相関研究で探る医療リスクの真実と限界【ChatGPT統計解析】
ウィッティントンら(2000)は、全米116施設で褥瘡の発生率と罹患率を調査し、罹患率を24時間測定し、発生率は入院期間に基づいて評価した。相関研究には因果関係を明らかにする限界があり、自己選択が誤解の原因となることがある。たとえば、看護教育プログラムと仕事の満足度を比較すると、他の要因が影響する可能性があるため、解釈が難しい。がん患者の抑うつとソーシャルサポートの関係も多因子の影響を受ける。相関研究は効率的に大量データを収集し、医療や社会科学で因果関係の解明が難しい問題に適している。非実験研究も効果的で、例えば肺がん患者を異なる比較群と比較することで、自己選択の偏りを抑えることができる。フォークナーら(2001)は、1型糖尿病患者の心拍変動を年齢と健康状態で比較し、自律神経障害が早期に始まる可能性を指摘した。この研究は非実験的な相関デザインを用い、糖尿病と年齢に基づく心拍変動の差を説明するものだった。
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発生率および罹患率の研究例
ウィッティントン,パトリック,ロバート〔Whittington,Patrick, & Roberts, 2000〕は,褥瘡の発生率と罹患率を判定するために,34州にまたがる116の救急施設を対象にした全国的な研究を行った,
内科・外科病棟および集中治療室における1万7650人の患者の褥瘡の罹患率を,それぞれの施設で24時間にわたって測定した.
発生率は,それぞれの施設の平均的入院期間にわたって測定した.
相関研究の長所と限界
研究の質は,必ずしもその方法には関係し似不備のある実験と同じくらいに,多くの優れた非実験研究がある.
しかし,非実験研究にはいくつかの欠点があり,ここでは,相関研究の短所に焦点をあてよう.
相関研究の限界
前述のように,実験研究や準実験研究に比べて,非実験研究の主な欠点は,因果関係を明らかにする能力が弱いことである.
相関研究は,誤った解釈に影響を受けやすい.
この状況が生じるのは,研究者が,無作為につくった集団ではなく,自己選択によって,既存の集団をもちいるからである.
カーリンガーとりー〔Kerlinger & Lec, 2000〕は,自己選択(self-selection)について次のように述べている.
研究対象の集団の構成員が.部分的にでも研究問題に外生的な特性または特徴を個別に有していたり,研究問題の変数に,場合によっては影響したり,さもなければ関係するような特徴をもっている場合に,自己選択が生じる.
相関研究を行う研究者は,実験研究とは違って,独立変数の生起以前に,比較する集団が類似していると仮定することはできない.
このため,既存の差が,従属変数における集団の差について,もっともらしい代替の説明となるかもしれない.
この問題をわかりやすく説明するために,研究者がある人が参加している看護教育プログラムの種類(独立変数)と,卒業1年後の仕事への満足度との関係を検討しようという,架空の研究を考えてみよう.
専門学校卒業生のほうが,大学卒業生よりも仕事に満足していることがわかった場合,専門学校プログラムのほうが仕事への満足度を増すという結論は,正しいかもしれないし,正しくないかもしれない.
2つの教育課程の学生は,パーソナリティ,キャリア目標,価値観などのような多くの重要な特性に関して,明らかにはじめから異なっている.
学生は,2つの教育プログラムの1つに入学するという選択をして,選択の特性が,仕事への期待や満足度の差を生んだのかもしれない.
相関研究の結果の解釈がむずかしいのは,現実世界において,行動,状態,態度および特性が,複雑に相互関係している(相関がある),という事実による.
相関研究の結果についての解釈の問題を明確にするために,もう1つ例をあげよう.
がん患者の抑うつレベルと彼らのソーシャル・サポート(ソーシャル・ネットワークを通じての支援と心の支え)との関係を検証する横断的研究を行うとしよう.
ソーシャル・サポート(独立変数)が,抑うつレベル(従属変数)に影響すると仮定する.
ソーシャル・サポートのない患者が,ソーシャル・サポートが十分な患者よりも,有意に抑うつの状態であることがわかったとしよう.
この結果は,人々の情緒的状態が十分なソーシャル・サポートによって影響されることを意味すると解釈できるだろう.
しかし,他の説明もある.
おそらく,患者の家族構成(たとえば,結婚しているか,子どもがいるか)のような,ソーシャル・サポートと抑うつの両者に影響する第3の変数があるだろう.
重要他者の利用可能性や数が,がん患者がどのくらいに抑うつを感じるかに,また,患者のソーシャル・サポートの質に,強く影響するかもしれない.
第3の可能性は,逆の因果関係である.
抑うつのがん患者は,より陽気で社交的な忠者に比べて,必要なソーシャル・サポートを他者から引き出すのがむずかしいかもしれない.
この解釈では,人の抑うつがソーシャル・サポートを受ける量の原因であり,他の何ものでもないということになる.
これ以外の解釈も考えつくだろう.
重要な点は,とくに研究が論理的基盤をもたない場合には,ほとんどの相関研究の結果の解釈は,暫定的なものと考えなければならないということである.
相関研究の長所
われわれは,いくつかの研究問題に対して,実験デザインの適用の可能性を制限するような制約について検討した.
看護学,医学,社会科学の研究では,相関研究が重要な役割を果たし続けるだろう.これらの分野で解明すべき問題の多くが,実験できないためである.
因果関係は重要であるが,記述研究のようないくつかの研究形態では,因果関係の理解に焦点をあてないことは,すでに指摘した.
さらに,確立した理論から演繹した因果の仮説を検証する研究であれば,とくに,強力なデザイン(例:前向きデザイン)をもちいている場合は,因果の推論が可能であろう.
相関研究は,ある問題について大量のデータを収集するのに効率的な方法であることが多い.
たとえば,多数の人々の健康歴と食習慣について広範な情報を収集することが,この方法なら可能であろう.
研究者は,どの健康問題がどの食事と関連があるかを調べることができるだろう.
これによって,比較的に短期間で多数の相互関係を発見できるだろう.
これとは対照的に,実験研究者は,1度に少数の変数だけしかあつかわない.
たとえば,ある実験は高コレステロール食を操作し,他の実験はタンパク質消費量を操作するかもしれない.
結局,相関研究は現実に強力であることが多く,したがって,実際的な問題を解決するには本質的に有力である.
多くの実験研究とは異なり,相関研究は,人為的な不自然さによって批判を受けることは,めったにない.
できるだけ多数の適切な比較ができるように研究をデザインすることは,通常,有利である.
前実験デザインは,得られる比較可能な情報が限られているので.部分的に弱い.
非実験研究では,とくに,競合する偏りを処理するために比較群を選ぶ場合,自己選択をあつかうには複数の比較群が効果的であろう.
たとえば,肺がん患者のケース・コントロール研究では1つの比較群を肺がんでない他の呼吸器疾患患者からつくり,2つ目の比較群をまったく呼吸器疾患でない人々から構成することができよう.
非実験研究の例
フォークナー,ハサウェイ,ミルステッド,バーゲン〔Faulkner, Hathaway, Milstead, & Burghen, 2001〕は,1型糖尿病の人々の心臓血管系の自律神経損傷の発症と経過に関するエビデンスが少ないことに着目した.
この空白を埋めるために,横断的非実験研究をもちいて,年齢(思春期青年と成人との比較)と糖尿病の状態が心拍数の変動測定値の差と関連するかどうかを調べた.
記述相関デザインには,4つの対象群が含まれた.
それは,1型糖尿病と腎不全の成人群,同年齢の健康な成人のコントロール群,1型糖尿病の思春期青年群,思春期青年のコントロール群である.
糖尿病の成人患者の大部分は,子ども時代または思春期に糖尿病の診断を受けていた.
研究者は,室温コントロールと騒音コントロールをした実験環境で,深呼吸とヴァルサルヴア法を使って,対象の短期の心拍R-R問隔変動を測定する反射テストを行った.
加えて,パワースベクトラル解析を使って,24時問携帯型心拍モニタリングを行った.
次に研究者は,心拍変動の誘発,頻度,時間領域測定における,4群の対象間の差を調べた.
その結果,1型糖尿病の成人患者は,他の3群の対象よりも,有意に心拍変動測定値が少ないことがわかった.
成人コントロール群は,2つの思春期青年群のどちらよりも,有意に低い平均値を示した.
糖尿病の思春期青年では,ほぽ長期の心拍R-R間隔変動の測定値が,疾患のない思春期青年よりも低かったが,有意に低かったのは1つの測定値のみである.
しかし,自律神経障害が糖尿病の過程での比較的早い時期に始まるというエビデンスがあるため,この傾向は重要であると研究者は指摘した.
この例で,研究者は,年齢および糖尿病の状態という2つの独立変数との関係で,心拍変動の差を説明できた.
両変数ともに実験的に操作できないので,非実験研究が必要であった.
ウィッティントン、パトリック、ロバート(Whittington, Patrick, & Roberts, 2000)は、褥瘡の発生率と罹患率を判定するために、アメリカ全土の34州にまたがる116の救急施設を対象にした大規模な全国的調査を実施した。この研究は、内科・外科病棟および集中治療室に入院している1万7650人の患者の褥瘡の罹患率を評価し、各施設で24時間にわたって綿密に測定を行ったものである。さらに、発生率についても、各施設の平均的な入院期間にわたって詳細に測定が行われ、発症の傾向やリスク要因についての有益なデータが得られた。この調査は、医療現場において患者の褥瘡予防策の強化を促すとともに、具体的なリスク因子の特定に貢献することが期待されている。
また、このような大規模な相関研究の長所と限界についても触れる必要がある。非実験的な相関研究は、特に因果関係の解明が難しい分野で有効に機能するが、その解釈には注意が必要である。相関研究の主な限界の一つは、因果関係を明確にする能力が弱い点である。特に、研究対象となる集団が無作為に選ばれたものではなく、自己選択や既存の集団に依存している場合、誤解が生じるリスクが高くなる。たとえば、カーリンガーとリー(Kerlinger & Lec, 2000)は自己選択(self-selection)の問題について言及し、研究対象集団が研究問題に外生的な特性や特徴を持つ場合、自己選択バイアスが発生し得ることを指摘している。この自己選択バイアスは、集団間で独立変数の違いを検証する際に、従属変数への影響が異なる結果をもたらす可能性があるため、相関研究の解釈が難しくなる要因となる。
一例として、ある看護教育プログラムの種類(独立変数)とその卒業生の仕事への満足度(従属変数)の関係についての研究を考えてみよう。この仮説的な研究で、専門学校卒業生が大学卒業生よりも仕事に満足しているという結果が出たとする。しかし、専門学校の教育プログラムが直接的に満足度に影響しているかどうかは明確ではない。この結果が必ずしも専門学校の教育内容に起因するものとは言い切れず、むしろ、専門学校と大学の選択に関連するパーソナリティやキャリア目標、価値観など、他の要因が満足度に影響している可能性がある。したがって、学生が自ら選択して異なるプログラムに入学したことが、仕事への期待や満足度の差を生んだ可能性も否定できない。このように、相関研究では、複数の要因が複雑に絡み合って影響を及ぼすため、その結果の解釈が難しくなることがある。
さらに、現実の状況において、人々の行動や態度、特性が複雑に関連していることも、相関研究の解釈を難しくする要因である。たとえば、がん患者の抑うつレベルとソーシャル・サポート(ソーシャル・ネットワークを通じて得られる支援や精神的なサポート)との関係について検討する横断的研究を考えてみよう。この研究では、ソーシャル・サポート(独立変数)が抑うつレベル(従属変数)に影響を与えると仮定する。仮に、ソーシャル・サポートが少ない患者が十分なサポートを受けている患者よりも有意に抑うつ状態であるという結果が得られた場合、人々の情緒的な状態が十分なソーシャル・サポートによって影響を受けると解釈できるかもしれない。しかし、別の解釈も可能である。たとえば、患者の家族構成(結婚や子どもの有無)といったソーシャル・サポートおよび抑うつに共通して影響を与える第3の要因が関与している可能性も考えられる。また、抑うつのがん患者は、陽気で社交的な患者に比べて他者からのサポートを引き出しにくいという逆因果関係も考慮に入れる必要がある。これにより、抑うつがソーシャル・サポートを受ける量の原因となるケースも存在するため、相関研究の結果の解釈には慎重さが求められる。
一方で、相関研究には明確な長所もある。たとえば、相関研究は短期間で大量のデータを収集する効率的な方法であり、特に健康問題に関する調査では貴重な手法となり得る。多数の人々の健康歴や食習慣についての広範な情報を収集し、特定の健康問題と関連する要因を見つけ出すことが可能である。これにより、比較的短期間で多数の相互関係を発見できる点が相関研究の利点である。例えば、ある地域の住民の高血圧と食塩摂取量の関係を調査した場合、相関研究により大量のデータを迅速に収集し、高血圧と食塩摂取量の関連性についての推察が可能である。
相関研究は、実験が難しい看護学や医学、社会科学などの分野でも重要な役割を果たし続けている。実験デザインの適用が困難な問題に対しても、相関研究は因果推論の補完的手法として有効であり、記述的な知見を得る上で不可欠である。確立した理論に基づき、強力なデザイン(例えば、前向きデザイン)を採用することで、因果関係の仮説検証を行うことも可能である。たとえば、特定の疾患とそれに関連するライフスタイルの要因を前向きに追跡することで、因果関係に近い知見を得られる。
非実験的なケース・コントロール研究も有効である。たとえば、肺がん患者と肺がんでない呼吸器疾患の患者、そして健康な非喫煙者とを比較し、各群間の肺がん発症率や健康リスクを調査するケース・コントロール研究を実施することで、自己選択の偏りを抑え、特定のリスク因子と疾患との関連性を明らかにすることができる。このような研究は特に自己選択の影響が大きい非実験的な相関研究において重要であり、統制された比較群を用いることで、研究の信頼性を高めることができる。
さらに、フォークナーら(2001)は、1型糖尿病患者の心拍変動と自律神経障害の関連について調査を行った。この横断的非実験研究では、糖尿病の成人と若年層、およびそれぞれの健康なコントロール群を比較し、心拍変動の違いが確認された。1型糖尿病患者は他のグループと比べて心拍変動の値が低く、自律神経障害が糖尿病の早期から進行する可能性が示唆された。この研究では、独立変数である年齢と糖尿病の状態が心拍変動に与える影響が検証されており、実験的に操作できない要因が含まれているため、非実験的な相関研究が適用された。
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