仮説の生成|【統計学・統計解析講義応用】
仮説の生成
徹底的な質的研究は,種々の構成概念または構成概念間の関係についての豊かな洞察を含むものが多い.
これらの洞察は,次に量的研究で検証し確定し,その一般化可能性を査定できる.
たいていの場合,こうしたことは別々の調査研究の文脈でなされる.
しかし,研究を実施し,研究結果を公表するのに,通常,何年もかかる,という問題がある.
つまり,質的な洞察を行ってから,それらの洞察に基づいた仮説を正式に量的に検証するまでに,かなりの時間がたってしまう.
そこで,ある現象に関心のある研究チームは,共同研究を希望することもあろう.
その研究プログラムでは,仮説を生成し,明確な最終目標としてそれを検証する.
仮説を生成する例
ウェンドラーは,さまざまな質的,量的情報源のデータにわたって,そのパターン認識を容易にするため,また,仮説と新しい研究設問を生成するため,メタマトリックス(meta-matrix)をどのように使うかを記述した.
テリントンタッチに関するウェンドラーのミックス・メソッドによる研究例では,メタマトリックスを利用することでt-touchの実施と施術者の身体的状態(例:カフェイン摂取)との関係を発見できた,
実例,明確化,拡大
構成概念の意味または関係性を例示するために,質的データを量的データと組み合わせることがある.
このような実例は,重要な研究結果を明らかにしたり,統計学的分析から少しずつ集めた知見を確証する手助けとなることが多い.
この点において,これらの実例は,分析を解明し,研究結果の解釈への指針を示す助けとなることも多い.
質的な素材は,具体的な事例研究が多いが,特定の統計学的分析の結果を説明するため,または研究しようとする現象についてより全体的かつダイナミックな見解を提供するために利用できる.
質的データをもちいた実例の例
ポーリット,ロンドン,マルティネスは,都市に住む貧しい家族に関する研究を行った.
彼らは,マルチメソッドによる研究のエスノグラフィーの部分からのデータをもちいて,食稲不足(調査標本の女性の51%がそうであると報告した)をどのように体験し対処したかを例示した.
女性たちの食糧問題が,以下の引用文に例示されている.「家で子どもが“お腹すいたよ¨つて言うとね,とくにつらかった‥私は教会でベビーシッターをして働きはじめた.
週に20ドル,それに毎週木曜には1袋の食べ物がもらえた‥それから,ほとんどの人がやりたがらないすごく嫌な仕事をした.
誰も行きたがらない危ない地域にピザを運んだよ,まったく命がけだった」.
この例では,量的研究結果だけでは得られない豊かな視野を,質的な素材が加えていた.
一方,調査結果によって,飢えと食糧不足の体験が,貧しい家族の少数派の問題というものではなく,その半数に影響していることも明らかになった.
質的データによって例示が可能となるだけでなく,ある論点を解明したり,問題の次元を拡大するためにも利用できる.
マルチメソッドによる同じ研究例で,ポーリットらは,エスノグラフイーのデータから,家族(調査でもちいた単位)が飢えと食糧不足に直面したとき,母親は,さらに困難なことに,子どもを守るために労をいとわないことが多いことも知った.
以下は,この洞察のもととなった多くの引用の1つである.
「子どもに1日3回食べさせるためには,私は3日間ぐらい何も食べないよ」.
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