研究の継続審査【統計解析講義応用】

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研究の継続審査|【統計学・統計解析講義応用】

研究の継続審査【統計解析講義応用】


目次  研究の継続審査【統計解析講義応用】

 

 

研究の継続審査

 

IRBは,承認した研究を少なくとも1年毎に,あるいは研究が被験者に身体的,社会的,精神的なリスクに明らかにさらすものであると認める場合には,さらに期間を短くして,継続的に審査することが求められている.

 

継続審査は,被験者の権利と福祉を保護するために,適切でかつ現在進行形の対策がとられていることをIRB.研究者,被験者,そして国民に保証するために求められている.

 

継続審査の際に,研究者がIRBに提出しなければならない情報の要件は多様である.

 

例えば, NIH内部研究プログラム(IRP)においては,研究者はIRBの審査のために,現在承認されている研究プロトコール同意説明文=咨のコピー,プロトコールの現在までの進捗状況の簡潔な要約,研究が継続されている理由,現在までに研究に参加した被験者の性別や民族の内訳,プロトコールから生まれた科学的な進展,特に被験者個人に及ぶリスクや負担,便益について提出することを求められている.

 

また,継続審査時に,研究者はプロトコールの実施において.利益相反が起きる場合のある新たな資本団体や諮問機関,他のNIH以外の団体との関係について報告しなければならない.

 

継続審査において,あるいはその他のどの時期においても,研究に関連して被験者に重大な危害が及ぶような場合や,研究が連邦規制や倫理ガイドライン,施設の方針に沿って行われていないような場合には, IRBは研究を停止したり,修正したり.研究の承認を取り消したりすることがある.

 

臨床研究者とIRB

 

優れた臨床研究者は,高い倫理を実践することとヒトを対象とした科学的に妥当な研究を行うことは密接に連動していることを知っている.

 

それゆえに,質の高い臨床研究を行う研究者は,ヒト被験者を保護し,効果的に働こうと努力するIRBの任務について理解している.

 

研究者が,自身の研究活動における倫理的側面に関する知識および専門技術を持つことは,いくつかの理由からIRBにとって重要である.

 

第一に,臨床研究者は自身のプロトコールに関連したヒト被験者の保護に関する事項について. IRBを教育する助けとなることがある.PIがIRBの審査基準について精通し,自身のプロトコールヘ適用すれことに習熟していると,IRBがヒト被験者保護の問題を理解し解決するのに役に立つ.

 

例えば,アルツハイマー病の患者を対象として,治験薬を評価するプロトコールを立てる場合,研究者は認知症の人々を研究に用いる科学的な正当性を研究プロトコールに明確に示さなくてはならない.

 

研究者は,

 

(1)インフォームド・コンセントを行うための知的能力を被験者がもっているかどうか,

 

(2)インフォームド・コンセントを行えない被験者では,誰が法的な権限をもつ代理者となるのか.

 

(3)あるとすれば,どのような追加的な保護が被験者に行われるのか,について判断する手段を記載する必要がある.

 

PIは,被験者や代理者が研究の実験的な性質とそのリスクについて理解していることを確認するために,研究に関与していない人物がインフォームド・コンセントのプロセスを監視すべきであると提案することができる.

 

このアプローチは,審査中のプロトコールに固有のヒト被験者保護の問題について全体的な概要を提示することで,PIによって提案された問題解決のための手段を説明することとともに. IRBを大幅に支援する.

 

第二に,科学的に革新的な研究の早期段階では,倫理的問題とヒト被験者保護の問題が特有のものであったり,不明瞭な場合がある.研究の科学的および倫理的側面に習熟している研究者は,明確に定まっていない領域における貴重な指針をIRBに与えることができる.

 

IRBの決定は判断に関する事項であり.高度に革新的な研究を審査する場合においては,判断が同時代の倫理的な考え方や科学的知識の幅を考慮して行われることが特に重要となる.

 

評価段階にある現在のIRBシステム

 

過去20年間,米国および海外において研究被験者に対する保護の実施における飛躍的な進歩が生み出されている.

 

1998年の米国会計検査院の(Government Accountability Office, GAO)報告書は,米国のIRBシステムのいくつかの側面を批判したが,米国の大学,病院,民間・公的研究機関において,推定3,000から5,000の審査活動が行われ.規制の要件について研究者を教育し,遵守を監視して重要な役割を果たしたことを認めた.

 

しかしながら,これらの成功にもかかわらず. IRBシステムは現在かなり批判を受けている.

 

これらの批判には当然のものもあれば,不当なものもある.

 

IRBは,複雑性を増す臨床研究と.その規制システムのどこが悪いのかを同定するための,便利な避雷針となっている傾向がある.

 

年月を経て. IRBにはより大きな責任が課され,遺伝子研究など広く社会に影響を与えるような難解な研究活助の審査に直面することが増えている.

 

現在のIRBシステムが確立されて以降,研究事業と資金調達メカニズムは大幅に変化している.

 

例えば,生物医学研究の資金総額に占める製薬業界のシェアは, 1980年に32%だったのが,2000年代初頭には62%に増加している.

 

それに対し,連邦政府による資金提供のシェアは低下している。

 

また,過去にはほとんどの臨床プロトコールは1つのアカデミックな施設において実施され,その施設のIRBだけが被験者の保護を監督する責任を負っていた.
現在では,1つのプロトコールが米国全土や海外にわたる多施設で実施され. 100から1,000もの被験者を対象とすることが普通である.

 

このような多施設研究は,施設毎のIRBシステムに対して重要な問題を提起し, DSMBの設立を推進する力となった.

 

また,製薬会社は,学術的な医療センターに加えて,または,それに代わって,開業医で行われる研究を支援することが多くなっている.

 

このような研究はより広く被験者を集められるという利点がある.

 

しかしながら,開業医で行われる研究は,研究現場から遠く離れた場所に位置する「中央のJ IRBで審査・承認されることが一般的である.

 

現在のIRBシステムは本格的な再評価が行われる必要がある.

 

IRBの長所は,周知され,支持されるべきものであるし,弱点は対処されるべきである.

 

しかしながら. IRBシステムの長所のいくつかは潜在的な弱点にもなりうる.

 

例えば,研究の現場にIRBを設置することで,研究者や施設,他の地域的な事情をよく知っている可能性がある人々によって研究審査が行われるという利点がある.

 

また. IRBが施設において重要な教育的役割を果たすことがありうる.

 

例えば. NIHのIRPは,およそ200人の委員から構成される10のIRBがあり, NIH研究集団に重要な教育資源を提供する役割を担っている.

 

しかしながら,現場のIRBによる審査はいくつかの潜在的な問題をはらんでいる.

 

例えば,多忙なIRBは,プロトコールの審査に関する複雑な倫理と規制の問題に遅れをとらないように,現在進行形で教育的な努力を行うことはできないだろう.

 

十分に人員が配置されていなかったり,施設によってサポートされていない場合には, IRBはさらに責任が増え,文轡業務やその他の要求事項に忙殺されて,ヒト被験者の保護という意味のある観点から注意がそらされてしまうことがあるかもしれない.

 

さらに, IRBの委員は主に研究所の職員であり,特に多額の研究資金を用いたブロトコールを審査する際に,利益相反が起きる場合がある.

 

多くの機関では,IRB委員の利益相反を最小限にするための処置を講じている.

 

IRBの権限を行使する能力は, IRBを構成する委員の知識や経験,施設の資源や関与を含む様々な要因によって影響を受ける.

 

IRBによる決定は判断に関わる事項であり,それゆえに倫理ガイドラインや規制要件の理解と賢明な運用を必要とする.

 

同様に,文化的な配慮など地域の特性による影響の評価も必要となる.

 

 

IRBは,一貫性のある徹底的な審査過程をIRB内および複数のIRB間で促進できるようにすべきである.

 

IRBは長年にわたってヒト被験者の保護における主要な要素であり続けてきたが. IRBの審議に関して発表された研究論文は比較的少ない.

 

IRBの機能に関する研究の大部分はIRB記録や手続き. IRB委員の知識や考え方のみを調べており, IRBが開催する会議で行われる研究審査活動を評価した研究はほとんどない.

 

その結果として, NIHでは,施設内のIRB会議における研究審査活動を評価するための信頼性の高い手段を開発するための内部研究プログラムが鋭意進行中である.

 

開発が進めば,この評価手段は, IRBが規制任務を果たす審査活動を評価することに用いられ. IRB委員や研究者のための教育ツールとしても使用されるであろう。

 

ヒト被験者の保護を改善する方法を知ろうとするこのような努力は,適切かつタイムリーである.

 

米国の被験者保護のシステムは. 1975年に,生物医学と行動研究における被験者の保護のための国家委員会(National Commission for the Protection of Human Subjects of Biomedical and Behavioral Research)により再検討された.

 

この委員会による勧告に基づき,1970年代後半から1980年代初頭にIRBシステムは大幅に修正された.

 

ヒト被験者の権利と福祉を適切に保護するための当時のIRBシステムを調査する新たな系統的な調査が始まったのは, 1990年代半ばのことであった.

 

1998年にその結果が2つの評価として公表された.

 

その1つはDHHSのOPRR37によるもので,もう1つはDHHSの監察官によるものであった.

 

これらの評価は.大統領の放射線被曝実験諮問委員会(Advisory Committee on Human Radiation Experiments, ACHRE)と同様に,米国医学研究所(Institute of Medicine. によってレポートされ.IRBシステムを改善するためのいくつかの提案を行った.

 

現在までに行われた勧告には,研究者, IRB委員,ヒトを対象とする研究を監督する施設職員への教育を改善し,それによりIRBには十分な時間と資源をもたらすこと,連邦政府による研究の監督を強化すること,がある.

 

米国では,臨床研究を実施する施設に対し,独立して評価や認証を行うサポート体制が強化されている.

 

その報告の1つとして, IOMは連邦規則集に基づく認証基準を開発することを奨励し,認証組織を非政府組織とすることを促した.

 

発表された基準では,IRBが施設全体の被験者保護プログラム(Human Research Protection Program)における,いくつかの重要な要素(もしくはドメイン)の1つであることを認めている.

 

これらの基準によって取り上げられたその他の重要なドメインには,施設/機関職貝,研究者,研究スタッフ,スポンサー.被験者の役割と責任,および彼らに対する教育の要求,がある.

 

認証のプロセスには,組織的な自己評価と,独立したヒト被験者保護の専門家による現地訪問が含まれる.

 

2011年6月の時点で,約235の米国の機関と6つの国際機関(カナダ,韓国,中国,シンガポール)が被験者保護プログラム認証協会(Association for the Accreditation of Human Research Protection Programs, AAHRPP)による完全認証を受けている.

 

ヒトを対象とした研究は,たとえ研究参加により直接の便益を得られるものだとしても,通常の日常診療とは全く異なるものである.

 

研究においては,医師/研究者の目的は,個人の被験者の福祉だけでなく,将来の応用のための科学的データを集めることが含まれる.

 

それゆえに,我々の社会は,ヒトを対象とした研究を条件付きで行うことを認めてきた.

 

研究は科学的に妥当なものでなければならず,被験者の権利を守り,福祉を保護する方法で行われなければならない.

 

現在の米国のヒト被験者保護システムは. IRBの役割も含まれるが,注意深く評価されている最中である.

 

IRBシステムは,よく発達したシステムであるが,現在も絶え間なく進化している.

 

システムが成功したシステムになるためには,過去から学び,現在そして未来に必要とされることを理解し,意味のある改善を実行するために知識を応用することが必要である.

 

研究者,被験者,施設,そしてその他の人々,特に,研究の負担を分担し便益を享受する米国の人々すべてが.これらの過程における役割を担っている.

 

 

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