新しい世界【統計解析講義応用】

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新しい世界【統計解析講義応用】


目次  新しい世界【統計解析講義応用】

 

 

新しい世界

 

臨床試験に参加する被験者にとって次に大事な点は,がんセンターなどの大規模施設で治療を受ける患者には特に当てはまるが,進行性疾患によって対処能力が低下している時期に,全く新しい環境に適応しなけれぱならないということである.

 

がんセンターには,その他の大規模施設と同様に,特有の生活,言葉やリズムがある.

 

しかしそれは,ほとんどの患者にとって全く未知の世界である.患者は,以下のような体験をすると報告している.

 

・個人的および職業的なアイデンティティの喪失:自分は,もはや名のある1人の個人,妻,母,弁護士,同僚ではなく,第6病棟の4階に入院している「大腸がん患者」番号55-089・004Hである.そして,病院のベッドの中で1人,眠れぬ夜に天井を見つめ,多くの場合.これから何が待ち受けているのか,もう一度自分の生活を送れるのだろうかと悶々としており,孤独である.

 

・しばしば大規模施設では,新しいものへの対処が難しく,すべてにとまどい,心身が疲れ,移動が困難な場合がある:大規模な施設では,一部の患者は「迷路」でもがいているようだと報告する.1人きり,または誰かに付き添われて放射線科から化学療法室,瀉血治療から病棟へと,そして再び同じ往復を繰り返し,見知らぬ人によって治療され,見知らぬ人によって検査される.多くの患者にとって,重い病気をかかえながら,この新しい迷路,そして知らない人の海に対処することは困難な課題となっている,

 

・病気に関する「用語」,試験に対する「用語」,薬物に関する「用語」を習得する努力は戦いである:特に最初の診断の後の数日から数週間は,この戦いは熾烈である.教育レベルが高い人であっても,医療関係以外の専門職についている人であれば,苦闘は避けられない.この戦いは,医療者との会話のはしばしのニュアンスから,治療がどのように進んでゆくのか,そして病気が治療に対して応答しているかを知りたいと思うその人の傾向によってさらに拡大される.

 

大部分の患者は,次第に順応し,かつてはとまどいに満ちた「見知らぬ世界」であった環境に馴染んでいく.

 

しかし,患者の悲しみ,方向性の喪失や考え方を理解することは,より良い支援と快適さを提供するシステムの構造をデザインするために臨床試験を計画する人々に役立つはずである.

 

ひいては.患者が自身の環境により早く適応しやすくなり,臨床試験参加者を維持することができるようになる.

 

レイ・エキスパート(専門的知識をもった素人)

 

今日の環境では,多くの患者,特にしばらくの間重病と戦ってきた人々が,自分の病気について調べ上げた上で臨床試験に参加する.

 

インターネットには信頼できない不正確な情報も多いが,多くの患者は,信頼できる情報源を探り当てる術を得て,いろいろなことを検索したり.学ぼうとしたりする.

 

研究者と医療従事者が患者とその家族がなぜこうするかについて理解することは非常に重要である.

 

十分な知識を得た上で決断をする権利が尊重されることは,それと同様に重要である.

 

なぜ.患者は自分の病気を調べるのだろうか.

 

病気のなりゆきについて理解し,最良の治療法を見つけ,予後や今後の予定について検討することなど,多くの理由がある.

 

しかし,多くの患者においてこの努力の根底にあるものは,自分の命(人生)と自分の健康についてある程度管理したいという強い願望である.

 

難しい疾患を抱えた患者にとって,知識を得ることは力につながるので,このためだけでも患者の知る権利は尊重されなければならない.

 

自分の願望を放棄してしまうならば,希望がなくなる.

 

そして,希望がなくなれば,試験参加と,実際に生命に対する関心が失われてしまうことがある.

 

必然的に,一部の患者は,少なくとも若干の誤報とともに試験参加と治療に来る.

 

このような場合,医師が彼らをどのように取り扱うかということが重要である.

 

考えられる最良の方法は,言葉だけではなく,インターネット上や他の文献によって,信頼できる情報源を患者に案内し,誤解を丁寧に補正することである.

 

「あれこれ調べたりするのは止めて,病院が提供する情報だけ信頼していれば良いのです」と言うのは,残念な対処法である.

 

このような方法は,患者の気分を害し,決してうまくゆくことがないし,ただでさえ脆いパートナーシップにひびを入れることになる.

 

一般に,患者を子ども扱いすることは効果的ではなく,患者が離れてゆく原因になる.

 

 

介護者を理解する

 

患者同様に.介護者の生活にも混乱が起こる.

 

その責任は突然,おそらく劇的に増加する.患者である家族のための心配と今後に不確実性についての懸念に彼らは消費される.

 

この新しい環境という現実と,介護者が病人に時間を割かねぱならないことによって.経済的な問題も出てくる.

 

介護者は,ほとんどの場合,患者とできるだけ多くの時間を過ごしたいと願っているが,他の家族のニーズや仕事上の都合などのプレッシャーは,これを困難にする.

 

1996年の全米看護協会(National Alliance for Caregiving. NAC)と全米退職者協会(American Association of Retired People, AARP)が実施した調査では,介護者の50%が最低でも週に8時間以上介護を行い. 20%近くが週40時間以上の介護をしている.

 

介護者のほぼ64%は,正規またはパートで働いており,週50時間以上介護している人のうち40%はまた,仕事を持っている.

 

これは,過度の負担(overload)の実態を浮き彫りにしている.

 

特に患者が新しく診断され,および急病人であるならば,介護者はスタッフからの情報を受ける大きな必要性がある.

 

いくっかの例では,患者から時間や注意を奪いたくなくて,しかも本当に彼らが知っておくべきことをわかっていないことを含むいろいろな理由で,介護者はこの情報を求めない場合がある.

 

臨床試験スタッフが,介護者との協力においてイニシアティブを取ることによって力になることができる.以下のような方法が考えられる.

 

・臨床試験スタッフに聞きたいことがあった場合は,曜日に関係なく24時間いつでも連絡できるようにする.すなわち,本格的な緊急事態ではないものの翌朝まで待てないような状況に備えて,日中の連絡先を教えるとともに,夜間の連絡先も教えておくことを意味する.

 

・がんセンターや病院が提供できる支援サービスについて詳細な情報を介護者に伝えておくとともに,そのようなサービス,腫瘍学ソーシャルワーカー,管理栄養士.チャプレン.送迎コーディネーターの責任者を紹介しておく.個人的なつながりをつくることにより.患者や家族に役立つ利用可能な情報やサービスを利用しやすくなることは介護者を勇気づける.

 

・試験スタッフは,介護者に患者が実際にどのくらいケアや支援を必要としそうであるかという具体的な全体像を伝える必要がある.これは介護者が効果的に計画を立てることを可能にし,すべての関係者へのストレスを最小限にすることができる.

 

どんな介護が必要となるのか予測できない場合もあるが,全体像を把握することは非常に重要で,介護者が満たすことが難しいニーズにも冷静に対処できるようになる.

 

患者は,入浴,トイレ,食事,歩行,着替えなど大部分の日常生活機能をできるだろうか.また,視覚は正常か(普通に目が見えるか),不自由なく移動できるか,運転は可能か,患者が一人暮らしの場合,患者を支えるために.主要な介護者は家事食事の宅配,看護など外部サービスを依頼すべきかどうかなど,治療が進行するに従って,以上のようなことがらに対処する必要が出てくる.

 

・患者と介護者が別の州または地域から来ている場合,臨床試験スタッフは,患者の出身地にある支援サービスを求める方法に関する一般の情報や助言を提供するべきである.

 

過去に進行性疾患に関わったことがない限り,社会福祉サービスについてはほとんど知らない場合が多く,臨床試験スタッフからの基本的な方向性や助言は,極めて有効である.

 

必要なサービスの種類は,食事と食事の準備,移動手段,部屋の改装,部屋の掃除や庭の手入れの他.看護助手や看護師らによる医療ケアなどのサービスが必要となることもある.

 

・介護者は,長引く吐き気や嘔吐,持続する息切れ,38度以上の体温,飲食ができない場合などの患者の重大な症状悪化を示す可能誌のある典型的な徴候についての指導を必要とする.また,介護者は臨床試験が実施されている施設で支援を受ける方法についても知っている必要がある.適時に適切な種類の援助を求められるように,即時の注意の必要性と緊急事態との相違についても十分伝えておく必要がある.

 

・がん治療において抑うつはよくある症状であり,患者と介護者の両方に影響を及ぼす可能性がある.介護者には,抑うつを示す徴候について指導するべきで,自身と患者のために利用できる支えとなるサービスの利用を促すべきである.

 

 

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