関係性と因果プロセスの理解|【統計学・統計解析講義応用】
関係性と因果プロセスの理解
量的方法は,変数が互いに体系的に関連していることを示すことが多いが,この方法では,なぜ変数が関連しているかについての洞察を十分に提示していない。
研究者たちが,単一の研究において質的方法と量的手法を統合するための選択肢は,ほとんど無限である.
もっと正確にいうなら,研究者の才能と,マルチメソッド・リサーチの価値についての研究者の観点によってのみ限定される.
主として量的研究を行う研究者は,デザインに質的方法を組み入れる価値を認める傾向が,逆の場合よりも強い.
とくに,現象学的な研究者が,量的な構成要素を自分の研究に組み込むことはほとんどない.
事実,質的研究者の多くは,真の統合は不可能であるとさえ主張する.
たとえば,マッセは,「意味の探求と測定の探求は,比較不可能である」と考える.
しかし,マルチメソッドによる研究の例は豊富で、量的研究では,研究の弱点を特定するために,研究結果の解釈に利用できるような質的データを収集することは有用であろう.
たとえば,縦断的調査において,自然減に起因する偏りが生じた場合,こうした偏りの方向性や大きさを評価するために,少人数の非回答者に徹底的な面接をするのが有益だろう.
量的分析は,質的分析で得た分析結果を明確にし精錬する手助けもできる.
たとえば,不妊症のカップルとの面接の主題分析は,不妊症による情緒的影響のさまざまな側面を明らかにし,個人にとってそれらの影響のもつ意味に光を与えるだろう.
標準化された尺度(例:Center for Epidemiological Studies Depression: CESD)を同一の対象にもちいることにより,不妊症のカップルに処理が単純な場合(例:新薬),通常,結果を解釈するのは容易である.
つまり,処理後のグループ問の差は,通常,介入に起因するといえよう.
しかし,多くの看護介入はそれほど単純ではない.
それらは,患者との相互作用についての新しい方法,またケア提供を組織化する新しい方法などである.
介入がいくつかの異なった特徴をもち,多元的な場合もある.
評価が終わったときに,仮説とした結果を得たときでさえも,グループ間の差を実際に引き起こしたのは何だったのか問うだろう(グループ間に差がない場合は,なぜ介入は不成功だったのか,という問いが重要となろう).
対象との徹底的な質的面接は,こうした問いに取り組む助けとなろう.
いいかえれば,質的データは,研究者がブラックボックスの質問に取り組み,観察された結果をもたらした複雑な介入が何かを理解する助けとなろう.
この知識は,理論的な目的に有用となるだろうし,介入を強化したり簡素化する助けとなり,介入をより効率的に,また費用効果を高めることもできる.
複雑な介入を評価する際に質的データを収集するもう1つの理由としては,たいていの場合,実際にその介入がどのように行われたか,また人々がどのように介入に反応したかを,正確に理解する必要があるためである.
非構造化観察や,異なる見解をもった人々(例:ナース,医師,病院管理者,患者,または患者の家族)との面接は,こうしたプロセス評価にとくに適している.
質的方法を評価に利用することで,誤った結論に陥るのを防ぐ効果がある.
ウェインホルツ,ケイサー,ロックリンは,介入そのものについて補助的に質的データを利用することで,量的研究者があいまいで誤った分析結果を導かずに済んだ状況を例示した.
質的データは,研究の分析結果の解釈にもちいることもできる介入手順の微妙な点を明らかにし,無意味な分析結果を生みだすような研究に洞察を与えることができる.
また,質的データは,研究アウトカムにおける対象間変動や対象内変動を詳しく説明できる.
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