなしのグループに分けて、5年間追跡調査をしたとします。

 

その結果、次の表が得られたとしましょう。

 

喫煙あり、肺がんあり:800人
喫煙あり、肺がんなし:9200人
喫煙なし、肺がんあり:400人
喫煙なし、肺がんあり:9600人

 

このデータを使ってオッズ比を計算するのですが、そもそもオッズ比とは何でしょう。

 

オッズ比とは、曝露ありグループのオッズと曝露なしグループのオッズの比です。

 

では、オッズは何かというと、コホート研究では、イベントが起きるリスクとイベントが起きないリスクの比として定義されます。

 

コホート研究でのオッズ=イベントが起きるリスク/イベントが起きないリスク

 

今の場合、喫煙ありグループでは、イベントが起きるリスクが

 

800/10000

 

イベントが起きないリスクが

 

9200/10000

 

よって、喫煙ありグループのオッズは、

 

800/10000/9200/10000=800/9200
となります。

 

同様に、喫煙なしグループのオッズは、

 

400/10000/9600/10000=400/9600

 

となります。

 

したがって、曝露ありグループのオッズと曝露なしグループのオッズの比は、

 

800/9200/400/9600=2.09

 

となります。

 

これがオッズ比です。

 

リスク差とリスク比は、効果の指標としての解釈と関連の指標としての解釈を与えます

 

では、オッズ比はどう解釈されるかと言うと、実は、

 

オッズ比は、そのままでは解釈不可能な指標なのです。

 

そもそも、イベントが起きるリスクとイベントが起きないリスクの比がオッズなのですが、これ自体意味不明です。

 

意味不明なもの同士の比であるオッズ比も同然意味不明で、解釈不可能です。

 

ではなぜオッズ比を計算するのでしょうか。

 

まずはオッズ比リスク比の関連についてみてみましょう。

 

喫煙と肺がんの関係を調査したデータでリスク比を計算すると、

 

800/10000/400/10000=2.00

 

となります。

 

オッズ比が2.09だったので、近い値をとっていることがわかります。

 

では、どういうときにリスク比オッズ比が近い値をとるのでしょうか。

 

それは、「肺がんあり」の人数がとても少ないときです。

 

つまり、

 

発生が稀な疾患では、オッズ比リスク比の近似値

 

となるのです。

 

このとき、オッズ比は、近似値としてリスク比と同様に解釈することができるのです。

 

よって、今の場合、オッズ比=2.09は、関連の指標として「喫煙ありグループでは、喫煙なしグループに比べて、肺がんの発生が(近似的に)2.09倍多かった」と解釈されることになります。

 

しかし、それだったらオッズ比なんか計算しないで、はじめからリスク比を計算した方がいいですよね。

 

リスク比は疾患の発生が稀でなくても解釈可能です。

 

コホート研究では、オッズ比を計算する意味はあまりないのです。

 

 

ケースコントロール研究におけるオッズ比

 

喫煙あり、肺がんあり:800人
喫煙あり、肺がんなし:9200人
喫煙なし、肺がんあり:400人
喫煙なし、肺がんあり:9600人

 

もともとの全対象者数が20000人で、このうち、肺がんありの人が1200人、肺がんなしの人が18800人でした。

 

20000人もの多くの人を調査するのは大変ですし、肺がんなしの人が肺がんありの人の10倍以上もいてバランスも悪いので、肺がんなしの人を1/10の1880人だけランダムサンプリングしてケースコントロール研究を行ったとしましょう。

 

そうすると、ランダムサンプリングしているので、喫煙ありの人数も1/10、喫煙なしの人数も1/10となって、以下の表のような結果が得られることが期待されます。

 

喫煙あり、肺がんあり:800人
喫煙あり、肺がんなし:920人
喫煙なし、肺がんあり:400人
喫煙なし、肺がんあり:960人

 

この表のデータを使ってオッズ比を計算してみましょう。

 

ケースコントロール研究でのオッズは、コホート研究でのオッズ(イベントが起きるリスクとイベントが起きないリスクの比)と少し違って、曝露を受けた割合と曝露を受けなかった割合の比として定義されます

 

ケースコントロール研究でのオッズ=曝露割合/非曝露割合

 

今の場合、肺がんありグループ(ケース)では、曝露(喫煙あり)の割合が800/1200、非曝露(喫煙無し)の割合が400/1200となります。

 

よって、肺がんありグループ(ケース)のオッズは、

 

800/1200/400/1200=800/400

 

となります。

 

同様に、肺がんなしグループ(コントロール)のオッズは、

 

920/1880/960/1880=920/960

 

となります。したがってオッズ比は、

 

800/400/920/960=2.09

 

となります。

 

もともとの全対象者20000人でのオッズ比とまったく同じ値になりました。

 

これは偶然ではなくて、

 

コホート研究で定義されるオッズ比の値とケースコントロール研究で定義されるオッズ比の値は必ず等しいのです。

 

ケースコントロール研究で定義されるオッズ比の値はコホート研究で定義されるオッズ比の値に等しくなります。

 

また、コホート研究でのオッズ比は、発生が稀な疾患であれば、リスク比の近似値となります。

 

ということは、発生が稀な疾患であれば、ケースコントロール研究でのオッズ比リスク比の近似値となります。

 

でも、所詮近似は近似、しかも発生が稀でない疾患では解釈不可能です。

 

やはり、できるものならはじめからリスク比を計算した方がよさそうです。

 

しかし、ケースコントロール研究でリスク比を計算することを考えてみましょう。

 

はじめに、喫煙ありの人たちと喫煙なしの人たちでリスクを計算してみると、

 

喫煙ありの人たちでのリスク=800/1720=0.47
喫煙なしの人たちでのリスク=400/1360=0.29

 

となります。これっておかしいと思いませんか?

 

もともとの全対象者20000人でのリスクは、

 

喫煙ありの人たちでのリスク=800/10000=0.08
喫煙なしの人たちでのリスク=400/10000=0.04

 

です。全然違う値になってしまいます。

 

このことからわかるように、ケースコントロール研究でリスクを計算すると、間違った値が算出されてしまうことになるのです。

 

したがって、ケースコントロール研究ではリスクを計算してはいけないのです。

 

リスクが間違った値になるので、リスクの比であるリスク比やリスクの差であるリスク差も間違った値として算出されてしまいます。

 

ケースコントロール研究では、リスク比もリスク差も計算してはいけないのです。

 

でも、オッズ比はもともとの全対象者20000人で計算した場合と同じでした。

 

だから、ケースコントロール研究ではオッズ比を計算しなければならないのです。

 

オッズ比はそのままでは解釈不可能な指標です。

 

よって、ケースコントロール研究には、発生が稀でない疾患に対しては解釈不可能な指標しか計算できないという弱点があります。

 

しかし逆に、発生が稀な疾患であれば、オッズ比は近似的に解釈可能となり、しかもコホート研究の弱点を補ってくれます

 

ちなみに、コホート研究では、ランダムサンプリングしてもきちんとリスクを計算することができます。

 

例えば、喫煙ありグループの10000人のうち、1/10の1000人をランダムサンプリングすると、肺がんを発生するのが800人の1/10の80人であると期待されます。

 

喫煙ありグループのリスクは80/1000=0.08で、確かにもともとの全対象者でのリスクと同じになります。

 

 

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