紛らわしいプラセボ反応と平均への回帰|【統計学・統計解析講義応用】
紛らわしいプラセボ反応と平均への回帰
平均への回帰現象によって,高い反応の変化からプラセボ反応をどの程度まで区別させることができるのであろうか.
降圧剤であるイルベサルタンの2つの大規模なプラセボ対照用量反応試験において,プラセボのカプセルで治療されていた患者においては最初,平均4 mmHgだけ拡張期血圧が下がり,イルベサルタンで治療されていた患者においては,5〜10 mm下がった.
4 mmの降下は「プラセボ反応」だったのであろうか.
代わりのもっともらしい説明は,この改善は「平均への回帰」現象を反映しているというものである.
症状や兆候が変動する慢性疾患においては,患者は病状が悪いときほど,試験への参加を志願し登録の適格条件を通過しがちである.
逆に,試験へ登録された後では,偶然の変動のみで改善する傾向にある.
プラセボ反応と平均への回帰を区別する一つの方法は,もっと長い期間にわたって,および治療(プラセボを含む)が終わった後でアウトカム(血圧)を観察することである.
後でアウトカム(血圧)が増加していれば,その反応は治療期問における薬剤効果についての患者の期待値であったことを示唆していると言えよう.
完全ではないが,プラセボ反応と平均への回帰を区別する別の方法は,プラセボ群と同様,非治療群または順番待ちリスト対照群を含めることである.
非治療群の改善は平均への回帰であり,プラセボ群における追加の改善はプラセボ効果である.
HrobjartssonとGotzche は,この方を用いて,プラセボ群と非治療群の両方を含んだ156の公表された臨床試験のプラセボ反応を測定した.
彼らは,おそらく痛み,不安など,主観によって報告されるアウトカムの試験を除いて,一般にプラセボ反応と考えられているもののほとんどあるいはすべては,平均への回帰であると結論した.
けれども,その知見はプラセボで発生する生理学的あるいは神経学的な変化を説明することはできていない.
並行群デザインの代わりに要因または部分要因デザインを用いる
要因デザインを用いる1つの利点は標本サイズの節約である.
要因または部分要因デザインが並行群デザインに比べて標本サイズを小さくしないような状況がある.
要因デザインによる標本サイズ節約には付随するいくつかの仮定がある.
1つは,複数の試験治療群は試験で測定されるアウトカムに独立に影響を及ぼすというものであり,それは必ずしも正しいわけではない.
事実,試験目標の1つが試験下にある治療法の交互作用を調査することかも知れない.
治療法の潜在的な交互作用を調べたいと望んでいる試験は,それをするための検出力を持つ必要があり,それには標本サイズを増やすことであるが,時折(いつもではない),並行群デザインのサイズにまで至ってしまうことがあるだろう.
別の状況として.治療法の起こり得る組み合わせの各々を.並行群デザインにおける別個の群とみなすことである.
もっとも,他にも多相の最適化戦略(multiphase optimization strategy.MOST)のようによく使われるようになってきた新しい方法論とか,部分要因デザインに対して交互作用効果の存在を仮定して比較するときでさえも標本サイズをより小さくできるものもある。
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