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コレステロールの統計学

コレステロールはそれ自体は有用

｢コレステロール｣は、体内の脂質成分の一種で、細胞膜、胆汁酸、ステロイドホルモンなど体の構成成分や分泌物の材料となる(燃焼してエネルギー源となる脂肪もこの｢脂質｣の一種。つまり｢脂質]は脂肪を含む広い物質分類である)。

総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール

検診などで測定される血液中のコレステロールは．総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロールがある。

これらのコレステロールの意味は、血液中での脂質の形状や働きを知ることによって理解できる。

血液中の脂質はコレステロールのほかに．中性脂肪(化学組成が３個のグリセロールを含むことから｢トリグリセリド｣TGとよばれる)、リン脂質(リン酸を重要結合部分に含む)、遊離脂肪酸がある。

脂質は水に溶けないが、蛋白質と結合したかたちでは水に溶け、｢リポ蛋白質｣(｢リポJLipoは｢脂質の｣lipoidを意味する)として血液中に溶けている。

このリポ蛋白質は、粒子の大きさと組成から、キロミクロン(CM)、超低密度リポ蛋白質(VLDL)、低密度リポ蛋白質(LDL)、高密度リポ蛋白質(HDL)に大別される。

ここで、VL、L、Hはvery low, low, highの略である。

CMの組成の大部分は中性脂肪で、中性脂肪の運搬体である。

VLDLは、中性脂肪が最も多いリポ蛋白質で、肝臓で合成され、体内を循環してエネルギー源として活用される。

LDLはVLDLの最終代謝産物であり、血液中のコレステロールの約70％と結合して、体内のさまざまな組織にコレステロールを運搬する。

HDLの組成はリン脂質、蛋白質の割合が多く、肝臓と小腸で合成・分泌され、末梢組織から肝臓ヘコレステロールを逆転送する。

そこで、血液中のコレステロールの存在量として、以下のように定められる。

総コレステロール(mg/dL) =リポ蛋白質中のコレステロール＋血清中のコレステロール

HDLコレステロール(mg/dL)＝HDL中のコレステロール

LDLコレステロール(mg/dL )＝LDL中のコレステロール

問題のLDLコレステロールには、フリーデワルドの推定式がある。

LDLコレステロール＝総コレステロール−HDLコレステロール−1/5×中性脂肪(ただし、中性脂肪が300mg/dL以下で適用)

善玉コレステロールと悪玉コレステロール

LDLは種々の細胞膜にあるLDL受容体(LDLを受け取る物質)と結合し、細胞内へ取り込まれる。

血液中に過剰にLDLがあると、三層構造である血管壁の中央の層(中膜)へLDLが取り込まれ、動脈硬化が進行する。

動脈硬化が進行すると心筋梗塞、狭心症など虚血性心疾患が発症するリスクが高まる。

反対に、HDLは血管壁中膜から肝臓へ余分なコレステロールを運ぶ働きがある。

多くの疫学研究では、血清総コレステロールおよびLDL−コレステロールは虚血性心疾患とそれぞれ正の相関を示すために、この疾患の｢リスク因子｣(危険因子)とされ、HDLコレステロールは負の相関(逆相関)を示している。

このような理由から、HDLコレステロールは｢善玉｣、LDLコレステロールは｢悪玉｣と俗によばれている。

基準値および日本動脈硬化学会の高脂血症診療ガイドラインによる診断基準値は次の通りである(いずれもmg/dL)。

コレステロール値を判断する

コレステロールの値を判断するときは、バランスをみることが大切である。

たとえば、表のＡさんとＢさんを比較すると、Ｂさんのほうが総コレステロールが高く問題があるようにみえる。

しかし、フリーデワルドの式でそれぞれのLDL−コレステールを計算してみると、Ａさんは150mg/dLの高値であり、Ｂさんは117mg/dLで基準値内である。

HDL−コレステロールの高いＢさんよりも、LDL−コレステロールの高いＡさんのほうが注意を要するといえる。