同時的,前向きコホート研究|【統計学・統計解析講義応用】
同時的,前向きコホート研究
一般的に,過去に収集した曝露の情報は.現在のリスク定義には不十分であるため,同時的前向きコホートデザインの方が,はるかに多く実施されている.
前向き研究には主に2つの種類がある.
1つ目は,定義された曝露を受けた群と受けていない群の2つの群を選択する方法であり,2つ目は,参加希望者全員を受け入れる方法である,
これらの方法は,喫煙と死亡率に関する2つの論文や. 2001年後半に世界貿易センターの近くで働いていた人,近くの住民,付近の通行人において,喘息とPTSD (心的外傷後ストレス障害)について調べた論文で見られる.
この研究デザインの前提条件は,曝露あり/なしの集団が,あるいはコホート全体が,適切に定義された一般住民を代表する集団であることである.
曝露要因自体に加えて,曝露要因がないことも的確に定義する必要がある.
このデザインの古典的な前提条件として,曝露歴は時の経過にかかわらず一定,という条件がある.
例えば,ベースライン時に確認した喫煙歴は,時間を経ても変わらずに一定だと想定している.
しかし,実際にはこの想定が正しいとはいえない.
なぜなら,非喫煙者が喫煙を始めたり,喫煙者が禁煙したり,元喫煙者が再開したりすることもあるからである.
曝露歴は一定に保たれるという前提条件は.様々な危険因子において侵害される.
このような曝露歴の変化は,経時的データ解析で対応できる可能性がある.
同一人物の曝露レベルが時間とともに変化することを考慮した解析法である。
ネステッド・ケースコントロール研究
多くの前向きコホート研究では.研究において適切に特徴づけられた集団を用いて,他の研究を実施することができる.
ネステッド・ケースコントロール研究(nested case-control study)と呼ばれる特殊なケースコントロールデザインは,従来型のケースコントロール研究を取り巻く落とし穴を回避するデザインである.
疾患発症以前の一時期に設定された,広範な人口標本(population sample)の中からケース群とコントロール群を抽出する方法である.
これは,生体試料を効率よく収集・保存する方法が開発されたのを受けて,特に大規模な前向きコホート研究で役立っている.
十分な数のケースが集積されて妥当な検出力に達するまで,血清や血漿(尿. DNAなど)を収集・保存しておくことができる.
その時点に達したら,ケース群のベースライン検体は解凍・測定され.マッチングされた(あるいはされていない)コントロール群と比較される.
これにより,高価な.または,測定の難しい危険因子の調査が効率よくできるようになる.
ネステッド・ケースコントロールデザインは,大規模な人ロペース研究(population studies)での活用が増えており,対象疾病の発生後にケースとコントロールを選択・データ収集することに起因するバイアスの多くを回避することができる.
しかし,デメリットもある.対象要因は既に収集されたデータ中に存在し,保存された試料で測定できなければならない.
また,対象疾病は,妥当な大きさのコホート標本内で,妥当な追跡期間内に十分な患者数の発生を期待できるものでなければならない.
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