統計的仮説検定は一種の背理法|【統計学・統計解析講義応用】
統計的仮説検定は一種の背理法
統計的仮説検定は一種の背理法です.と言われても,そもそも背理法ってナニ? という人もいるかもしれないので,まず背理法について例を挙げて簡単にお話しします.
妻から浮気の容疑をかけられました.ある日,ママ友から妻のところに,大阪市内で私らしき人がきれいな女の人と仲良さそうに歩いているのを見かけた,浮気の疑いあリ,との通報があったというのです.(フィクションです)
浮気をしていないことの証拠を出すのは難しいですよね.
そこで,浮気をしていないことを証明するために次のようなロジックを考えます.
仮に,私か浮気をしていたとしましょう.だとすれば,その日に大阪市内にいたはずです.
だから,その日に大阪市内にいなかったことが証明できれば,浮気していなかったと言えるわけです.
これが背理法です.
「浮気していない」ことを証明するために,わざわざ逆の「浮気している」という仮説を立てて,それを否定することにより,浮気をしていない,と証明するわけです.
注意しなければならないのは,もし仮に,私かその日に大阪市内にいたとしても,それがすなわち浮気の証拠にはならないということです.
私か大阪市内にいたのは事実だとしても,大阪市内には多くの人がいるので,ママ友が見た人が私であるという確証はないのです.
他人の空似かもしれません.
ストレートに証明しづらい場合は,逆の否定したい仮説を立てて,それを否定することを考えるわけです.
統計的仮説検定は,この背理法の原理を応用しているのです.
では,統計的仮説検定では,いったいどのように背理法の原理を応用しているのでしょうか?
上に述べた原理を当てはめてみると、例えば薬を飮むグループと飲まないグループを比較するランダム化研究では,(平均的に)薬に効果があることを証明したいわけです.
このことを証明するために,わざわざ逆の薬に効果がない,つまり,「比較するグループのリスクに違いがない」という仮説を立てて,それを否定しようというわけです.
この,「比較するグループのリスクに違いがない」という仮説のことを帰無仮説と言います.
注意しなければならないのは,大阪市内にいたからといって即浮気したと断定できないように,帰無仮説が否定できなかったからといって,「比較するグループのリスクに違いがない」(薬の効果はない)とは言えないということです.
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