強化登録デザイン|【統計学・統計解析講義応用】
強化登録デザイン
クロスオーバーデザインの一形態,強化登録デザイン(enriched enrollment design)は患者のほんの少数しか反応しない治療法を調べるのに有用であろう.
もし従来型の臨床試験において結果が統計学的に有意でなくて.介入が患者の部分集団に対して有用であると思われるときに,効果のあった人たちを後付け的に示して.その治療法によってその人たちが救われたと主張することはできない.
有用な戦略となり得るのは,効果のあった人たちを次の前向きな比較試験に組み入れることである.
もし次の試験の結果を単独で検討して統計学的に有意であれば,それらの患者の最初の反応は単なる偶然ではなかったことが示唆される.
強化登録デザインは.統計学的に妥当なときもあるけれども,治療に先立つ曝露が二重盲検化法より効果的であるといった(特に特徴的な副作用を持つ治療の場合),誤って肯定的な結果をもたらすことがあるかも知れないという批判にさらされている.
他にも,効果のある人という強化された集団からの肯定的な結果は,もはや全患者集団には一般化できず,むしろ同様に定義された効果のある人という部分集団に一般化されるだけであるという警告もある.
強化登録試験は,治療反応性に対してある限定されたエビデンスを示し,それゆえにさらなる試験を示唆するという理由で.治療介入試験においては興味深いかも知れない.
要因デザイン
要因デザイン(factorial design)においては,ある要因(治療法または条件)の各水準は,他の各要因の各水準との組み合わせの中に生じる.
実験単位は個々の治療法ではなくむしろ治療法の組み合わせに対してランダムに割り当てられる.
ISIS4研究(Fourth International Study of Infarct Survival)は,3つの治療法(経ロカプトプリル,経口一硝酸,静脈内硫酸マグネシウム)の要因試験としてデザインされた大規模多施設共同ランダム化比較試験(RCT)であった.
この試験の目的は,心筋梗塞(MI)が疑われる患者にこれら3つの治療法の組み合わせの効果(effectiveness)を35日目の生存で評価する.
3つの治療法は2つの組み合わせ(例えば,プラセボ,標準用量)投与である.したがって,この試験では可能な治療法の組み合わせが8つ(2×2×2=8)あった.
各患者は, 1/8 (12.5%)の確率で8つの組み合わせのうちの1つにランダム化に割付けられた.
各治療法の組み合わせは異なる被験者の群でテストされるため,いろいろな治療法間の交互作用あるいは相乗効果を反応(例えば,35日目の死亡率)について推定することができる.
要因デザインの主たる課題は,十分に大きな標本サイズを選択して,意味のある交互作用を高い検出力,あるいは,もし交互作用が本当にあるのであればそれを統計学的に十分な見込みで検出することができるようにすることである.
要因デザインが用いられる主たる理由は,単一の試験で複数の仮説を調べることにある.
例えば,ISIS4試験は,急性MIを治療する中で35日目の死亡率を減らすことにおける3つの治療法の役割を同時に調べるためにデザインされた.
要因試験をデザインすることで,実験治療法の各々に対して3つの別々の並行群比較試験をデザインすることに比べて.患者数を減少させることとなった.
もし特定の治療法の組み合わせの中で興味のないものがあれば,あまり興味のない組み合わせを除外した部分要因デザイン(partial or fractional factorial design)を用いればよい.
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